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コマンド;ヒーロー  作者: 壱の人
2/2

後篇

後篇です。

○レトのアジト(夜)

   夜、レトと子供達は雑魚寝をしている。

   ガウナも隣で横になっているが、目は覚めている。

フェル「ええ……昨日、子供達が……たぶん、その中に……」

   ガウナ、声のする方に目を向ける。

   離れた場所で、フェルが教団員らしき男達と、会話をしている。

フェル「そんな……ええ、けど……わかり、ました……」

   ガウナ、静かに目を閉じる。


○教団の本部(夜)

   数百人は収納出来るような、巨大なホール。全体に薄暗い。

   おびただしい数の信者が、そのホールの中で座っている。信者の大半   は、暗い顔をしている。

   そんな中、教主が壇上でスポットライトを浴び、マイクを前にしてい   る。

教主「……創造主は、この世界を不完全なものとされた。人は生まれた時か ら苦しみを背負い、悲しみに暮れ、嘆きながら死んでいくという、過酷な

 運命を余儀なくされた。なぜか? そうそれは、創造主もまた不完全で

 あったからだ……」

   信者達、うめき声を上げる。涙を流している者もいる。

教主「この世界には、悪意と暴力が蠢いている。創造主は、我らに不条理に

 屈し、家畜として生きよと命じられた。だが、ここに集った同胞達は理解

 している。創造主の意図に反することは、断じて罪ではないと。この世界

 の、苦痛と恥辱と怨嗟に満ち満ちた理を破壊し、怒りの鉄槌を振り下ろす

 ことに、なんら間違いはないと!」

   信者達、顔を上げる。何人かが歓声を上げる。

教主「我々には、他の悪意を殲滅するだけの力がある! 正しき教えを理解

 し、現存する理不尽を焼き尽くさんとする、勇気ある賢者達よ。世界に示

 そうではないか。我々は断じて間違っていないと、間違っているのは世界

 の方であると!」

   信者達は立ち上がり、ほぼ全員が歓声を上げ、拍手をする。

教主「ありがとう、賢者達よ。決起の日はもう間もない。それまでは、各々

 の役割を全うし、万全の準備を整えるよう、努めようではないか……!」

   拍手喝采の中、教主は壇上を降りる。


○教主の執務室

   豪華な調度品を設えた薄暗い部屋。教団員が何人か教主を待ってい

   る。

   教主、部屋に入ってきて、自分用の豪華な椅子に座る。

教団員A「お疲れ様です、教主様」

教主「うむ」

   教団員達、手に書類を持ったまま、報告を始める。

教団員A「信者の数は順調に伸びております。このまま行けば、あと半年程

 度で予定数に達するかと思われます」

教団員B「職業訓練も実に順調です。高い技術を持った信者達は、どの企業

 からも歓迎されているようで……何人かは、かなりの出世が期待出来るか

 と」

教団員C「政界への進出準備も整って来ております。票集めに際して、多少

 強引な手が必要にはなると思いますが、各方面への根回しはしっかり

 と……」

教主「そこまでだ。どこで誰が聞いているかわからん。後は書類で渡せ」

   教団員達、一斉に口を閉じる。

教主「あれはどうなっている」

教団員A「は、全力で探しておりますが、未だに行方知れずでして……です

 が、ある程度の目星は付いて──」

   教主、持っていた杖で教団員Aを殴る。

   教団員A、鼻血を流しながら床に転がる。

教主「目星では困るのだとなぜわからん。あれが私に取ってどれだけ大切な

 ものか、理解していないのか?」

教団員A「も、申し訳ございません……捜索の範囲を広げ、一両日中には見

 つけ──」

   教団員D、いきなりドアを開けて入ってくる。

教団員D「失礼いたします!」

教団員B「報告中だぞ、後にしろ」

教団員D「ですが、火急の用件でして……」

   教団員D、教団員Aに近寄り、何事かを耳打ちする。

教団員A「本当か!?」

