第7話.疾風の権能を奪う聖剣と、流水の深淵に消ゆ
「――私はザックのようにはいかないわよ」
四天王が一人、風のフォーンが疾風の剣を抜いた。
四次元の高度な物理干渉を可能にするその剣は、
一振りの威力こそ土のザックに劣る。
だが、その真髄は圧倒的な手数にあった。
ザックが一撃を放つ間に、フォーンは百の突きを打ち出せる。
「……ッ、速すぎる!」
トウマの視界が、風の軌跡で埋め尽くされる。
防戦一方。トウマの剣が触れるたびに【天下無双】が発動し、
フォーンの技能を強奪していくが、奪い取る端から新しい突きが飛んでくる。
「なんなの、こいつは……!
私の剣を、ことごとく撃ち返してくる……!?」
フォーンの顔に焦りが浮かぶ。
剣技で埒が明かないと悟った彼女は、一気に間合いを取ると、四次元の極大魔法を展開した。
「四次元極大魔法――『ウィンドディザースト』!!」
巨大な竜巻が発生し、その中に無数の風の刃が狂ったように踊る。
剣と魔法を連携させた、彼女の究極攻撃だ。
トウマの身体が宙に浮き、無数の刃に切り刻まれる。
「あはは! ズタズタになりなさい!」
勝利を確信したフォーンが、
トドメの一撃を放とうと同じ魔法を再構築した、その時。
「……同じ技なら、もう見切った」
血だらけのトウマが、不敵に笑って擬似エクスカリバーを掲げた。
その周囲に、フォーンが放ったものより一回り大きな、黄金の竜巻が巻き起こる。
「『擬似聖剣・風塵一閃』!!」
トウマのオリジナル。
竜巻の中に、エクスカリバーの構成要素である超硬質金属
「アダマンタイト」の刃を無数に混入させた、純粋な殺戮の嵐。
フォーンの魔法はトウマの光に飲み込まれ、
彼女の身体は一瞬にして霧散。
四次元の精鋭は、自らの得意技を昇華させた技の前に消え去った。
「……とんでもない奴だ」
一部始終を見ていた水のジャンは、戦慄していた。
フォーンが、あんな名もなき少年に、あんな短時間で敗れるなど。
そして何より、目の前に立つメイド――
アカネから放たれる、『アオイ』と同じエーテル質量。
(勝てない……。逃げるタイミングを……!)
ジャンが撤退を画策した瞬間、周囲に青い光の壁が立ち上がった。
アカネが張った四次元結界だ。
「あら、どこへ行くのですか?」
「ア、アオイ……いや、アカネと言ったか。
貴様に勝てないのは分かっている。だが……」
「ふふ、そんなに怯えないでください。意外な提案をしましょう」
アカネが、不気味なほど綺麗な笑みを浮かべる。
「あそこに転がっているトウマ様を打ち破ったら、逃がしてあげましょうか?」
「……何?」
ジャンの目が鋭くなる。
ボロボロで、やっとの思いで立っているトウマ。
「アカネさん、それ……なんのイジメですか!?
今度こそ絶対に僕、死んじゃうよ!」
「死線を越えれば人は強くなります。
トウマ様、死ぬ気で(というか一度死んで)頑張ってくださいね」
アカネは冷酷な笑みを浮かべ、スッと下がった。
「その言葉に、二言はないな?」
ジャンが襲いかかる。彼の剣は**『流水剣』**。
トウマが剣で受けても、ジャンの剣は水のように形を変えて受け流し、
トウマのガードをすり抜けてその喉元を狙う。
「な、なんだこの剣……! 硬くないのか!?」
「流水は形を持たず、あらゆる隙間に滑り込む。
経験の差を教えてやるよ、小僧!」
トウマは奪ったザックの土壁を作り、
フォーンの風で竜巻を起こして水を吸い取ろうとする。
だが、ジャンは鼻で笑った。
「小手先なんだよ!」
ジャンが放ったのは、戦場を飲み込む津波のごとき大洪水。
土の壁は押し流され、風の渦は水の質量に押し潰される。
トウマが剣で対抗しようとした瞬間、水流剣が蛇のようにしなり、
トウマの脇腹を深く抉り取った。
「……あ、がっ……」
トウマの身体が、ゆっくりと地面に倒れ伏す。
「これで俺の勝ちだ。いいな? 約束通り、逃げさせてもらうぜ」
「ええ、どうぞご自由に。追いかけませんので」
アカネは倒れたトウマを見つめながら、不気味にニコリと微笑んだ。
ジャンはその笑みに背筋を凍らせながら、一目散に戦場を離脱していった。
「さぁさぁ! 今しか買えない限定カードだよ!
高いが安い、他じゃ手に入らない公式グッズだよ!」
劇場の控え室。 サーヤの威勢のいい声が響いている。
「サーヤ様、ただいま戻りました」
「あらアカネ。トウマは生きてる?」
「はい。一度心臓が止まりかけましたが、
蘇生して治癒魔法を施したので、明日の昼には起き上がれます」
「ふーん、予定通りね」
サーヤは札束(金貨の山)を数えながら、満足げに頷いた。
そこへ、一人の屈強な男――「大きなお友達(マリア推し)」が駆け寄ってくる。
「なぁ、姉ちゃん! バビロニアで買えなかった
『マリちゃんの体操着ブルマシリーズ』がどうしても欲しいんだ!」
「お気持ちは分かりますが、カードの乱発はブランド価値を下げますからね。
……そこで! 次回はマリの『リアルフィギュアシリーズ』を販売予定よ!」
「う、うぉおおおおおおお!! フィギュアが出るのか!!
毎日一緒に寝るよ、俺!!」
狂喜乱舞するファンたちの歓声を聞きながら、サーヤは不敵に笑う。
「まだまだ儲かるわね……。
乙女向けのアルシリーズも好調だし、
セシリア、それにキャリーやユーリも使えそうね……」
「……お嬢、俺のレフ板持ちの次は、フィギュアの原型師ですか?」
ソウザが遠い目をしながら呟く。
「うふふふ! この世界線、意外とお金になるわね!」
戦場に歌声が響き、舞台の裏では次の「限定商品」の構想が練られる。
四次元海賊によるカオスな反撃は、さらに加速していく。
第7話、お読みいただきありがとうございました!
激闘、そして挫折! トウマはフォーンを撃破したものの、
ジャンの圧倒的な「水(経験)」の前に敗北してしまいました。
……まあ、それを仕組んだのは他ならぬ味方のドSメイド・アカネ様なのですが。
逃げたジャンが持ち帰った報告により、いよいよ最強の四天王メラードが動き出します。 次回、カオスは最高潮へ!
「マリちゃんのフィギュア、俺も欲しい!」と思った方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】で評価をお願いします!




