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とても怪しいラブコメ短編集  作者: 流離の風来坊


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18/43

ハグで女子高生の自殺を防げ(異世界転生/転移)

ハグをするとなぜか女子がメロメロになってしまう謎の力を持つヨシタカのオマケ・ネタです。

ミキオ「いきなりなんだが、女の子とのハグの仕方を教えてくれ」


 そろそろ放課後の掃除も終わり、高校から帰宅するかというタイミングで元勇者パーティの友人である小林幹夫(こばやしミキオ)が俺に声を掛けてきた。


ヨシタカ「どうしたんだ? 何か変なものでも食ったか?」


 俺は西之原義孝(にしのはらヨシタカ)、高校二年生だ。


ミキオ「いや、変なものは食ってない。さっき瑞葉(ミズハ)(ハル)が会話をしていてさ。俺の彼女の朱莉(あかり)と親密度を増すために恋人ハグ、または友達ハグの仕方をお前に習おうと思って」


 ん? 俺の彼女の瑞葉と女神ハルちゃんが会話をしていて、ミキオの彼女の朱莉ちゃんとハグをしたいからって俺にやり方を教えろと?


 意味が分からずハテナという顔をしていると、ミキオが説明を追加した。


ミキオ「いやな、先ほどの話だ。瑞葉と華がお前にハグされると、とても幸せな気持ちになるんだと。瑞葉が言うには異世界滞在時の固有スキル『ハグ』という技みたいなのだが、詳しくは分からん」


ヨシタカ「いやマテ。俺だって分からん。お前が解らんことを俺が分かるわけないだろ」


 しかし、一応、聞かれた内容は吟味する。そうだな……


ヨシタカ「なぁミキオ、ハグというのは一日一回するとストレスが軽減されるという話があってだな、特に俺がいつもしてると言うなら妹の由愛(ユアイ)にだな、家族ハグというのをしてあげるぐらいだぞ?」


ミキオ「そう、それ。何だかとんでもなく破壊力があるそうなんだ。コツを教えれ」


ヨシタカ「コツって言ってもなぁ、身体と心を一緒に優しく抱きしめてあげるというぐらいしかないぞ?」


 俺がいつも妹を抱き締める時は無意識だが心と体を一緒に抱き締めるように心がける。優しくな。


ミキオ「なるほど、そういう心がけをしながら繰り返せば上達していくんだな。よく分かった。早速、実践してみるわ。サンキューな、ヨシタカ」


「お、おう」


・・・・・


【次の日】


「おい、ヨシタカ」

「こんにちは、西之原(ヨシタカ)君」


「ん、なんだミキオと朱莉ちゃんか。恋人同士ペアで揃ってどうした?」


「頼みがある」

「私は何も聞いてませんけどね」


「ん? 何かな」


「朱莉、ヨシタカのハグを一度経験してみてくれ」

「えっ、何? ちょ、ちょっとミキオくん、いくら友達だからってヨシタカ君とのハグは駄目でしょ」


「いや、欧米にホームステイした場合、普通にハグをし合うだろ? それと同じだ。そして朱莉には一度ヨシタカの家族ハグを経験して貰って、俺とハグする際に感触など教えてくれ」


 いきなり教室に朱莉を連れてきたミキオが訳の分からない会話をし始めた。


「昨日の会話の件か? 俺のハグが固有スキルだとか何とかの」


「ああ、ちょっと朱莉を抱き締めてやってくれ」


「いいのかよ?」


「もちろん」


「あの~、二人とも勝手に話を進めないでくれません?」


「さ、いいからいいから。ヨシタカ、頼む」


「えー」


 少し悩んだが、まぁ別に減るものでもないし、親愛のハグだから何の問題もないだろう。

 俺は両手を広げて待ちの体制を取る。


「じゃ、朱莉ちゃん、どうぞ」

「もう……本当にミキオくんったら……、ヨシタカ君、お邪魔します……、えっ!」


「ぎゅっとするぞ」

「えっ、えっ、えっ、あっ、あっ、あっ、ダメっ」


「はい、終わり。ありがとう朱莉ちゃん」


「あ、あ……、う、うん……」

「朱莉、どうよ、ヨシタカの家族ハグはどんな感じだった?」


 真っ赤っかな顔をして俯く朱莉は息を切らして未だ呼吸すら不確かな様子だった。


「はぁ、はぁ、はぁ」

(だ、だめだわ、これ以上ハグされたら、私、西之原君にNTRされちゃう)