教主「どうした?」

教団員A「お喜びください。例のあれを盗んだ不届き者の居場所が割れまし

 た。明日にでも私が出向き、相応の処罰を与えた上で奪還して御覧に入れ

 ま──」

教主「いや、私が行こう」

   教団員達、どよめく。

教団員B「そんな、教主様自らが行かれずとも」

教団員C「たかだか盗人の一人や二人、我々がしっかりと、その身に罪の重さを刻み込んで御覧に入れます」

   教主、杖で床を激しく叩く。

教団員A「ひっ!」

教主「たわけ者どもめ。ついさっき私が言ったことをもう忘れたか? あれ

 は、私の命とも呼べる代物なのだ。貴様らなんぞに任せて、また失うよう

 なことがあってはたまらんわ」

   教団員達、顔を青くして頭を下げる。

教団員B「も、申し訳ございません……」

教団員C「すぐに明日の予定変更と、車の手配をいたします」

教主「うむ。明日の朝一番で動くぞ。貴様らはもう下がれ」

教団達「御意」

   教団員達、教主の部屋を後にする。

教主、誰もいなくなった後、椅子にもたれかかる。

教主「あれは、私の手にあらねばならん代物なのだ……」


○ゴミ捨て場

レト「さぁ、今日も働くわよー」

子供達「はーい」

   ガウナとフェル、やや離れた場所に立って、レト達を見ている。

ガウナ「昨日のことなら、レトは気にしていないよ」

フェル「そう」

ガウナ「……それじゃあね」

   ガウナ、フェルの許を離れ、レト達に合流する。

レト「フェル、何か言ってた?」

ガウナ「いいや。なんだか心ここにあらず、と言う感じだな。喧嘩の後は、

 いつもああなのかい?」

レト「そうでもないけど……ま、いいわ。今日は同業者少ないし、がんがん

 稼ぐわよ」

   ガウナ、何かを察したように目を細め、周囲を見渡す。

ガウナ「……」

   レトのグループ以外、誰もゴミ拾いをしておらず、静まり返ってい

   る。

レト「どうしたの? ほら、仕事始めましょうよ」

ガウナ「……そうだな、そうしよう」


 × × ×


   ゴミ捨て場の一角。子供達、仕事をさぼって座り込んでいる。

子供A「見ろよ、すっげえだろ?」

   子供A、豪華な飾りが付いたナイフを手に持ち、見せびらかす。

子供B「わーきんぴかだー」

子供C「どうしたんだよ、こんなの」

子供A「一昨日、教団の連中のとこから、宝石と一緒にかっぱらってやった

 んだ」

子供B「えー隠してたのー?」

子供A「おうよ。昨日はレトがすげえ警戒してたからだめだったけど、後 

 で売りに行こうぜ」

子供B「いっけないんだー。レトに怒られるぞー」

子供A「いいんだよ。レト達に旨いもん食わせてやれば、きっと許してくれ

 るよ」

教団員A「そういうわけには行かんぞ、このクソガキどもが」

   子供達、おののく。


 × × ×


子供A「きゃああああ!」

子供B「やめろよー!」

レト「な、なに!?」

ガウナ「こっちだ」

   レトとガウナ、子供達の悲鳴がした方向に駆け出す。

   現場に到着すると、子供達が教団員に抑えつけられている。

レト「ちょっと、何やってるの!」

教団員A「ふん、またお前か。盗みを働いたガキどもに、お灸をすえてるのさ」

レト「盗んだ物ならちゃんと返したじゃない! また蒸し返す気!?」

   教主、教団員達の奥から出て来る。

教主「返してもらっていないものがあるのだよ、お嬢さん」 

レト「あなたは……?」

教主「<理への反逆>の教主──と言えばわかるかな?」

   レト、目を見開く。

レト「あなたが、あの……?」

教主「左様だ」

   教主、抑えつけられていた子供を睨み、蹴り飛ばす。

子供A「いたっ!」

レト「やめてよ!」

   レト、教団員達に腕を取られ、まともに動けないでいる。

   ガウナの周囲にも、銃を持った教団員達が立っている。

   教主、痛がっている子供Aの懐から、ナイフを取り出す。

レト「それは……?」

教主「二日前に、この子供が教団の本部から盗み出した物だ。同時に、私が

