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第13話 試練

 何で僕が、小野寺さんを襲っているんだ...ここにいる僕は何なんだ。

 僕の邪な彼女への欲望が実体化したのだろうか。

 男は、まるで僕の心見透かしたみたいに、ニタニタと笑うと、再び彼女を襲い始めた。

「止めろ」

 その男に向って飛び掛った。先手必勝。相手の顔面を蹴った。

 そして、押した倒し、馬乗りになった。

 男は抵抗はなく、再び、ニタニタと笑う。

 まるで、やれるものならやってみろといった顔だ。

 力の限り、顔面を殴りつけた。


 自分で自分を殴る奇怪な感覚。

 男の顔は、鼻や歯は折れ、すぐに血まみれになった。

 じきに男の体から力が抜けた。

 気絶したのだろうか、それとも、死んだのだろうか。そんなことはどうで良かった。

 自分は勝ったのだ。小野寺さんを襲っていた奴を倒したのだ。

 しかし、小野寺さんは、見直してくれるだろうか?

 無理だろう。

 なんといっても、襲っていたのは自分なのだから。


『!!』

 脇が痛い。厚い。

 振り返ると...小野寺さんが居る。小野寺さんが僕をさしたんだ。

「小野寺さん?」

 返事がない。いや、むしろ笑っている。

 とりあえず、蹴りを入れて離れる。

 腰を触ると血で滑っとする。さらに足腰に力が入らない。

 油断した。

 まだだ。

まだ戦える。


 しかし、この小野寺さんは本物だろうか? 

 操られた本物なら手荒な扱いはできない。

 "偽物だ。妹ではない"

 頭に直接、聞こえてくる。誰の声だ。


 その声がした瞬間、小野寺さんの顔は、人間の顔とは思えなかった程、歪み捻じ曲り始めた。偽物だと判ったが...おぃ、変身はズルイだろ。

 体が徐々に膨らんでいく。

 いや、正確に筋骨隆々のプロレスラーのような体格になり、天井に着きそうなその巨体は、軽く二メートル後半はあるだろう。

 それだけではない、僕の脇を刺したナイフは、僕の身長ほどに巨大化した。

 横を見ると男は消えている。

 あっちが偽物で、こっちが本体ということか。

 ついさっきまで小野寺さんだった巨人は、変身を終えると、大剣を振り回し、襲いかかってきた。

 まずい。とりあえず逃げよう。


 勝算こそなかったが、近藤に策がないわけでもなかった。

 巨人の体も、大剣も学校の通路には大きすぎる。小さいスペースに逃げるのが、重要だ。

 予想通り、巨人の振り回す大剣は柱に引っかかった。

 だが、それからの予想は違った。巨人の大剣は柱を切断した。

 天井が崩落する。

 巨人は、大剣を振り回し、学校を破壊しながら迫ってくる。

 たまらず、近藤は教室へと逃げ込む。しかし、これは大きなミスだった。逃げ道がない。

 外を見ると、外は別の怪物どもで溢れていた。

 巨人は、壁ごとぶち壊し、教室に入ってくる。

 近藤は、そのすきを逃さなかった。

 椅子、机と踏み台にして、巨人の顔に膝蹴りを入れると、素早く背後に逃げる。

 が、瓦礫につまづき転倒してしまう。

 巨人は、怒りにませて大剣を振り上げる。

 大剣は天井に引っかかるが、天井を切り裂き、近藤目がけて振り下ろされた。

 大剣が体の側を通る。

 天井を割くことにより若干減速されていたため、近藤は辛うじて避けることができた。

 大剣は床を切り裂き、床に食い込む。


 "今だ。行け"

 また声が聞こえる。


「判っているよ」

 最後の力を振り絞り、巨人に向かっていく。

 床にめりこんでいる大剣を踏み台にして、ジャンプ。

 跳び箱のように相手の頭を押さえ、顔面に膝蹴りを入れる。

 続いて、背後に回ると、全身を使って裸絞(はだかじめ)をかけた。


 たまらず、巨人は剣から手を離し、手で近藤を引き離す。

 裸絞が効いたのか、相手もふらついている。


  "大剣を使え"


 こんなもん使えるのか?

 しかし、迷っている暇はない。

 大剣を持つと...動いた。

 行けるかもしれない。

 信じられないことに、大剣を持つことができた。

 最後の力を使い、その剣を巨人に振り下ろす。


 勝ったのか?

 振り下ろした瞬間に意識が飛んだようだ。

 出血もひどい。寒い。

 徐々に、意識が遠のいていく。

 薄れ行く意識の中、光に包まれた男が近づいてくる。


(天使だろうか)


「大丈夫だ。死なせはしない」

 その声は聞き覚えがある。頭に直接聞こえる声の主だ。

 男が脇に手を触れると痛みが引いていく。

「あんた誰なんだ」

「小野寺 歩。はじめまして、小野寺瞳の兄です」

 なんで、小野寺さんの兄さんが僕を助けるんだ。

「生きていれば。糸さえ切れなければ、君は、俺の弟になったかもしれない人なんだ。助けて当然だろ。妹は、自分のせいで暗い闇の中にいる。だけど、今の自分には妹を助けることはできない。妹を頼む。妹を助けてくれ」 



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