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第14話.聖域の狂騒と、忍び寄る鉄の風

「かわいいーー!」

「あのメイドのブースあるらしいぜ」

「絶対に推し、俺の嫁キターーーーーー!」


 1年に1度のルーン聖魔法学園・品評会。

例年、多くの客が訪れるが、今年は過去1番の盛り上がりを見せていた。


 特に主展示場に現れた2人のメイド。

ちびっ子で可愛い、しかもミニスカのメイド姿に

訪問者たちの心は見事に撃ち抜かれた。


 1人は、おしとやかなお嬢様。

もう1人は、見るからにワガママ小悪魔。

このコントラストのおかげで、大きなお友達から、

老人、可愛い者好きの女学生まで、人だかりの山を作っていた。


(ふっふっふ、ちょろい。ちょろいわ、ルーンの民。

アタシの策で、今日は売って売って儲けまくるわよよ)


「(サーヤ、悪い顔が出てる。

ねぇ、いつまで私達ビラを配るの? 」


「(まだ、段ボール10箱あるの。

わがまま言わないで、最後まで従いなさい)」


 ブラック企業のバイト店員のような

うつろな目でマリはビラを配りまくるのであった。




 サーヤたち、ちびっ子メイドの活躍で、

お嬢様向け執事喫茶は盛況で待ち時間1時間の行列を作っていた。


「きゃーーーー!」

「きゃーーー、もうだめーーー」

「アルさまーーーーー」


「お嬢様がた、お帰りなさいませ」


アルが執事風に若い女性客を席に案内していく。



「もう1人の方も素敵、学園で見かけない顔ね」

「私、アル様より、あの方のファンになりそう」


 アルももう一人、髪を後ろで縛り中性的な雰囲気を

漂わせるもう一人の執事・セシリア。


 2人の縦横無尽な働きにより、カフェの売上は

うなぎ上りに上がり続けていた。


 その横では……。



「お嬢様メイド、なかなか出ないな」

「あーーー、また小悪魔かよーーー。もういいよ、うぜ」


「おれもう1回、やってみる」


「おおおっ、キターーーー!!!

お嬢様メイドの『体操服ブルマ』バージョン!」


 究極のSSSレアカード、マリが嫌がりながらも撮り続けた1枚だ。

他のカードと違い、光沢あふれる作りになっている。


サーヤが1000枚に1枚仕込んだ超レアで、

ルーンのオタク学生は、こぞって伝説のカードを狙うのだった。

そのレアカードが引き当てられ、開場は騒然となった。


<< うおおおおおおっーーーー!! >>



周りにひしめく100人以上いる男たちが歓声を上げた。


「俺も、出るまでやるぞーーー」

「いま、貯金おろしてきた、よし吾輩も参加するでござる」


(さすが我がご主人様、的確なマーケティング。

私の魔導計算をもってしても、このようにうまくいきません。

……これでは在庫が足りませんね)



「あっ、あなたは?!」


 アカネが見上げたその先にはスーツ姿のエリカが立っていた。

深紅の髪を後ろで束ね、目立たぬようにしているが、

そのスタイルの良さと美貌が周りの注目を集めている。


エリカは、アタッシュケースをアカネに差し出し、

悪い顔で、そっと耳打ちした。


「アカネ、これを使ってくれよ、

アタイが数100年間、執り続けてきた隠し撮り画像だ。

キャリーの画像も混ぜておいた。本当の意味でレアってやつだぜ、ひひひひ」



 その後、ゴミ箱に増え続けるアタシのブロマイド。

そしてマリのブルマカード同様にキャリー(キャサリン)の

ネグリジェブロマイドが、ネット上を賑わせることになる。


そのことをまだ、アタシもキャリーも知らない。



「何だか今年の品評会はにぎやかですね」


「マリア様、あれは、主展示場の方です。

なんでも、ちびっ子メイドが暴れているのだとか……」


「うふふふ、やっぱりそうなるわね」


「姫、何か嬉しそうですが」


「いえ、何でもございません。それでは少し私も会場を回って、

参加者たちをねぎらいましょう」



 マリアが品評会に来ていることは聖魔法学園の

学生たちは皆知っていた。

第一皇女に認められたら将来が約束される。


そのためマリアの行く先々では、学生たちによる

本気のデモンストレーションが行われていた。



「王女様、これはこれは、ようこそいらっしゃいました」


「学園長、今日はよろしくお願いします。

なんでも、可愛い生徒さんたちが張り切っているようですね」


「あぁ、お耳汚しをしまして申し訳ございません。

あれは地球からの留学生でして、常識が違うせいか

対応に困っております」


「わかりますわ。私もあちらにいた時には苦労致しました。

どうか、大きな目でご覧になってくださいな」


「ははーーっ」



「あら、あれは何?

 ゴミ箱に何枚もカードが捨てられているようですが」


 その1枚を拾い上げて、王女に似合わぬ声で大笑いするマリア。

供の者が、びくっとしてマリアを見つめる。


「あら、私としたことが……しかし、相変わらず

アタマのネジが3つぐらい飛んでますね」



「王女が立ち止まりました。まだこちらには気が付いていません」


 人混みに紛れた、感情を排した声。  

華やかな品評会の喧騒は、彼らにとっては標的を屠るための

雑音ノイズ」に過ぎない。



「少し警戒が手薄だが、今ならいける……いや、止まれ。

前方に二名、後方にも二名の護衛。……ターゲットの動線、確保に時間がかかる」


「了解、まだ少し泳がせよう、必ず隙ができるはずだ」


 マリアが再び歩き出し、サーヤたちのブースへと近づいていく。  

欲望が渦巻く学園祭の裏側で、研ぎ澄まされた刃が、静かに鞘の中で鳴った。

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