 何よりも大切にしているものでもある」

レト「だったら、それを持ってさっさと帰ってよ! それが何で、どれだけ

 教団に取って必要な物か知らないけど、私達には関係ないわ!」

教主「ふふ、関係ないか……」

   教主、軽くナイフを振るう。

   すると、切っ先から鋭いカマイタチのような物が飛び、レトの髪を切

   る。

   同時に、レトの頬にも切り傷が出来て、わずかに血が流れる。

レト「な、なにこれ……?」

教主「私の力の源だよ。聞いたことくらいはあろう?」


 × × ×


フェル「物の形を手も使わずに変えたり、何もないところから炎を起こした

 り、ですって」


 × × ×


レト「教主の力……それが……」

   教主、二度三度と短剣を振る。

教主「この短剣は、存在自体が極秘に類する物でね。そうそう公になっても

 らっては困るのだよ。しかし、今回は親無しのガキどもが相手。まだしも

 楽に済みそうで、ほっとしている所だよ」

   レト、冷や汗を流しながら聞く。

レト「何を言ってるの……?」

教主「わからんかね? この短剣の存在を知られた以上、我が教団の礎とし

 て、貴様達には消えてもらうと言ってるんだ」

レト「そ、そんな……誰か、誰か助けて!」

   悲痛そうな声を上げるレト。しかし、周囲に応える人間はいない。

教団員A「無駄だ、ガキ。予め、ここらには人払いをしてある」

   レト、顔を青くする。

子供A「畜生!」

子供B「放せ! はーなーせー!」

   子供達が暴れるも、教団員達の手を振りほどけない。

レト「理不尽だわ! 私達が、そこまでのことをしたって言うの!?」

教主「何もしていなくても同じ事だ。世の中には常に大小無数の悪意があ

 り、力のある者だけが思いを通す。この世の始まりから変わらない絶対の

 理であり、同時に、我が教団の教義の一つだよ、お嬢さん。さぁ、連れて

 いけ」

   レト、暴れるが、やはり振りほどけない。

   しかし次の瞬間、何発もの銃声が鳴り響き、教団員達が次々と倒れ

   る。

ガウナ「全く以て、正論だ」

   教主、ガウナの方を向く。

ガウナ「だが、悪意を標榜しておきながら、自分自身もまた、別の悪意で滅

 ぼされることがないと思っているのなら──」

教団員B「う、うわああああ!?」

   教団員達、撃たれた箇所から妙な渦が出ている事に気が付く。

   渦は傷口から全身に広がって行く。

教団員C「ぎゃああああああああああああ!」

教団員D「痛い、痛いいいいいいい……」

   やがて、渦は教団員達を飲み込み、後に何も残さず消滅する。

レト「消滅……いえ、消えた……?」

ガウナ「それは、強者が、強者の側に立ったが故に持ってしまった、奢りと

 言う物だよ、教主殿」

   教主、目を見開く。

教主「馬鹿な……これは<チート>! なぜ、私以外に使える者がいる!?」

ガウナ「この世界の原理に辿りついているのが、自分だけだとでも思ってい

 たのかい?」

   ガウナ、腰からナイフを抜く。

   ガウナの目が薄く光る。

ガウナ「分子振動ブレードメソッドを起動。並びに、フィールド情報の強制

 変更メソッドを、引き続き銃弾に付加。更に並行して、対象の強制終了プ

 ロセスを始動する」

   ガウナのナイフから光が発され、巨大な剣の形を取る。

   形成された剣には、細かいプログラミング言語が流れるように表示さ

   れている。

教主「ふん……<チート>を使える人間は、二人も要らん!」

   教主、手に持っていたナイフを振るう。

   すると、教主の周囲に、刃の形をした巨大な炎が、何個も出現する。

教主「消滅しろ!」

   教主がナイフを再び振るうと、炎はガウナ目掛けて突進する。

ガウナ「残念だが──私はあなた達のように、消滅するように出来てはいな

 い」

   ガウナ、拳銃で全ての炎を撃っていく。

   銃弾が当たると、炎は消滅していく。

教主「な──」

