表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/104

閑話 その1 名声

 もう夜の10時。

 廃墟からの帰り道、渋谷のマークシティを歩いていると、どこかで会ったことがあるような女の子が居た。

 ギャルオ系ファッションの男3人にナンパされている女の子3人組の1人だ。

 スポーツ系ボーイッシュな感じで、渋谷で夜遅くまで遊んでいるような感じではない。

 夏休みの魔力だろうか。


 気のせいか、ナンパを嫌がっているように見えるのだが...どうにも、若い子のリアクションは判らない。


「どうしたの」

 近藤の態度が気になったのか、原田さんが声をかけてきた。

「あそこで、ナンパされている女の子。学校で見たことがあるなと思って」

「なんか嫌がってない」

「やっぱり、そう見えますか」

「お前には、そう見えないのか」

「嫌よ、嫌よも、好きの内って言うじゃないですか。あれって、交渉術じゃないんですか」

「女の私から見て、あれは100%嫌がっているぞ」

「男の俺から見てもそうだ」

 そうですか...男女二人が言うのだから間違いないだろう。


「......」

 三人とも僕を無言で見る。

「助けないといけないですかね」

「助けないの」

 原田さんが軽蔑した眼差しで見る。

「勘違いだと恥ずかしいし...それもありかなと思ったのですが...」

「その選択は、人間として、どうかと思うよ」

「そうですよね...」


 作戦としては取りあえず、知り合いを装った挨拶。

 その後は、流れでアドリブだ。

 そんな器用なことが僕に出来るのだろうか。

「助けてほしければ、女の子の方が話を合わすから大丈夫よ」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 女の子たちに近づくと、大きな溜息の後、覚悟を決めて声をかけた。

「おひさしぶり」

 近藤の挨拶に対して、男たちは近藤を睨みつけ、女の子2人は、けげんな顔をした。

 しかし、1人だけは明るい顔になった。

「近藤先輩。こんばんわ。遅いじゃないですか、待ちましたよ」

 なるほど、これが女の子方から、話を合わすというやつか。

 それにしても、彼女は僕の苗字を知っていた。

 僕って、そんなに有名人だったかな。


「ごめん。ごめん。ところでこちらの人たちは」

「先輩が、あまりにも遅いんで、私たちナンパされていたんですよ」

「どうも、すいません」

「連れが居るんじゃ。しょうがないな。じゃあ、また、別の機会にね」

 男たちは、爽やかに去っていたった。

 う~ん、引き際を判っているということか。やるな。


「先輩。ありがとう。ございます。ナンパがしつこくて困っていたんです」

 夜遅くまで居るからだと小言を言いそうになったが、そこは我慢した。

「今から帰るんだけど、一緒に帰る?」

 彼女たちはお互いを見ると「はい」と返事をした。

 どうやら、多少は懲りたようだ。


 帰る途中で話を聞くと、僕を知っていた生徒は、部室が演劇部のとなりのテニス部に所属していた。

 なるほど、だから顔だけ覚えていたのか。

 しかし、なんで彼女は、僕の名前を知っていたんだろうか。

 彼女は言うのを躊躇ちゅうちょしていたが、ようやく話してくれた


「演劇部の三上先輩や山村さんって、有名ですよね」

 確かに、三上先輩や山村は、見た目、人脈、行動、態度などなどで学校では有名人だ。

「先輩は、振り回されている人ってことで有名ですよ」

「......」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