閑話 近藤と小野寺さんの微妙な関係
「ねぇ、瞳。『s.k』の奴が、他の学校の女子とデートしたって話聞いた?」
「s.k」は近藤信也のイニシャルだが、意味はそれだけではない。
小野寺を探した際に使った写真の出所が近藤の盗撮だったことから「盗撮魔」「ストーカー」と言われ、定着したあだ名が『s.k』。
「朝、ヨッシーから聞いた」
「なんだ知ってたのか」
「それにしても、『s.k』の奴、告白した直後に別の女と浮気しているなんて、最低だな」と小野寺の隣に居る女生徒。
「浮気って...まだ、付き合ってもいないのに、浮気はないでしょ。それに、その人が彼女かどうかもはっきりしないし。私を探すためにその人と相談していたのかもしれないし」
「写真あるけど、見てみる」
どんな女性と一緒に居るんだろう。なぜか、気になる。
「あいつと一緒に居る女性なんて、どうせブスだろ」
「それが結構、美人なんだな」
「マジかよ。見せろよ」
「結構、美人じゃん」
「本当だ」
皆が口ぐちに美人という。美人なんだ。
「私にも、見せて」
小野寺は、写真の人物に見覚えがあった。
この人、弓道の関東大会で2年連続で優勝した清水葵さんではないだろうか。弓道をやってる小野寺にとって、清水葵は憧れの人。 その憧れの人と、近藤が知り合いだというのは意外だった。
それにしても、清水さんには、弓道場以外にも会った気がするのだが...思い出せない。
「瞳的には、どうなのよ」
「何が?」
「腹立つの?」
「そりゃ。少しは」
「それって、少しは『s.k』を好きってこと?さっきの言葉なんて、『s.k』をかばってるみたいだったよ」
「...そうなのかな?」
「え?」
「しょうがないじゃない。私にも私の気持ちが判らないんだから」
「何よそれ?」
「前もって言っておくけど、私は好きとも嫌いとも言っていないの。ただ、あいつかが勝手に告白して、勝手に自爆しただけなんだから」