第14話.聖域の狂騒と、忍び寄る鉄の風
「かわいいーー!」
「あのメイドのブースあるらしいぜ」
「絶対に推し、俺の嫁キターーーーーー!」
1年に1度のルーン聖魔法学園・品評会。
例年、多くの客が訪れるが、今年は過去1番の盛り上がりを見せていた。
特に主展示場に現れた2人のメイド。
ちびっ子で可愛い、しかもミニスカのメイド姿に
訪問者たちの心は見事に撃ち抜かれた。
1人は、おしとやかなお嬢様。
もう1人は、見るからにワガママ小悪魔。
このコントラストのおかげで、大きなお友達から、
老人、可愛い者好きの女学生まで、人だかりの山を作っていた。
(ふっふっふ、ちょろい。ちょろいわ、ルーンの民。
アタシの策で、今日は売って売って儲けまくるわよよ)
「(サーヤ、悪い顔が出てる。
ねぇ、いつまで私達ビラを配るの? 」
「(まだ、段ボール10箱あるの。
わがまま言わないで、最後まで従いなさい)」
ブラック企業のバイト店員のような
うつろな目でマリはビラを配りまくるのであった。
◇
サーヤたち、ちびっ子メイドの活躍で、
お嬢様向け執事喫茶は盛況で待ち時間1時間の行列を作っていた。
「きゃーーーー!」
「きゃーーー、もうだめーーー」
「アルさまーーーーー」
「お嬢様がた、お帰りなさいませ」
アルが執事風に若い女性客を席に案内していく。
「もう1人の方も素敵、学園で見かけない顔ね」
「私、アル様より、あの方のファンになりそう」
アルももう一人、髪を後ろで縛り中性的な雰囲気を
漂わせるもう一人の執事・セシリア。
2人の縦横無尽な働きにより、カフェの売上は
うなぎ上りに上がり続けていた。
その横では……。
「お嬢様メイド、なかなか出ないな」
「あーーー、また小悪魔かよーーー。もういいよ、うぜ」
「おれもう1回、やってみる」
「おおおっ、キターーーー!!!
お嬢様メイドの『体操服ブルマ』バージョン!」
究極のSSSレアカード、マリが嫌がりながらも撮り続けた1枚だ。
他のカードと違い、光沢あふれる作りになっている。
サーヤが1000枚に1枚仕込んだ超レアで、
ルーンのオタク学生は、こぞって伝説のカードを狙うのだった。
そのレアカードが引き当てられ、開場は騒然となった。
<< うおおおおおおっーーーー!! >>
周りにひしめく100人以上いる男たちが歓声を上げた。
「俺も、出るまでやるぞーーー」
「いま、貯金おろしてきた、よし吾輩も参加するでござる」
(さすが我がご主人様、的確なマーケティング。
私の魔導計算をもってしても、このようにうまくいきません。
……これでは在庫が足りませんね)
「あっ、あなたは?!」
アカネが見上げたその先にはスーツ姿のエリカが立っていた。
深紅の髪を後ろで束ね、目立たぬようにしているが、
そのスタイルの良さと美貌が周りの注目を集めている。
エリカは、アタッシュケースをアカネに差し出し、
悪い顔で、そっと耳打ちした。
「アカネ、これを使ってくれよ、
アタイが数100年間、執り続けてきた隠し撮り画像だ。
キャリーの画像も混ぜておいた。本当の意味でレアってやつだぜ、ひひひひ」
その後、ゴミ箱に増え続けるアタシのブロマイド。
そしてマリのブルマカード同様にキャリー(キャサリン)の
ネグリジェブロマイドが、ネット上を賑わせることになる。
そのことをまだ、アタシもキャリーも知らない。
◇
「何だか今年の品評会はにぎやかですね」
「マリア様、あれは、主展示場の方です。
なんでも、ちびっ子メイドが暴れているのだとか……」
「うふふふ、やっぱりそうなるわね」
「姫、何か嬉しそうですが」
「いえ、何でもございません。それでは少し私も会場を回って、
参加者たちをねぎらいましょう」
マリアが品評会に来ていることは聖魔法学園の
学生たちは皆知っていた。
第一皇女に認められたら将来が約束される。
そのためマリアの行く先々では、学生たちによる
本気のデモンストレーションが行われていた。
「王女様、これはこれは、ようこそいらっしゃいました」
「学園長、今日はよろしくお願いします。
なんでも、可愛い生徒さんたちが張り切っているようですね」
「あぁ、お耳汚しをしまして申し訳ございません。
あれは地球からの留学生でして、常識が違うせいか
対応に困っております」
「わかりますわ。私もあちらにいた時には苦労致しました。
どうか、大きな目でご覧になってくださいな」
「ははーーっ」
◇
「あら、あれは何?
ゴミ箱に何枚もカードが捨てられているようですが」
その1枚を拾い上げて、王女に似合わぬ声で大笑いするマリア。
供の者が、びくっとしてマリアを見つめる。
「あら、私としたことが……しかし、相変わらず
アタマのネジが3つぐらい飛んでますね」
「王女が立ち止まりました。まだこちらには気が付いていません」
人混みに紛れた、感情を排した声。
華やかな品評会の喧騒は、彼らにとっては標的を屠るための
「雑音」に過ぎない。
「少し警戒が手薄だが、今ならいける……いや、止まれ。
前方に二名、後方にも二名の護衛。……ターゲットの動線、確保に時間がかかる」
「了解、まだ少し泳がせよう、必ず隙ができるはずだ」
マリアが再び歩き出し、サーヤたちのブースへと近づいていく。
欲望が渦巻く学園祭の裏側で、研ぎ澄まされた刃が、静かに鞘の中で鳴った。
コメントや評価、レビューよろしくお願いします。




