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第5話 友達

 昨日の夜に続き、いや、昨日の夜以上に、朝から連続殺人のニュースがテレビでは流れていた。


「里桜、今日は学校行くの止めた方が良いんじゃない?」

「何言っているのよ、お兄ちゃん。心配しすぎ。お兄ちゃんこそ、病み上がりなんだから、注意しなきゃだめだよ」


 中島秀雄が無罪判決を受けた事件は、少女連続誘拐殺人事件。

 被害者は、小学校高学年から中学生だった。

 今回の事件の被害者は、2人とも高校生とはいえ、高校一年生の割には比較的背が小さく、中学生と言っても通用しそうなタイプだった。再び小学校高学年から中学生を襲わない保証はない。


 学校に行っても、当然、話題は殺人事件の話。

 殺された二人が共に高校生であるため、親に学校に行くことを止められた女の子すらいる。


 部活に行くと、いつもの騒がしい山村美紀の声がしない。

 なんでも、親に学校に行くのを止められたらしい。

 自由奔放、夜遊びしまくりの山村が、止められるのはちょっと意外だったが、親の気持ちも判らなくもない。

 確かに、山村美紀は、被害者たちと同じ高校一年生だし、比較的背も小さく、髪型もロングのツーサイドアップ、全般的に小動物系で幼い感じがするタイプだ。

 ロリコンには、ど真ん中ストライクかもしれない。

 

 しかし、なぜ、鈴木が居ないんだ。男なんだから関係ないだろうに...

 鈴木と同じクラスの田中に聞いてみる。

「彼女を家まで、送って行くんだってさ」

「あれ?鈴木の彼女って、清瀬の方じゃなかったけ?」

「わざわざ、むかえにいくんだってさ」

「大変だな」

「そうよ。彼女を持つていうのは、大変なのよ。まめじゃなきゃ駄目なんだから」

「しかしな..どう考えても、あいつが一番危ないだろ」と三上部長。

 確かに。どう考えても、送り狼だろう。


「今日は、人数は少ないけど頑張りましょう」と三上部長が話を閉め、マクベスの第二幕第一場の練習を始める。


 山村と鈴木が居ないと部活って、こんなにさっくり進むんだなと思った。

 いかに日ごろ無駄話ばっかりしているかを痛感する。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 現在、結城隼人は、放課後、リハビリを兼ねて、バンド活動をやっている。

 場所は、知り合いの農家の蔵。古いし、汚いが、音が外に漏れず、遅くまで練習できるの良い。そして、何よりも、ただなのが素晴らしい。

 バンド活動は、もとからやっていたのではなく、病院で、リハビリを兼ねてやりはじめたら、ハマったと言うべきだろうか。

 足が不自由になり、フェンシングが出来なくなったため、気を紛らわせるためにも、熱中するための何かが必要だったのは間違いない。

 やり始めると、手先の器用さと動きの速さとリズム感の良さで、またたく間に腕が上がった。

 フェンシングをやっていたことによる手首の強さが、ドラムに合っていたようだ。

 ドラムは、楽器が高いうえに場所を取り練習場所が限られるため、ギターやベースに比べるとやっている人間が少ない。

 そのため、体が不自由なうえ、技能的に多少未熟であっても、引く手あまたであった。

 そして、幸運なことに、短期間で多くの、友人を作ることできた。

 

