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 この世界に生まれ落ちて40年。私は『天才』呼ばわりされてるのもあって、のんびりとした隠居生活のようなものは出来ない。

 この世界、前世よりも平均寿命は短い。神子の手にかかれば解毒や怪我を治すのは可能だ。でも病気は神子にはなおせない。疫病などをなおすのは薬学に長けた存在である『魔女』(男女ともにこの言い方)の役目だ。

 第一、怪我をおっても『神子』は神殿に入れられるのが普通で、平民には『神子』に会う事も敵わない場合も多い。

 それでこの世界の平均寿命って50歳。長く生きてる人には70歳とかいるけど、それはお金を持っている貴族の話だ。

 私はのんびりと過ごしながら相変わらずこの歳になってまで研究に勤しんでいる。折角生まれ落ちた第二の故郷なんだから、豊かにしたい気もするし。最も流石に便利すぎるものを作った結果、後世で悪用されたら困るって気持ちもあるから考えながらやってるんだけど。

 もうすぐ孫も生まれるわ。アシュターの子供よ。時間が経つのは速いものだと実感せずにいられない。でもアシュターの奥さんはいい人だったからよかったけど。お腹痛めて生んだ子供が、しょうもない連中にたぶらかされたら溜まったものじゃないし。

 それから二年が経った。

 幸い病気にもならずに孫の顔が見れた。初孫は女の子だった。

 その頃、セルゲイも王女であるフェルナ様と結婚したの。子供の結婚式を見ると何とも言えない嬉しさがあったわ。

 アルガータも恋人を連れてきたの。結婚間近なの。

 レイは最近は料理人を目指して、領地の食堂で下働きをはじめているわ。私のあげた魔法具が効果を発揮しているから、命の心配は今のところ何もないわ。一応護衛も一緒にいるしね。自分に出来る事をやりたいって願って、目指そうと思ったのが料理人なんですって。ぜひとも夢をかなえてほしいってわけで、まだ12歳であるレイに食堂を紹介したの。仕込むならはやい内がいいもの。

 フィンとリリスは去年、魔力測定をしたの。フィンは一般よりは魔力量は少ないけど魔法を使うのに問題ない魔力量だったわ。ついでにフィンは6歳に見えないぐらい大人びてて、頭がいいわ。前世の記憶とかあるわけではないのに。

 リリスは桁違いで魔力量が多かったわ。兄妹の中で一番多いの。測定機が壊れるなんて事はなかったけど、破格の数値だったわ。かわりに剣術とかは苦手みたいだけど。

 子供たちも成長して、アシュター、セルゲイ、アルガータなんてもう立派な大人だもの。

 昔はあんなに小さかったのにと本当感慨深い気分になるわ。

 それからまた三年が経過したわ。

 その頃は、連合国家の上層部内で色々と権力争いがあったの。私を味方側に引き入れようとしていた連中がうっとおしかったわ。権力争いになんて全然興味ないもの。

 欲しいのは権力ではなく、研究できる場所と平穏に家族と暮らせる環境。

 それさえあれば国内の勢力図には正直興味はない。そりゃ、内乱とかになったら困るけれどね。

 外との戦争がなければ内でもめたりして、本当に忙しい人達よね。結局争い事が全くない事なんてありえないでしょうから、仕方がないとは思うけど。

 それにしても前世では争い事とは無縁だったっていうのに、現世ではすっかりそういうものになれている気がするわ。戦争なんてものがあるから人の死も前世よりは一層身近に感じられるし。

 立場的に人には狙われるし、危険は多いわ。でも私は大好きな研究ができて、家族がいて、幸せだわ。

 でも、終わりはいつか来るの。

 四年後、クルスが病に倒れたわ。お金はあったから、『魔女』を幾人も雇ったの。それでも、治らない病はあるものよ。あんなに元気だったクルスは衰弱していったわ。

 私はその間、他の護衛達に守られながらもクルスの傍にずっといたわ。

 そんな状況だったから陛下も私に研究を強要はしなかったわ。とはいっても私の趣味が研究と言えたから、クルスの傍にいながらも少しはいていたけれど。

 弱って行き、ベッドから起き上がれなくなっていくクルスを見て、悲しいと思った。

 今まで私を守ってくれた、ずっと傍にいたクルスって存在が消えてしまう事が。私を残していくことが。

 お見舞いに人が何人もやってきたわ。クルスはあんまり交友関係とかを広げてなかったから、大勢ってわけではなかったけれど。

 子供たちもまた増えた孫達も、皆クルスによくなってほしいと思ってるの。

 でも、その命が終わりかけている事ぐらいわかってるわ。

 それから二年後に、クルスは息を引き取ったわ。

 「……また、な」

 最後に私にそんな言葉をいって、眠るように死んでいったの。

 泣いたわ。『転生魔法』が成功すれば会える事もわかってたけど、泣いたの。ずっと傍にいた存在がなくなるのは、大切で仕方がなかった存在が先に死ぬのは悲しい事ね…。

 それからは、心に虚無感を感じながらも生きたわ。

 10歳の時からずっと一緒に過ごしてきた彼が、もう傍にいない事は私にとって寂しい事だった。本当に、この38年間クルスは傍にいてくれたから。

 ……寿命が来たら、私も行くから。

 そんな思いで研究をして、子供や孫の成長を楽しんで、二年経過した時私も倒れたの。

 病気なんですって。元々体力もない私だから、病気にかかってどんどん体力も減っていって動けなくなっていったわ。

 子供達も、孫達も、私の世話をしてくれたわ。温かい家族に囲まれて、私は幸せな人生だったと思ったの。

 クルスに出会えて、幸せだった。

 子供達や孫たちが、健やかに育ってくれて幸せだった。

 私を皆が慕ってくれて、幸せだった。

 今も、私のために皆がやってきてくれて幸せだ。

 良い人生だったって、胸を張って言える。

 でも、もうそろそろ終わり。眠くなってきたの。クルスの元へ、行くわ。

 ―――――――また、会いましょう。

 もうこの場にいない、新しい輪廻の中にいるだろうクルスに心で告げて私は瞳を閉じた。




 ――――そして、『天才』と呼ばれた存在は死んだ。





 end




というわけで、『天才少女の一生』を書き終えました。

『ハーレム~』で召喚について元々から触れる気はあって、書いてたら『天才』が生まれて書きたくなった結果の産物です。



感想で書かれてましたがこいつらユウ達とは一切関係ありません。『ハーレム~』のユウとかは完璧一般人なので。


ナーシャとクルスの『転生魔法』が成功さしたのかとか、子供たちのその後とか、思いついたものは沢山ありますが…、一旦これは完結にしておきます。

作者が登場人物の子供の話やら、関連話やらが結構好きなので後で多分書くと思われます…。気分次第なので、書いた場合は活動報告で報告しますので。


それでは、此処まで読んでくださりありがとうございました。よろしければ感想や誤字脱字報告してくだされば助かります。


完結 2012年12月20日。



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