第15話(後編).神をワンパンした海賊、パブ「男友達」で禁断の扉を開く
やがて一行を乗せた惑星間列車は、四次元大王の本星『ビッグテラ』へと滑り込んだ。
だが、駅に降り立った一行を待ち受けていたのは、かつての知性と教養に溢れた上品な街並みではなかった。
「四次元キャバ王……」
「真夜中の金ピカ男……」
「コスプレ・ハイエナ親父……」
街の至る所から聞こえてくる、狂犬に対する最低最悪の通り名。
かつて静寂を湛えていた広場には、狂犬ことサーヤの親父が経営するキャバクラの巨大なホログラムネオンが鎮座し、けばけばしい光を放っている。
「いかがわしい男に、軽薄なナンパ男、派手なイケメン……。あのハイエナがやってきてから、この国は欲望の掃き溜めね」
サーヤが苦虫を噛み潰したような顔で呟く。
一行は潜入工作のため、ひとまず旅館へと入った。
探索を開始するにあたり、サーヤは子供とバレるのを防ぐため、魔力でマリア(聖女)の姿をコピペして街へと繰り出した。
「ねーねー、キミたちぃ、どこから来たのぉ〜?」
案の定、一歩外に出た瞬間、軽薄な男たちが鼻の下を伸ばして声をかけてくる。
「え? 地獄よ。一緒に行きたい?」
マリアの上品な顔で、極悪非道なニヒル笑いを浮かべるサーヤ。
……潜入としては、完全に失敗であった。
「……ダメだわ。あの親父を探すなら、いかがわしい店。つまり、供は男じゃないと」
そこでサーヤは、ロク、トウマを引き連れ、自分は「この世で一番下品な男」である博士の姿をコピペして、再び夜の街へと出直した。
「よっしゃー、いくぞーー!」
博士の姿になった瞬間、なぜかロク爺のテンションが爆上がりした。
まず入ったのは、パブ『保健室』。
店員が白衣を纏い、患者(客)の相手をするという奇妙なコンセプトの店だ。
「何が面白いのよ、これ……」
サーヤが呆れる横で、トウマとロクは鼻の下を伸ばして「保険の先生」と話し込んでいる。
博士姿のサーヤが、店員に声をかけた。
「ねえ、ここのオーナーは誰だい? とても面白いお店だよねぇ」
その瞬間、店員たちの顔から一気に血の気が引いた。
「お、お客様……本日はありがとうございましたッ! この時間を持ちまして、急遽『閉店』とさせていただきますッ!!」
追い出された一行。
「なんだなんだ? オーナーの名前を聞いただけで閉店だと? 何かあるわね」
次に入ったのは、隣のビルにある『クレーマー・パフ』。
店に入った途端、クレーマー風のおばちゃんキャラになった女の子から烈火のごとく説教を食らうという、地獄のような店だった。
中年男たちはその罵倒にうっとりと聞き惚れている。
「無理無理無理! いつもと同じじゃん! 実家と同じじゃん!」
マルカおばさんに鍛えられているトウマが、トラウマを刺激されて一番に逃げ出した。
「まったく、情報を得られないじゃない。少しは我慢しなさい!」
博士姿のサーヤから説教を喰らいつつ、店を出てもトウマは半泣きでクレームの残響に震えていた。
最後に一行が足を踏み入れたのは、パブ『男友達』。
嫌な予感を感じつつ入ると、そこは店員が全員イケメンの男性。
客も男性が中心で、至る所で男同士が熱い友情(?)を囁き合っていた。
「やばい、出るわよ。アタシにはハードルが高過――」
逃げ出そうとしたサーヤの瞳が、店内の隅に固定された。
客と店員が甘い雰囲気を出しているテーブルのすぐ横で、瞳をランランと輝かせ、猛烈な勢いでメモを取る女性客の姿を。
「……アオイ」
「……あ、師匠。見てください。このA個体(攻め)とB個体(受け)の視線の交差角、そして発せられるフェロモンの相転移。……尊いです。全銀河のデータを持ってしても、この『萌え』は演算不可能です」
「アンタ……! 漫画の世界を教えたのはアタシだけど、いつの間に禁断の扉を開いたのよ!」
サーヤは頭を抱えた。
銀河の覇者たる管理OSを、自分はとんでもない方向へ導いてしまった。
そしてその元凶は、間違いなくこの街をエロと欲で支配した「ハイエナ親父」にある。
「絶対に許さないわよ、親父……!」
サーヤの怒りの炎が、夜のキャバクラ街のネオンよりも赤々と燃え上がった。
最後まで、読んでいただきありがとうございます。
まさかのアオイさん、大暴走。
来たる狂犬との決戦は大丈夫なのか?、ぜひ【☆☆☆☆☆】で応援を!