   ガウナ、教主のすぐ側に移動している。

ガウナ「終わりだよ、教主殿」

   ガウナ、剣で教主を刺そうとする。

教主「なんてな」

   ガウナ、目を見開く。

   次の瞬間、銃声が鳴り響き、ガウナが倒れる。

   離れた場所に、銃を構えたフェルが、震えながら立っている。

レト「フェル!?」

教主「くっくっく……人を救うのは、やはり創造主でも神でもなく、同じ人

 よな」 

   教主、倒れたガウナを踏みつける。

教主「よくやった、実によくやったぞフェルよ! そなたのような従順な信

 徒には、十分な報償と、私の側近の席を用意しよう! 貴様の将来は、今

 保証されたぞ!」

   レト、手を震わせながら、目を見開いてフェルを見る。

レト「嘘……フェル、どうして……?」

フェル「……あんたに言っても、わからないわよ」 


 × × ×


 フェルの回想。幼いフェルが、親に虐げられている。

 フェルは泣くこともなく、ただただ震えている。


 × × ×


教主「さて、こうなってしまっては仕方ないな。残念だがお嬢さん方。貴様

 達には、悠長に消える場所を選ぶ余裕もなくなったよ」

レト「ひっ」

教主「さぁ、消えて頂こう!」

   教主、ナイフを構える。

   ガウナ、そんな教主の足首を掴む。

教主「な──馬鹿な!?」

フェル「そんな……心臓を狙ったのに!?」

ガウナ「言っただろう。それは、強者になった故に持ってしまった、奢りだ

 と」

   ガウナ、立ちあがると同時に、手に持った剣で教主の胸を刺し貫く。

教主「が、はぁ……!」

   教主、倒れる。

フェル「教主様!」

   フェル、教主にかけよる。

   しかし、教主の身体は、既に半ば消えかかっている。

教主「消滅……? 私が、こんなところで……?」

フェル「教主様、しっかり!」


 × × ×


  教主の回想。

  同僚が教主の研究成果を奪う。それにより、周囲から同僚はもてはやさ

  れる。

  教主自身は嘲笑われている。

  教主、強く拳を握りしめる。


 × × ×


教主「ふざけるな……こんなところで、我が野望が断たれてたまるものかあ

 あああ!」

  教主、フェルの胸に、短剣を突き刺す。

フェル「え……?」

教主「往け、我が信徒よ! 今、貴様に私の力の全てを注ぎ込んだ! もう

 貴様を止めることの出来る者はいない! 他の全ての悪意を、破壊し尽く

 すのだ!」

   教主、息絶え、消滅する。

   フェルの身体が、刺されたナイフを中心に、徐々に大きく成って行

   く。

フェル「あ……あ……ああ、あああああああああ!」

   フェル、身長数十メートルはあろうかと言う化け物に変化する。

   ガウナ、変化したフェルに剣と銃を構える。

   レト、そんなガウナにしがみつく。

レト「なに……これ……なんなのよこれ、フェルが私達を売って、教主は魔

 法使いで、フェルが化け物になって……一体なんなのこれ! 意味わかん

 ない!」

ガウナ「もしも──もしも、この世界が、特定の誰かによって作られた、紛

 い物だったとしたら?」

レト「……え?」

ガウナ「本当の世界はもう消滅していて、その名残として、誰かが人工的に

 世界の形だけを取り繕っていたとしたら──その誰かが、創造主として、

 崇め奉られているとしたら」

レト「何……」

ガウナ「そして、プログラムの存在に気付いた人間がいて、そいつがプログ

 ラムを書き換える装置を作り上げたとしたら。そんな『バグ』を消し去る

 ワクチンソフトがあったとしたら──この現状は、全て説明出来てしまう

 んだよ」

レト「何を……言ってるの?」

ガウナ「使命さ」

   ガウナ、レトを振り切り、巨大化したフェルに突っ込んで行く。

   フェル、巨大な拳でガウナを殴ろうとする。

   ガウナ、拳を避け、剣で腕を切り落とす。腕は消滅する。

フェル「があああああああああああああああああああ!」

