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第4話 ノート

 家に帰り、本を読んでいると、一冊の本から小さな紙が出てきた。

 そこには次のように書いてあった。


「永遠の若さと美しさが欲しければ、我に血をささげよ」


 永遠の若さと美しさ。これは吸血鬼かその眷属になれば、手に入れることが出来る。

 血をささげるとは、噂のことを考えると、リストカットをしろということなのだろう。

 つまり、仲間になりたければ、リストカットをしろということなのだろう。

 

 冗談じゃない。そんなことをしてたまりますか。


 近頃学校でリストカットが流行っている原因は、これなのだろうか?

 単純に、吸血鬼に襲われているのではなく、永遠の若さと美しさを得るために、積極的に吸血鬼に血をささげているのだろうか。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 夜、ベットに入りながら、今日一日のことを振り返った。

 そして、ある疑問が生じた。


 私は吸血鬼が事件を起こしていると信じているのだろうか?


 信じていない。

 だが...どこかで、何かが引っかかる。

 周りの人の影響だろうか。


 神が存在して、天使が存在し、キリストの奇跡があるとすれば、当然、悪魔も存在していてもおかしくない。

 もしかりに、万が一、本当に吸血鬼が居るとしたら...私はどうしたら良いのだろうか。


 昼間の倉田さんの質問を思い出す。

「吸血鬼がいるとして、どうするの? あなたが、退治するわけ」

 やはり、誰かに頼むしかない。

 とりあえず、ネットを検索してみた。


 ネットで吸血などの都市伝説・噂を調べていると面白い噂を見つけた。

 怪物を倒す人たちの噂。

 これは、『死の鐘』の変形版だ。

 『死の鐘』とは、その鐘の音を聞いてしまうと、異界に連れていかれて、怪物に殺されると言う話だ。

 その後、回避方法が追加された。

 ポケットの中にタロットカードがあって、『カードの名前』を叫ぶと、魔法が使えるようになるというものだ。

 さらに、この部分だけが、取りだされた変化した。

 カードの魔法を使い異形の怪物や魔道師を退治する闇の狩人の噂。


 こんな人たちが実際するのだろうか。

 判らない。

 でも、万が一、吸血鬼が実在するとしたら、万が一にも、こんな人たちが居てもおかしくない。

 万が一のことが起きたら、この人たちに頼もう。

 そう思うと気が楽になって、安心して寝ることが出来た。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 次の日、澤田は、放送部員だと嘘を言って、西村の家からノートを入手を入手した。


 ノートは複数あり、放送部が過去に何回か、調査したことが判る。

 もっとも、古いノートは40年前のものだ。

 その中には、数多くのインタビューや憶測や推理が書かれていた。


 過去の在校生、先生へのインタビューなどは、かなり力が入ったものとなっている。

 親子三世代、四世代と通っている家族も多いため、身近な人からインタビューしただけでも、相当当時の状況が判ったのではないだろうか。


 この学校の吸血鬼伝説の元になった事件、それは、今から50年程前の話。

 イタリアから1人の神父が派遣されてきた。

 名前は、マルコ・ジュリアーニ。26歳。

 日本語が堪能なことから派遣された二枚目の青年だ。

 当然、若く二枚目の神父の赴任に、女生徒たちは色めきだった。

 しかし、若くても神父だ。女生徒たちがどんなにアプローチをしても一線を超えることはなかった。

 赴任して、3年目、そんな神父も、ある少女と恋に落ちた。

 2人は、他の生徒や先生にばれないように、静かに愛をはぐくんだ。

 連絡は手紙。会うのは、日が暮れた夜になってから。

 赴任して、4年目、事件が起きた。

 密告により、2人の恋は学校に知られることとなった。

 生徒は卒業前ということで退学を免れたが、マルコは除名されイタリアに帰国することとなった。

 これだけでも、伝説の元には十分だろう。

 しかし、話には続きがある。


 帰国したはずのマルコが、実は帰国していなかったのだ。

 これは先生方も知らない事実であり、一部の上層部のみが知っている事実だった。

 当初、学校側も、マルコが帰国の準備をし、部屋を払っていたことから帰国したものと思っていた。

 イタリア側からの連絡があり始めて判ったのだ。

 イタリア側からの要請もあり、入国に問い合わせたところ、出国の記録はない。

 女生徒への連絡もない。

 マルコは自殺したかのではないか?

 という噂が広まった。

 キリスト教の世界では、一般的に自殺者は天国に行けないと言われている。

 そのことがマルコが吸血鬼になったという話になり、マルコが行く不明という事実が、吸血鬼が学校に封印されているという話を生むことになったのではないか、と書かれている。


 そして、現在でも、マルコの消息は判っていない。


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