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△月□日
今日は、あの子とお出かけをした。
いくつかお店を回って、買い物をした。
「あれ、自転車じゃないの?」
「自転車で行くの?」
私は歩くほうが好き。
並んで話しながらでも危なくないしね。
でもあの子は自転車で来た。
私も取りに行こうかな……。
「あそうだ、後ろに乗ってよ」
「えっ、いいの?」
「たまにやってるから平気だよ」
「そうなんだ、じゃあお言葉に甘えて……」
後ろの荷物をくくりつけるところに座る。
自転車で並走するより危ないような気がするけど、私の心は二人乗りできる喜びでいっぱいだった。
でも、ほかの誰かと二人乗りをしているということに、少し嫉妬。
あれ、これどこにつかまればいいんだろう。
抱きついちゃったらまずいかなあ。
どうしよう。
「よし、じゃあ行くよ!」
あの子が漕ぎ出した。
あわててサドルの後ろをつかむ。
初めての二人乗り、しかもあの子と一緒という事実に、私はわくわくしていた。
ところが。
痛い。
下半身が痛い。
あと、地味に腕もきつい。
最初は、自分でこぐのとは違う感覚や、サドルを掴む手にあの子のお尻が当たる感覚とかを楽しんでいた。
今はそれどころじゃない。
「どう? 二人乗りは」
「あちこち痛いよ……」
「あっはっは! それにしても、女だけで二人乗りなんてね。いつか彼氏作って二人乗りしてみたいなあ」
「あはは……」
「あそうだ、ちょっと性転換してよ」
痛みは吹き飛んだ。
この子は彼氏と二人乗りしたい。
で、私に性転換してほしい。
つまり、私が男だったら彼氏になれるってことかな!!
そうに違いない。
……彼女じゃ、ダメかな。
「ふ、二人乗りって男がこぐイメージあるけど」
「あー確かに」
とりあえず適当に返す。
あちこち痛いけど、自転車が好きになりそうだ。