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プロローグ その2

 私の住んでいる街は、池袋や新宿に快速で20分ほどの東京郊外の街。

 特に名産もなく、正直言って特徴はない俗に言うベットタウン。


 23区に比べれば、緑や畑の多い田舎だけど、私はそこが気に入っている。

 都心には遊びや買い物で良く行くけど、どうしても疲れてしまう。所詮田舎者ということだ。

 もちろん、田舎といっても、埼玉の新座ほど田舎ではない。

 吉祥寺にだって自転車で20分で行けるし(全速力でだけど)、近頃、渋谷にも直通で行けて、結構便利だと思っている。

 あくまでも東京の郊外なのだ。ここ重要。


 この街に住んで10年。私の人生が、15年だから、ほとんどこの街に住んでいる。

 近所のおばあちゃんに比べると、まだまだ、だけど、街のことは、それなりに詳しいつもりだ。


 そんな私が言うのも、変だけど、このところ街がおかしい。


 別に大きな事件や事故が多発しているわけではない。

 私は霊感が強いわけでもないから、幽霊もUFOも見たことないけど、何かおかしいと感じている。


 まず、家出する子が増えている。遊んでいる子ならまだしも、家出なんてしそうもない子の家出が増えている。

 警察や先生、大人たちは、普通の子の家出なんて珍しくないという。

 だけど、私から見れば、彼らは個人や子供を良く見ていないのだ。

 だから、普通という言葉で一括りにして判断する。


 あと、妙に突然、別れる人たちが多い。

 確かに、4月に出会い、数ヵ月後に別れるのは珍しくないんだけど、別れる気配が一切ないラブラブだったのが、突然別れるんだから、不思議としか言いようがない。


 もっとも、私にとって現在、一番おかしくて、一番気になるのは、部活動の先輩(男)の恋の行方。

 恋に疎い先輩が、右往左往している姿は、正直、見てられない。

 そこで、いろいろアドバイスするだが、どうにも駄目だ。

 先輩は、見た身も悪くないし、優しいんだけど、男として『カッコよさ』『頼もしさ』が、まったくない。

 典型的な、草食系。

 良いお友達にはなれるが、彼氏としては頼りない。

 その辺が、母性をくすぐるという人も居るけど、私はパス。

 相手は、カワイイ私から見ても、カワイイ先輩。

 正直高嶺の花だ。

 普通に考えると玉砕だけど、良く当たる占いによると、先輩と相手は『赤い糸でつながっている』らしい。

 う~ん、信じられない。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 その構図は異常だった。

 薄汚れた路地裏で、中年男が頭を地面に付け、涙を流しながら、髪を後ろで束ねた女子高生らしきの長髪少女に命乞いをしていた。


 それだけならば、不良少女にオヤジ狩りの獲物にされた中年オヤジかもしれない。

 しかし、少女の左手の手元から伸びるバラの茨に縛られ、サブマシンガンを突きつけられている構図は、異常としか言えなかった。


「なぁ、頼む。命だけは助けてくれ。何でもする。あんた仲間がいるんだろ。俺も仲間にしてくれ役に立つからさ」と涙を流しながら、懇願する。


「正直言ってあんたみたいな男、趣味じゃないだけど...そう...なんでもしてくれるんだ....」

「あんた、カードが欲しかったんだろ。なぁ、やるから許してくれ。頼む。助けてくれ」

「あなた。そうやって命乞いをした人に、今まで何をしたの」

「それは...夢の中の話だろ。犯罪じゃない」


「その通りよ。そして、これも夢の中の話」と少女は引き金を引いた。


 少女が手にしていたのは、違法改造されたエアガンだった。高圧力のガスにより、金属の球が発射され、男の体を蜂の巣にした。

 少女は、何事もなかったように平然としていた。

 しばらくすると、男は完全に死んだ。

 すると、男の死体は、解けるように消えて行った。

 少女は、ポケットの中から一枚のカードを取り出すと、カードの絵柄を見た。


「聖杯の5。やっぱり、この程度か」


 少女は、カードを自分のポケットに入れると、髪を束ねていたリボンを解いた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 もう、夜中の2時。

 明日は学校があるので寝なくてはならない。

 しかし、寝たくはなかった。

 不眠症ではない。

 というか、猛烈に眠い。

 しかし、できれば寝たくない。

 以前は、趣味は「寝ること」と答えていた。

 しかし、近頃は寝るのが、少し怖くなってきた。


 ゲームのやりすぎだろうか。

 それとも、マンガの見すぎだろうか?

