表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/104

第12話 納骨堂

 その頃、近藤と清水は、地下の納骨堂を調べていた。


 納骨堂は、開かずの間と言われていた割には、新しい南京錠が付いていた。

 誰かが以前、ピッキングを試みたのだろうか、鍵穴の周りに傷が付いている。


 清水はスポーツバッグからピッキングの道具を取りだし、鍵の解錠に取り組み始めた。


「そんな道具どこで入手したんですか?」

「普通にネットに売っているわよ」と数秒で、南京錠の鍵を開けた。


 普通に売っていますか...日本の治安は大丈夫なのだろうか

 それにしても、清水さんのバッグにいろいろと普通の女子高生らしくない物が入っているな。


 期待に反して、中にはこれといったものがない。

 納骨堂ということで、棺ぐらいあることを期待していたのだが...学校で葬式を上げるわけでもなく、火葬の現代の日本では遺体を置くわけにもいかない、しょせん設計上ということだろう。


 納骨堂の中は、蜘蛛の巣もなく、床には埃も積っていなかった 

 棚には埃が溜まっているのを考えると、地下だから埃がないという訳ではない。

 誰かが、清掃したのだろうか。


 床を調べると...長い髪が落ちていた。

 そんなに古いものとは思えない。

 やはり、誰かが利用しているようだ。

 シスターか、学生かは髪だけでは判断できない。


 一方、清水は、スポーツバッグからルミノール液を取りだすと、周囲に散布し始めた。

 そして、部屋を暗くする。


「見てみろ。近藤」

 床の一部と壁の一部が広範囲に光っている。

 大量の血液が流れた跡だろう。

 これだけ大量の血だと、ここで殺人が起きたか、死体を解体したかのどちらかだろう。


 ガチャン

 背後の扉が、突然閉められた。調査に夢中になりすぎた。

 まずい。閉じ込められる。

 大急ぎで、扉に向かったが、遅かった。

 閉じ込められてしまった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「この学校って、吸血鬼でますか?」と原田さんが笑顔で掃除に来ていた長髪の女学生に尋ねた。

「あなたたち何なんですか。興味本位でそんなこと聞くんですか」と女の子が、声を荒げる。

「私たち? 私たちは...なんでしたっけ?」

 原田さんが、結城に聞いてきた。

 確かにグループ名はなかったな。

 それにしても、原田さんは話が下手だな。


「俺たちは、闇の狩人。吸血鬼たちに、宣戦布告に来たんだ」

「何を言っているんですか?それにその声、あなた男ですか?女装までして何やっているんですか」

「そっ、それはだな」

 返答に困る結城。


「宣戦布告。宣戦布告ですって」と、もう一人の少しギャル風の女の子の様子が一変する。

「人間の分際で、敵うとでも思っているのか」

「小村さん。どうしたの。おかしいよ」


 少女は、 聖堂の入り口の大扉に向かって駆け出した。

「罠にかかったのは、お前たちの方だ」

 

 バタンっと、聖堂の入り口の大扉が自動的に閉まる。

 いや、大扉の背後に居た羽をはやした小柄の怪物グレムリンが閉めたのだ。

 どうやら、「あいの世界」に取り込まれてしまったようだ。


 気が付くと、既に外が暗くなっていて、窓を通して赤い月が見える。


 そして、徐々に、聖堂内の光景が変わっていく。

 キリスト像が破壊さされた祭壇。血に塗れた天井と床。

 そして、ないよりも、壁に架けられた十字架に磔にされ、血まみれになりながら血を流している少女たちが現われた。

 目も当たれないような凄惨な光景だ。


「キャ~」

 あまりの光景に、残った長髪の少女は気を失ってしまう。


 扉を閉めた怪物たちが襲ってくる。


「チャリオット」

 結城が車椅子から立ち上がると、カードの悪魔を召喚し、少女を助けに向かわせる。

 結城が召喚した悪魔の姿は、鈍く銀色に光る甲冑をまとい、銀色に煌く剣を操る「騎士」そのもの。

 騎士は、間合いを詰め、剣を振ると、瞬く間に、2体の怪物を八つ裂きにする。


「この程度の雑魚じゃ相手にならないな」

「さすが結城。やるわね。あと、早く彼女たちを助けないと」

「待て。優奈」


 突如、ステンドガラスが割れ、蝙蝠コウモリの群れが入ってくる。

 聖堂の天井を周回するコウモリの群れ。


 蝙蝠たちの群れは、最大の前に急降下すると、ひと塊りになった。

 そして、現われたのは、黒マントの吸血鬼。

 線が細い中性的な魅力の美しい青年。透き通るような白い肌と対照的な赤い瞳が印象的だ。


「蝙蝠になって、現われるなんて、べたな演出だな」

「気を付けてね。結城」

「判っているよ。先手必勝」


 結城は、騎士を吸血鬼に向かわせると、連続刺突を行う。

「凄い攻撃だね。あまりの速さで避けれないよ」

 吸血鬼は穴だらけになるが、平然と笑顔で立っている。


 吸血鬼の胸で瓶が割れ、中の水で濡れたところが煙が立ち上る。

 原田が投げつけた聖水の瓶だ。

「お前たちも、聖水を持っているのか」


 この隙に、結城は再び攻撃を試みるが、吸血鬼は、体を無数の蝙蝠に別れ、結城の攻撃を回避すると、原田の側で再び人型になる。

 

「瓶を投げつけるなんて危ないな。君みたいな美人は、お淑やかな方が良い」

「馬鹿にしないで」

 原田は、槍で攻撃する。

 原田の槍が吸血鬼の肩をかすめると、傷口から煙が出る。

 明らかに、結城の時とは反応が違う。

 明らかに効いている。

 某ゲームでは、回復系の魔法がアンデット系の相手に対して大ダメージを与えるが、同じ効果だろうか。


 吸血鬼は、再び体を無数の蝙蝠に別け、天井を旋回する。

 そして、吸血鬼の群れは、一斉に結城と原田に向かって急降下する。


「蝙蝠なんて、何匹いようと一瞬で切るだけさ」

 騎士の剣に、蝙蝠は切り裂かれて、次々と床に落ちると灰になって消えていく。

 原田も、槍で蝙蝠を次々に払い落とす。


 イタ。

 足を見ると、床に落とした蝙蝠の一匹が、原田は足に噛みついている。

 とどめが、中途半端だったのか、原田は急いで、とどめを刺す。


 無数にいたコウモリたちを全てたたき落とした。

「大したことなかったな」

「そうですね。でも、蝙蝠に首筋を少し噛まれてしまいました。結城さん見ていただけますか」

 原田は結城に首筋を見せる。

 が、結城には、特に噛み傷は見えない。

「特に、傷はないようだけど...うっ」

 結城は腹に違和感を感じた。

 原田が結城の腹にナイフを刺したのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