第19話.さらばルーン、銀河の果ての密航者たち
ルーン魔法聖学園・品評会の夜。
アタシ達のブースは、学園長から「品位を落とす」最低評価をつけられたが、
売上は断トツの1位だった。
打ち上げ会場で、
アタシは留学生の2人とクラスメイトに別れの挨拶をおこなった。
「アタシ、実家の都合で家に帰らなければならなくなったの」
「サーヤ、いつ頃返ってくるの?」
「分からない、帰るかもしれないし、帰れないかもしれない」
「そんなの嫌、せっかくお友達になれたのに」
マリが号泣する。セシリアも寂しそうだ。
ずっとこちらをなめるように見つめている。
「そのような話、わたくしにも事前に相談くださいませ。
皆さんは聖王国の騎士になっていただきたいと考えていますのに」
誰が呼んだのか、マリアまでアタシ達のテーブルに来た。
「おい、どうする?二代目、友達から激詰めされてるぜ」
「さすがに皇女まで来られて、こりゃヤバそうだな」
「でも、二代目、うれしそう」
「そうだな、これまで二代目って友達いなかったからな」
「ちぇ、ボクだって友達なのに」
「私達は家族だから」
キャリーの言葉にエリカとユーリが大きくうなづく。
◇ ◇ ◇
「やっとおさらばね、聖王国。いい商売をさせてもらったわ!」
ルーンから地球への定期便。アタシはアカネと客室に入った。
エリカとユーリ、キャリーも同じ船にいるはずだ。
「……で、なんでこうなるわけ?」
部屋に入ると、さっき分かれたはずのマリ、セシリア、アルの3人がいた。
「だって、サーヤのおうち見て見たかったんだもん」
「伊集院さんが、行くって言うから」
「セシリアさんたちが心配なので」
すまなそうにしながらも、ニコニコしている3人。
こんな子たちを、これ以上は怒鳴ることなんかできない。
そういいながら結局、3人は月までついてきた。
◇ ◇ ◇
「ここがサーヤのおうち?
まさか地球の月に住んでいるとは思わなかった」
地球で船を乗り換えて、月まで帰ってきたが、
例の3人組は、まだついてきている。
「ここはアタシん家じゃなくて、船を修理するドッグよ。
アタシの船を修理していたの」
目の前に横たわる巨大な海賊船。
何砲もレーザー砲が搭載され、海賊船特有の白兵戦用の
小型ホバーが5台装着されている。
「こんな船見たことありませんわ。
ルーンやプレアデスでも、こんな船はないはず。
シェンカーさん、あなた一体何者なの?」
「そろそろお話ししても良いのではないでしょうか?」
アカネが全員のお茶とお菓子を運びながら、
私に視線を向けた。
「そうね。アタシは6500年未来から来た四次元海賊なの」
アタシの言葉に、一瞬だけ船内の計器が共鳴した。
キャリーとエリカは懐かしい四次元宇宙がホログラムのように浮かんだ。
「あははは、なにそれ?
タイムマシンにでも乗ってきたって言うの?」
この時代はまだ、四次元航法が発見されていない。
過去や未来にいけるなんて、SF映画の世界だけのものだった。
「サーヤ様、さすがです、ここで未来の海賊とは。
本当のお話をした方がよろしいですよ」
アカネが肩をすぼめながら、意味ありげな視線を送って来る。
「冗談よ、アタシ達はプレアデスから来たの。
だから船を見ても、帝国や地球人じゃ分からないわよね」
「やっぱりね、サーヤって常識外れなところがあるから、
おかしいって思ってたのよ」
マリがセシリアと向き合ってニコリとした。
「彼はこの船のエンジニア、ロク爺」
「そこにいる子は、ルーンで図書委員をしていたから
見たことがあるわよね、キャリー」
「そして、この子も知ってるわね。ユーリ」
「そこで、操縦席にいるのが、エリカよ」
「じゃあ、『プレアデス』に戻る前に寄ってくところがあるわよ」
月の反対側にある、トウマの家に寄る。
アタシ達がルーンにいる間、毎日シンに鍛えられて
ボロボロになったトウマがいた。
「ま、待ってたよー。僕と連れ出してくれるのー
助かるーーー。」
「イワサキ博士からも通信で聞いています。
それにサーヤ様が言うのであれば、仕方ありません」
「ところで、トウマ、少しは強くなったの?」
「まだまだ、貴方様の足元も及びません。
ただし、四次元の重力に耐えうる肉体と、星を斬る筋は教え込みました」
シンが意味ありげにニヤリとした。
◇ ◇ ◇
「それじゃ、家に戻ろうか!
修理完了!ウルティマウェポン保管庫の整理もバッチリ!
マンガのパッキングも完璧!」
月のドックに横たわる漆黒の海賊船。
その甲板で、サーヤが勝ち誇ったように叫んだ。
「お待ちください、サーヤ様!
ルーン国籍の船が近づいてきます」
ルーン王家の紋章が入った豪華な船から飛び出してきたのは、
マリア皇女だった。
「……マリア? お別れの挨拶なら、ルーンで済ませたはずよ」
「いいえ。私は決めたのです。世界を統べるのではなく、
世界を『略奪』する貴女の目に映る景色が見たいのです!
というわけで、連れて行ってください!」
「はぁぁぁ!? あんた、一国の皇女でしょ!?」
「定員オーバーだよ……」
船内から顔を出したキャリーが、げっそりとした顔で呟く。
「エリカ、これ沈まない?食糧庫、今の三倍は必要なんだけど」
「アタイに言うなよ。……ま、賑やかなのは嫌いじゃないがね」
エリカが苦笑いしながら、強引に乗り込んできた面々を船内へ押し込んでいく。
かくして、当初の5人から、マリア、トウマ、マリ、セシリア、
アルを加えた「10人体制」となったシェンカー海賊団。
「……サーヤ様。準備は整いました。
法王から提供された座標に基づき、四次元ゲートを開放します。
……ただし、戻った先が『以前のまま』である保証はありませんが」
「細かいことはいいの。とにかく行くわよ!
それから、アタシの船に乗り込んだからには、タダ働きはさせないわよ!
全員、持ち場につきなさい!」
サーヤがドクロの旗を指差す。
新人の5人は、それぞれ新しく作られた席に座って
初めての航海に胸をときめかしている。
「さあ、懐かしのわが家へ!親父から金をむしり取って、
アタシが銀河の主役になるのよ! 全速前進――!!」
光の渦に消えていく海賊船。
この時、サーヤの瞳には、かつて見た汚らしくも愛おしい
「無法の銀河」が映っていた。
ゲートの向こう側に、冷徹な機械知性「アオイ」の支配する、
白銀の絶望が広がっているとは知らずに。
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