 近頃、変な夢を見る。

 しかも、同じ夢を。


 自分が、気味の悪い錆ついた街でゾンビのような怪物たちから逃げ回っているのだ。

 夢の舞台は、見知らぬ街ではなく、全て見覚えのある場所。

 だだし、特定の場所ではなく、あるときは、見知らぬ学校、あるときは近所の繁華街などで夢は始まる。 

 そして、その臨場感が半端じゃない。

 美術は得意ではないのだが、自分に、これだけの想像力があるんだと驚いてしまう。

 怪物たちを倒し、飛び散った血肉の匂いと感触。

 そして、攻撃を受けたときの痛み。

 通夢の中で顔をつねると痛くないというのだが、物凄く痛い。


 朝起きなければ、とても夢とは思えない内容だった。

 そして、十分な時間寝ているにも関わらず猛烈に精神的に疲れている。


 こんな夢を見始めたのは、つい一週間前からだ。

 好きな女子を夢で見るなら判るが、なぜ気味の悪い夢を見なくてならないのだろうか?

 夢を見るのは自分だ。変な夢を見たとしても、自己責任なのだが...


 ◇ ◇ ◇ ◇


 目が覚めると、僕は棺の中にいた。

 正確に言うならば、目が覚めたのではなく、そういう夢を見ているのだ。

 目が覚めたならば、早急に棺から抜け出し、逃げる必要性がある。

 この世界には、怪物が存在していて、グズグズしていると襲われるからだ。


 棺の蓋を押し、身を起こし辺りを見渡した

 今回の場所は...街中...吉祥寺駅北口のサンロード商店街入り口の路上...

 今までの中で一番最悪だ。

 人が多いところは、ゾンビも多い。この一週間で少し判ったことだ。

 前回の小平の商店街とは、比較にならない程、人が多い。

 案の定、駅や商店街の店舗などから、次から次へと怪物が出て来る。


 しかし、調子に乗って、戦い続けるようなことはしない。

 戦うよりも、逃げろ。これがこの世界に来て学んだこと。

 幸運なことに、寝巻きではなく、ちゃんと外出ように私服で、靴も履いている。

 怪物と戦っても、怪我すると痛いし、得るものは無い。

 たいていのゾンビは動きも鈍く力もたいしたことは無いのだが、中には、バットや刀、斧など凶器を持った奴らが居る。

 二日目に、油断をし、刀に切りつけられたことがあったが、その時は、左手の手首から下を切り落とされた。

 そんな体験をしたことはなかったが、激痛で意識がその瞬間遠くなった。


 朝起きたときにも、手首の周りに、ミミズ腫れができていた。

 催眠術にかかっている人に、焼けた石だと言って、氷を手で持たせると、手に火傷の水脹れが出来ると聞いたことがあるが、それと似たようなものだろうか?

 ならば、首を切られた場合、どうなるんだろうか?

 首にミミズ腫れができるのだろう。

 それとも、ショック死だろうか?

 とてもじゃないが、試す気にはなれなかった。


 近藤はとりあえず、建物の屋上へと逃げた。

 人が来ないところには、ゾンビも少ない。

 そのため、出来る限り屋根など高いところに逃げるようにしている。

 中には、這い上がってくる怪物や襲ってくる鳥などもいるが、集団に囲まれるよりかははるかにましだ。


 夢を見始めて、一週間、この世界も多少は判る様になってきた。

 この夢は、やはりゲームをベースにしているのだろうか。

 ゾンビたちとは違う特殊なボスキャラのようなキャラがいて、街を徘徊しているのを時より見ることがある。

 そいつを倒さないと、話が進まないのだろうか?

 逃げてばかりだから、同じ夢ばかり見るのだろうか?


 自分の夢ながら、面倒なフラグがあるもんだ。

 せめて事前に、粗筋を聞きたいものだ。そうしないと、倒さないといけないのか、どうかすら判断できない。


 近頃の出来の良いゲームであれば、ストーリーを楽しむために、序盤には無茶苦茶強い敵は出てこないのだが、自分の夢だ。

 ゲームバランスがとれている保証はない。



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