レト「やめてよ……フェルが、フェルが痛がってるじゃない……!」

   ガウナ、拳銃で残ったフェルの腕と下半身を撃っていく。撃たれた箇

   所は消滅して行く。

   ガウナ、剣を上段に構える。

ガウナ「残念だが──これが、リアルなんだ」

レト「やめてえええええええええええええええ!」

   ガウナ、空高く飛び上がり、残ったフェルの上半身を、顔から全て一

   刀両断する。


 × × ×


   ゴミ捨て場にフェルが横たわり、その周囲をレトと子供達が囲んでい

   る。

フェル「どこかへ行きたかった。それだけよ」

   フェルの身体は、既に下半分が消滅している。

フェル「親は散々私を苛めた挙句、金持ちになろうとして失敗して、勝手に

 消滅したわ。理不尽を感じた。親と違う人間になりたくて、でも、結局親

 と同じ生き方をしてる自分がいて──目の前には、生活の苦しさだけが

 あった……どこかに行けば、何かが変わるかと思ってた」

   レト、無言でフェルの言葉を聞いている。

フェル「いつも、明るく振る舞ってるあんたを、羨んでた。妬ましくさえ

 あったわ。ホント、馬鹿よね……どこに行っても、何も変えられないって

 わかってたのに、それでも希望が欲しかった……だから、教団の言葉を受

 け入れた」

   フェルの身体はほとんどが消え、後は肩から上しか残っていない。

フェル「恨むがいいわ、疎むがいいわ。私がそうしてきたみたいに、私がそ

 うされてきたみたいに……それで、少しでも楽になった気でいなさいよ」

レト「しないよ。絶対、しない」

   レト、涙を流しながら、フェルの身体を抱きかかえる。

   フェル、レトを見上げる。

フェル「なんで……?」

レト「だって──友達だもん」

   フェル、驚いた顔をして、直後に涙を流す。

   レトの腕の中で、フェル、静かに消えて行く。


○レトのアジト(夜)

   アジトに、小さな墓が出来ている。

   子供達、その墓の前に陳列し、涙を流している。

   ガウナ、子供達から離れた場所に立っていたが、外に向かって歩きだ

   す。

レト「待って」

   ガウナ、振り返る。

ガウナ「なんだい?」

レト「……一つだけ教えて。もしこの世界が人工的に作られたものなら──

 どうして創造主は、完璧に作らなかったの? どうして、こんなにも不完

 全なものにしたの……?」

ガウナ「……さぁね。創造物である私に、創造主の心はわからない。だが

 ──おそらく、やらなかったのではなく、出来なかったんだろう」

レト「出来なかった……?」

ガウナ「そう。創造主は、神になれなかった。出来たのは、世界の模造品を

 作り──その中で、ただ人が生きる様を、再現することだけだったんだ

 よ」

   レト、俯き、拳を握りしめ、肩を震わせている。

ガウナ「……泣いているのかい?」

レト「いいえ」

   レト、顔を前に向ける。

レト「泣いてなんかないわ。だって、私達は、生きているんだから」

ガウナ「……そうか」

   ガウナ、歩き出す。

ガウナ「さよなら、レト」

レト「ええ。さよなら、ガウナ」

   ガウナ、スラムを去って行く。

   いつの間にか、子供達がレトの周りを囲んでいた。

子供A「レトー……」

   レト、子供達に向き直り、微笑む。

レト「さぁ皆、ご飯にしましょう。それで、眠って、明日また働くの。生き

 るためには──食べなければならないんだから」

   子供達、涙を拭いて、食事の準備に取り掛かる。

   レト、再び呟く。

レト「私達は、生きているんだから」



○黒画面

   コンソール画面にプログラミング言語が次々と表示される。

   最後の行で止まり、次の一文が表示される

   <重大なエラーが検出されました。コマンド:ヒーローを実行します>

   再びプログラミング言語が流れ出す。


<了>

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