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プロローグ

 


 ドオォォォン


 空気を震わすような低い音が響き渡る。

 パラパラとかつてはその建物の壁や天井の一部であったであろう破片が地上へと舞い散った。

 

 目の前に広がるのは巨大な怪物の姿。

 遠くから俯瞰することができればその竜の姿を見ることができるであろうが、地上から見上げるしかない自分からはその凶悪な顔と噛み付かれれば即座に命を奪うであろう牙が視界を遮る。

 

 次になにが襲ってくるのであろうか。

 擦り切れるほど頭を巡らし次の一撃を予想する。


 視界を掠める巨大な竜の尾の根元。

 次に来るのはその巨体にふさわしい太く長い尻尾によるなぎ払いか。

 何とか察知することができたようだ。


 猛烈な勢いでの右からのなぎ払い。

 あまりの質量に、壁が迫ってくるようである。 

 巨大な体に似つかわしくなく、その竜の一撃は速い。



 受けるか。避けるか。

 迷っている時間はない。



 受けるという選択は即座に捨て去る。

 受ければこの身は木っ端微塵になってしまうのではないか、そう思わせるほど重い一撃。


 

 避けねば。


 何としてでも。



 形振り等はかまっていられない。

 必死に後ろへと飛びのく。

 

 直後、数舜前まで自分のいた空間が裂けた。

 そう思わせるほど強烈な一撃だった。



 今だ。



 このタイミングしかない。

 


 切り札としてとっておいた、希少なマジックアイテム。

 今これを奴に投げつけるのだ。



 巨竜の顔面へ向けて必死で投げ込む。


 

 当たった。


 

 次の瞬間、鼓膜が裂けるほどの爆音と共に、視界が強烈な光に飲み込まれた。





















 キーンコーンカーンコーン


 講義の終了を示すベルの音。

 のっそりと頭を起こすと、講師が授業の片づけをし始めるのが見えた。

 それほど小さくもないが、大教室というほどでもない室内に、ガヤガヤと周りの話し出す声が広がる。

 これからの予定など話が弾んでいるようだ。

 

 だんだんと頭の中のもやが取れ始めてきた。


 寝てしまっていたのか。

 昨晩、随分と遅くまでゲームをしてしまっていたのだ。

 その寝不足のため、講義中に寝てしまっていたのだろう。


 さっきまでの夢も、そのせいか。

 やたらとリアルな夢を見たものだ。

 ぶるっと体を震わせる。

 ヒヤッとした感触は、かなりの寝汗のせいだろう。


 巨竜退治か……

 昨夜のボスは本当にしぶとかった。

 当たれば即死間違いない攻撃を避け続け、少しづつ体力を削っていく。

 そんな緊張感がまだ残っていたのだろう。


 

 次の講義まで時間があるな。

 どうせおしゃべりをして暇をつぶす相手もいないのだ。

 彼女なし、友達も少ない自分にとって待ち時間というのは煩わしい。

 大学生になったら、大学デビューをしてやる!

 高校までの自分は恋愛とは無縁の人生を歩んできた。

 興味がないわけではない。

 単純にモテなかったし、好きな人への告白も積極的ではなかったのだ。

 あの人のときも……


 やめよう。


 ともかくも自分の顔は中の下程度だし身長も高くないが、おしゃれをして、髪型ををいじれば雰囲気イケメンくらいにはなれる!

 そう意気込んでいたのだが、なかなか人生うまくはいかないものだ。


 結局、必死になれない俺は自分を磨く努力もほとんどできなかった。

 サークルに入っても活動にはなかなか参加せず。

 晴れてぼっちデビューというわけだ。

 大学に入って変わったのはゲームの時間がやたら増えただけだった。


 「安藤空あんどうそら、ようやく来たリア充チャンスだったのになぁ」


 時間はあるし、目は覚めてしまったがもう一眠りするかな。

 そう思い、また机にうつぶせる。

 こんどは、美少女の彼女を作る夢でもみれたらいいな。

 そんなことを考えながら気持ちのいいまどろみへと、引き込まれていった。

 




















 真っ白な壁がだんだんとうすれてくる。

 

 また夢か。

 今度は夢の世界だと分かっている。

 何が出てくるのだろう、楽しくなってくる。

 


 目の前には……



 天使が立っていた。


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