 どうやら朱莉ちゃんは興奮してしまって喋られないようだった。


「ミキオ、俺自身がよく分からんのだが、心と体を一緒に抱き締めればいいだけだぞ」


「それなんだがな……」

「ふむふむ」


「うーん。昨日な、ヨシタカに教えて貰った通りにやったんだが、別に変わらず普通のハグのままだったんだよ」


「下心で抱きしめたら駄目だぞ。それは恋人ハグだ。家族ハグとは別モノだ」


「な、なんだと、恋人ハグは下心ハグなのか」


「まぁ、俺だって特別なハグをしている気はないからな。練習してくれ。俺は帰るぞ。妹が校門で待ってるからな」


 そこにタイミング悪く教室に入ってきたのは櫻井聡(さくらいサトシ)だった。


サトシ「みんな何やってたんだい?」

ミキオ「あー、サトシか、いや、ヨシタカに家族ハグの仕方を習っていたんだ」

サトシ「ヨシタカ君の? ハルちゃんすら幸せを感じすぎて気絶したやつだよね」

ヨシタカ「よく覚えてるな、そんな昔の事」


サトシ「ハルちゃんを抱き締めただなんて、うらやま悔しいからね」

ミキオ「サトシは、ほら、ハルに告白して当たって砕けてから泣きながらハグをしてみろ」

サトシ「それで成功するなら警察要らないよ」

ミキオ「ハルは泣いたお前を見捨てられずにハグを返してくれるはずだぜ?」


ヨシタカ「……もうサトシとミキオには付き合いきれん、じゃ、また明日な」


 そういってヨシタカは教室を出た。愛しき妹の由愛の待つ校門に向かって。


 放置されてた朱莉

「ねぇ、男子同士のハグはどうなの?」


「「へっ?」」


 ミキオとサトシは顔を見合わせて頷いた。そしてヒシッと抱き締め合った。まさにBLである。


「どうかな?」


「何も感じんぞ」

「僕も。普通に抱き合ってる感じがするだけ」


 この風景を教室の外から眺めるミズハとハルがいた。


「何かまた変なことが流行ってるわ。ヨシタカ君のせいかしら」

「ミズハちん、目が怖いよ」

「私という恋人が廊下にいるのに気がつきもせず他の娘と抱き合うのは許せません」

「あう……」

「ハルちゃんは気絶するぐらい気持ち良かったんだよね」

「あう……ミズハちん、ごめんなさい」


「ま、でもね、尊いBLが見られたから許します」

「ミズハちん、少し腐が入ってるよ」

「ふふ腐……」


 委員会があったので、クラス委員長の瑞葉(ミズハ)と隣の委員長の(ハル)はヨシタカと一緒に帰られなかった。更に廊下に居るのに気づきもせずに靴箱へ急いだヨシタカに今度説教だからね! と心に誓う瑞葉であった。


・・・・・


【正門に向かっている】


 下駄箱で靴を履き替え玄関を抜けて外へ出ると、夏美ちゃんという同級生がいた。

 なぜか高校内に出来た非公式・西之原(ヨシタカ)ファンクラブの会員である。

 現在、会員は二十数名。


「あ、西之原(ヨシタカ)くん、今帰りなの? お別れのハグして」

「ああ、夏美ちゃんか、いいよ。今ハグが流行ってるのかい?」

「前からだよー」


「そうか……どうぞ」両腕を広げて待機。

「う、うん」 

「ギュー」

「ひゃんっ!」


「あっ、あっ、あっ、い、いや、だ、ダメになりそう……」

「夏美ちゃん? どうかしたかい」

「ああ、耳の近くで喋っちゃイヤなの。感じちゃうの」


「はい、じゃ、夏美ちゃん、さよなら、また明日な」

「あ、ありがとう……。おやすみなさい、あなた……」


 待ってた夏美の友人

「ちょっと夏美、挨拶が若奥様になってるわよ」


 ヨシタカが校門を通過するところに由愛が門の内側から出てきた。

 なぜか怒った顔をしている。さっきの夏美とのハグを見たせいだろうか?


