第17話.孫バカ大王と暗闇の剣 〜衝撃の事実、母サラは生きている〜
「……ふむ。案の定、完膚なきまでに叩きのめされたようですね」
静まり返った『罵倒パブ』の店内に、ホログラムで現れたルーンの法王の声が響いた。
意識を取り戻したサーヤは、ズキズキ痛む頭を押さえながら忌々しげに顔を上げた。
「法王……。見てたなら助けなさいよ。あいつ、なんなのよ。時間結晶の中でも動くなんて、反則じゃない」
「無理もありません。あの**『狂犬』**――かつての帝国近衛隊長にして貴女の父君に、今の貴女方が勝つにはまだ早い。彼は愛する者を失い、物理法則の枠外に棲む怪物と化したのですから」
法王は静かに告げた。
「今すぐ四次元大王の城へ向かいなさい。あやつ――狂犬を止めるための『力』を授けるよう、私から手配しておきました」
「え、ちょっと待って! 開店したばかりの店を放り出していけないわよ!」
商売魂を見せるサーヤだったが、法王は取り合わない。店はキャリーを臨時店長、トウマを掃除係に任命し、強引に引き継がせた。
アカネとサーヤ、そして「大王に確認せねばならぬ記録がある」と真剣な表情に戻ったアオイの三人は、法王の先導で城へと向かった。
四次元の王都、ビッグテラの中心に聳える巨大な城。
一行が近づくと、突然、夜空に無数の極彩色な花火が打ち上がった。
さらに、夜空を埋め尽くすドット絵の光。
『サーヤちゃん、いらっしゃい。 by おじいちゃん』
「…………死にたい。アタシ、今すぐブラウザ閉じて消え去りたい」
赤面してうなだれるサーヤの横で、法王が苦笑した。
「申し訳ございません。大王様には『孫に会えて嬉しいのは分かりますが、やり過ぎると嫌われますよ』と、何度もお伝えしたのですがね……」
城門では、正装した大臣一行が跪いて出迎えていた。
「おお……サラ様の生き写しじゃ……!」
「懐かしきお姿。これでお姿さえあれば、大王様もきっと……」
老人たちは涙を浮かべ、サーヤを『お姫様』として王の間へと案内した。
王座に鎮座していたのは、威厳と気品を湛えた老人、四次元大王だった。
だが、サーヤの顔を見るなり、その目から涙が溢れ出した。
「サーヤぁぁ! よく来たねぇ! おじいちゃん、君が来るのを首を長くして待ってたんだよ!」
孫パワーに圧倒される大王。法王が一歩前に進み出る。
「大王。サーヤ様は『狂犬』を捕まえに来られました。けじめを付けさせるおつもりです」
「……狂犬、か。あいつ――私の義理の息子には、悪いことをしたと思っている」
大王は遠い目をして語り始めた。
かつて大王の名代として帝国へ向かった王女サラ。
その護衛を務めたのが、帝国の近衛隊長『狂犬』だった。二人は愛し合い、サーヤが生まれた。
だが、内乱に揺れる四次元は大王軍を動かせず、帝国側の陰謀から二人を救い出せなかった。
結果、サラは亡くなり、狂犬は「なぜ娘を助けに来なかったのか」と絶望し、今も街で暴れ続けているのだ。
「あいつの言い分も一理ある。ゆえに放置してきたが……。サーヤ、お前にこれを授けよう」
大王が差し出したのは、漆黒の鞘に収まった一本の太刀だった。
「――『暗闇の草薙刀』。銀河の中心にあるブラックホールエネルギーと連動する。これならば、狂犬の時間を無視した動きすらも飲み込み、無に帰す。……あいつを止められるのは、サラの血を引くお前だけだ」
「重いわね。……宇宙の重さがするわ」
サーヤがその剣を手に取ったとき、アオイが静かに大王の前に進み出た。
「大王様。元・帝国管理OSとして、私が今日ここへ来たのは、称賛をいただくためではありません」
アオイは王の間全体を遮断結界で覆い、全銀河の歴史から抹消された禁忌を告げた。
「帝国が6500年もの間、隠蔽し続けてきた記録……。大王様の愛娘、そしてサーヤ様の母であるサラ様は、あの日、亡くなってなどいません」
「……何だと?」
大王の眼光が鋭く光る。
アオイがもたらした1つの情報が、銀河の歴史を大きく変えたのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
いよいよ物語は核心の場面に入ってきました。
失われたかと思っていた命の火が再び灯り始めました。
果たして、銀河最大の親子喧嘩の結果はどうなるのでしょう?
次回もお楽しみに!
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