第7話 地下二階
扉は慎重に開けなくてはならない。
開けた瞬間。怪物とご対面という事態は、何としても避けないといけない。
それにして寒い。1月の夜ぐらいの寒さだろうか。さすがに半そでではなかったが、薄着をしていたため、寒さがこたえる。
恐らく霊安室から漏れた冷気が下の階へと流れているのだろう。地下二階で、この寒さだと、地下一階は、凍っていてもおかしくない。
慎重、扉をこじ開けると真っ暗だ。
1階が、窓や中庭のおかげで、薄明かりだったのに対して、暗闇。
慎重に懐中電灯で、照らすと病室が見える。
なぜ、地下に病室があるのだろうか?
普通、日が当らない地下には病室なんてない。
そもそも、地下2階なんて、はなからないわけだからいい加減な作りだ。
しかし、こんな地下の病室に、入院する患者なんて...当然まともではない。
そのことは、すぐに判ることになった。
奥の病室の扉が開き、人型の何かが3体程、出てくる。
既に腐敗し死んだ患者。骨がむき出しになっているものも多い。ピンク色の寝巻の子供の患者までいる。
地上は、生きている患者の意思が具現化したものだったが、ここに生きた患者はない。
そこにあるのは、生者への嫉妬。生への思い。
他の病室も騒がしい。
こんなのが、何体も出てこられては、たまらない。
ライトを照らし、階段を探すと、幸運なことに、非常口のマークがあった。
しかし、一番奥だ。
これが、「幸中の不幸」だろうか。
とりあえず、30メートルほどの廊下を突き抜け。
怪物を倒し、上の階へと行くしかない。
覚悟を決めると、近藤は廊下を駆け抜けた。
怪物どもを切ると、肉汁が飛び散り、酷いににおいがする。そればかりではなく、その腐敗した肉汁に触れると、洋服や皮膚・肉が硫酸でもかけられたかのように、焼け始める。
ぐっ。
苦しいが我慢するしかない。
ようやく、扉に到着すると、扉を急いで開け、閉める。
怪物どもが、間に手・足を入れてくるが、押しつぶす。
肉尻が飛び散り、顔や手を焼くが、怯んではられない。ようやく、扉が閉まる。
だが、安堵している暇はない。カギを閉められないので、開かないように、ドアの取っ手を捻じ曲げる。
これすらも、数分しかもたないだろう。先を急ぐしかない。
急いで、上の階へと昇る。
地下一階へ上ることができたが、地下一階から、地上へは、防火扉が降りていて、閉ざされていた。
開かない。
剣で、切りつけるが破壊できない。
剣は、怪物だろうが、鉄板だろうが、建物だろうが、破壊できるのに、ガラス一枚割れないときがある。
キ助に言わせると、壊れないものは、時間が止まっているみたいなものなので、破壊不可能だと言っていた。
あいの世界で、100%襲ってこない、唯一のものだから安心していいと言われたが、じゃまだ。
しょうがないので、地下一階を通るしかないのだが、地下一階への非常口への扉が凍りついている。
どうやら、中は極寒の地獄のようだ。
凍りついているドアを地下づくでこじ開ける。
予想通り寒い。
中を照らすと、どうやら、この階は、地図通り作られているようだ。だとすると、霊安室の前を通らないと、もう一つの階段へは行けない。
今までのパターンを考えると、霊安室に何かいないはずがない。
ガシャン。
地下二階のドアが壊れた音だ。足が遅いとはいえ、十数秒後には奴らが来る。
もう、行くしない。