「お兄ちゃん、待ってたよ。もう教室まで迎えに行こうと思ってた」

「遅いよ。それに……知らない娘とハグしてた!」


「嫉妬しちゃう! 拡散っ! エクスプローーージョン!」


 どどーーーん ずずーーーーんんんん


「ま、待て由愛、校庭が、運動場が火炎に包まれてるぞ!」

「ちょっとムカついただけ。大丈夫、他の生徒さんたちには結界バリアーを張ってるわ」

「なら安心か、でもストレス溜ってんなぁ」

「誰かさんがストレスを溜めさせるからよ」


 異世界から戻った勇者パーティの面々は、日常を無事に過ごしていたが、時々、兄に片想いを拗らせた由愛がストレスを抱えている兆しを見せていた。原因は大好きな兄に高校内でファンクラブなるものが結成され、時々、校舎内、教室内でハグを求められているからだった。


「しかし由愛なぁ、現実世界に戻ってきたら魔法は極力使わないようにしないと。まぁ火災はしばらくすれば消えるし大丈夫だと思うが、それにしてもなぁ」


「やりすぎにならないよう気をつけるわ」

「校舎を吹き飛ばすんじゃないかと心配したぞ」

「プンッ」と由愛は頬を膨らませて顔を背ける。可愛い。


 由愛が溜めているストレスの原因が自分にあるとは思ってもみないヨシタカ。

 二人は手を繋ぎながら自宅の方へ向かっていく。途中には駅があり正面にロータリーがある。


「おや? 駅ビルの手前のマンションの屋上で、制服の娘が下を覗いているぞ。危ないな」

「どこ? お兄ちゃん」

「あそこだ、あ、ヤバいかも。急ぐぞ」

「はい。女子生徒の姿を私も確認したわ、思い詰めてそう、危険ね」


 帰宅途中の殆どの人達は上を向いていないために、女子生徒の飛び降りようとする様子に気づいていない。ヨシタカとユアイは手を繋ぐのを止め、マンションの屋上へ全力で走って向かう。


「間に合うか? もし彼女が飛び降りたら結界を張ってくれ」

「分かりました。お兄ちゃん」


「こんな時にサトシが居れば空間転移で落下地点に飛ばしてもらうんだが」

「私も覚えようかしら、空間転移」


「俺のマイナスの付与が届けば、足の力も、柵を乗り越えようとする腕の力も下げられる……もう少しだ」


「お兄ちゃん、彼女の周囲に結界バリアを張ったよ。これで飛び降りても無事よ」


「まだ結構な距離が離れているのに届くだなんて、さすが由愛だな」

「褒めるのは、そうね、ご褒美に寝る前にハグしてね」

「分かった」

「約束よ」


「よし、マイナスの付与魔法が届いたぞ」

「彼女がヘナヘナして屋上の柵から離れたわ」

「おう、今は柵を登る力もないだろう。後は少し彼女と話をするか」

「はい」


 マンションの屋上まで行って、座り込んでいた女子生徒の話を聞いた。

 何があったのか。


 どうやらイジメに遭っていたらしい。

 制服からするとうちの高校だ。名前と共に学年とクラスを聞いておく。


「イジメをしている連中と加担しているヤツらは叱っておくから、もう大丈夫。それに君が自殺したら俺は凄く悲しいぞ。だから死のうとする前に俺に相談してくれ。次からは、ちゃんと他人を信頼して変なことを決断する前に俺に頼れな」


 ありがとうございます、と俯きながら返事をした彼女。

 そこで、ヨシタカは彼女の肩に触れ、正面を向かせてハグをした。


「あ、あ……」


「しばらく君とこうしていたい。気持ちが落ち着くよ。力を抜いて」


「あ……(涙が零れ落ちる)」


「辛くなったら、いつでも俺の近くにおいで」

「お兄ちゃんのハグは世界最強だからね」


 そう、俺は性格は一見陰キャに見えるほど、普段は言葉足らずで誤解を与えてしまいがち。

 特に女子には顕著にそれが出る。言葉がイマイチな分、行動で示すタイプだ。


 俺は異世界の時には備わっていた固有スキルっぽいハグ技を、こういった微妙で緊迫した場面で言葉の代わりに役立てていた。


 今回もハグが彼女を慰め、生きていっても楽しいことがないわけじゃない、生きていても好いなと思えてくれれば嬉しい。その為に俺はこのハグ技を使用している。


 俺の代わりに由愛が彼女に話しかけている。いつでも私たちのグループに遊びに来てくれと誘っていた。


 元勇者のサトシをはじめ、元聖女のミズハやミキオ、とんでもないオマケに女神ハル様もいる。正体は直ぐに明かせないけど、強くて成績抜群の各クラスのリーダーたちが揃っているから、親しくしているだけでイジメっ子たちから護られるという事、庇護を受けながら時間をかけて一歩一歩、自分で歩けるように私達と共に進んで行こうよ、と。