 現在の目標は、吉祥寺のライブハウス『フォルテ』主催の高校生大会に出場し、あわよくば優勝すること。

 そのために、皆と遅くまで練習している。


 しかし、問題がないわけではない。

 コピーは良いのだが、オリジナル曲が出来ていないのだ。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇


 原田優奈は、清水に手伝ってもらい、この間会った白い雨合羽の女の子、白鳥美穂の友人を探すことにした。

 原田は人当たりは良いのだが、嘘が下手なため、情報を引き出すのが、あまり上手ではない。

 また、魔法も発現しにくいものばかりだ。


 魔法には発現しやすさにレベルがある。

 レベル1は本人が現実世界で出来ること。

 レベル2は他人が現実世界で出来ること。

 レベル3は現在で出来る人間はいないが現実世界で可能なこと。

 レベル4は現実世界では不可能なこと。


 原田兄が自分のあいの世界を作り出したように、清水もある程度なら自分のあいの世界を作り出すことができる。

 そして、その世界で能力を使うことができる。

 原田と異なり、清水は嘘や演技も上手く、また能力も調査向きだ。

 人と接触すればある程度感情や考えが判るし、コンピュータ内の情報検索もできる。

 これらの能力はレベル2程度の発現しやすさだ。


 清水は、茨をコンピュータに絡めると、警察のコンピュータから事件の調書を、学校のコンピュータからはクラスの名簿や写真を手に入れた。

 調書を見れば、事件当時、白鳥美穂が誰のところに行ったか判るし、学校のクラスの名簿や写真を見れば、その友人の顔が判る。


 白鳥美穂が会いに行った少女の名前は、佐々木明日香。

 なかなかの長身で、腰までの長い髪が似合う利発そうな女の子だ。

 仲良しなのだろう。

 遠足などイベントの写真では、いつも白鳥は佐々木と一緒に写っていて、白鳥美穂と同じような白いワンピースを着ている。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「そんな話信じろっていうの?おねぇさんたち、頭おかしいんじゃないの」


 家の近所で遊んでいた佐々木に会い。

 原田優奈が白鳥と会ったことを話した。

 死んだ白鳥に会って話した。そんな話をまっとうな小学校六年生が信じるわけがない。


「そうよね。いきなり信じろっていうのは無理よね。私は、あなたと彼女の間に何があったかも知らない。だけど、彼女は、あなたを傷つけてしまったことを後悔していたわ。白鳥さんにとって、あなた一番大切で、一番好きな友達だったことだけは信じて」

「一番大切で、一番好きな友達か...」

 佐々木の顔は、どこか悲しそうだった。


「おねぇさんの話を信じるとして、私は何をしたら良いの」

「手紙を書いて、今度彼女に会ったときに渡すから」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 夢を見るのは嫌い。

 人が死ぬ瞬間が見えるから。

 あの時の夢を見るから。

 夢なんか見たくない。


 場所は美穂ちゃんが死んだ野川公園。


 仮面を付けた赤マントが、美穂ちゃんを襲っていた。


 美穂ちゃんを助けないと。

 私はなぜか、手に握っている鎌で赤マントを止めようとした。


 でも...でも...赤マントを止められなかった。

 

 赤マントは、美穂ちゃんを鎌で貫き、釣り上げると、そのまま美穂ちゃんを川に捨てた。


 私は美穂ちゃんの元へ急いで駆け寄った。

 私は、川に入ると、水面に浮いている美穂ちゃんを抱き上げた。

 美穂ちゃんの白いワンピースが徐々に赤い色に染まっていく。

 

 もう、私には、美穂ちゃんを助ける方法が判らない。


「明日香ちゃん...?」

「そうよ。明日香だよ。美穂ちゃん」

「明日香ちゃん...もう..私助からないわ...お願いがあるの...」

「何?」

「...明日香ちゃん...私を殺して」

「えっ?」

「...殺して...悪魔に殺されたら天国へいけないの...殺して...」

「美穂ちゃん!美穂ちゃん!」

 美穂の返事はない。

 このままでは美穂ちゃんは、天国へいけない。

 明日香は、鎌で美穂の胸を刺した。


 美穂の体が、徐々に薄くなって行く。

 天国へ行ったのだろうか?


 でも、私は美穂ちゃんを殺してしまった。

 美穂ちゃんを殺してしまった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 また、嫌な夢を見てしまった。


 昼間のおねぇちゃんたちは、何者なんだろう?


 原田のおねえちゃんの言っていることが、正しいとしたら、美穂ちゃんは、天国に行っていないことになる。


 どうしたら、美穂ちゃんを天国に連れていってあげられるんだろう。


 おねえちゃんは、手紙を渡すと言っていた。

 あのおねぇちゃんたちが、嘘を言っているとは思えない。

 あのおねぇちゃんたちなら、なんとかできるのかな?


 判らない。どうしたら良いんだろう。


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