 良いことを言うようになったじゃないか由愛。お兄ちゃんは誇りに思うぞ。


 こうして一件落着となった。


【夕方のニュース】


速報が入りました。本日、午後4時15分ごろ、〇県〇市のモリ高の校庭において突如火柱が立ち上り、周辺を炎が包みそうだと消防と警察に通報がありました。消防が駆け付けたところ既に火は治まっており、県警は生徒らが撮影した映像を回収、科学捜査研究所にて解析するとともに、化学室を管理している教諭に何らかの疑いがあると事情を聞いています。職員、生徒らに怪我はない模様です。続報が入り次第、お伝えしたいと思います。


では次のニュースです。


〇県〇市モリ高の女子生徒が〇〇駅前マンションの屋上から飛び降りようとしたところ、同校の男子生徒により救われました。女子生徒は仕草を交え「ハグが……ハグに救われました……」と意味不明な言動を繰り返しており、警察が確認を急いでいます。救助した二名の生徒らには追って人命救助の感謝状を贈る予定とのことです。


・・・・・


 化学の先生、見事なトバッチリ。由愛はペロッと舌を出して『テヘッ、私のバカバカ』と可愛い子ぶって誤魔化していた。お兄ちゃんとして妹を誇りに思っていたのは勘違いだった模様。


「大きすぎる力は自分の身をも滅ぼしかねないからな、気をつけろよ由愛」

「ごめんなさい……いつも我儘ばかりのダメな妹で、ごめんなさい。お兄ちゃん」


 その後、自殺()()を起こした彼女がヨシタカの非公式ファンクラブの一員になったのは言うまでもない。


 肝心のヨシタカは自分のファンクラブがあることはミキオや朱莉から聞いていたが、無意識に救った生徒たちが結成していたとは思ってもみなかった。


 そして時々、夏美のように玄関先で待っていてハグをねだられるのである。


 ある日、ヨシタカが下駄箱から玄関を通って外へ出ようとした時……


「あ、あの時、助けて頂いて、あ、ありがとうございました」

「君はあの時の……」

「はい」と丁寧にお辞儀をする。

「今はもう大丈夫かい?」

「はい」


「……(どう声を掛けたらいいものか)」


「わたし、あの時のハグを一生忘れません。心から救われた気がしました。そして……、西之原(ヨシタカ)先輩の事を……お慕い申し上げて……、いえ、何でもありません。あ、あの、……失礼しますっ!!!」


 彼女はヨシタカに対する想いを告げられず、ぴゅーっと走り去って行った。


 何となく彼女が元気になったような印象を受けた。

 よく、もっとこうすれば良かったとか、ああすれば失敗しなかったんじゃ……などと後悔がとめどなく溢れてくる青春真っただ中の年齢だが、俺はなるべく後悔する前段階で解決できるようにしたい。


 彼女の走って行く後姿を目で追いながら、ふっと微笑む。間に合ったんだよな。

 あの子が恋をしたいと思えるようになったのなら本当に良かった。


・・・・・


「お兄ちゃん、いいことしたね」

「そうだな」


「私の魔法も人の役に立つようにしたいな」

「由愛の魔法で職員室や校舎を吹き飛ばすのは止めてくれな」


「でも『君が死んだら俺が悲しむから死ぬな……』だなんて、もう……お兄ちゃんの女たらし」


「それはな、自殺しそうな人に対しての模範解答なんだよ」

「そうなの?」


「今にも飛び降りそうになってる人に、原因は何だ、気持ちは分かる、飛び降りるな、と言っても通じない。『私の気持ちなんて分かる筈ないでしょ』がオチだ。一番有効だと言われているのは、その人が死んだら自分が悲しいから止めろと感情で訴えるんだよ」


「へぇ、さすが私のお兄ちゃん。家に帰ったら()()ハグしてね」

()()ハグな」

「ケチ」



【Fin】謎の固有スキル:ハグの秘密

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