第13話.聖都品評会――海賊たちの潜入と略奪(ビジネス)
「本日は、聖王国の第一皇女・マリア様がお成りになります! 」
大鐘楼の響きと共に、厳かな旋律が聖堂を揺らし、天からは清浄な花びらが降り注いだ。
ルーン聖王国の至宝、そして聖魔法学園理事――マリアが姿を現すと、
会場の空気は一変し、張り詰めた緊張感が彼女の気品をより一層際立たせる。
聖魔法学園・品評会。
それは、王族や正教会の重鎮のみならず、
優秀な「駒」を狙う軍部や冒険者ギルド、そしてあわよくば
富を掠め取らんとする商人が蠢く、欲望の闘技場でもあった。
「マリア様、本日は法王こそ不在なれど、教皇マクベスが列席しております。
どうかご警戒を」
「望むところです。私を地球に送り込んだ張本人ですからね。
今日もネチネチと攻めてくることでしょう」
第一皇女であるマリアが地球の魔法科学園へ留学したのは、
2つ理由があった。
1つ目は、聖王国内で巻き起こる『国王派 VS 法王派』の渦中に
巻き込まれないため。
もう1つは、法王派によりルーンの英知であるマリアを本国から
遠ざけるためでもあった。
◇
一方、正教会の貴賓席。
マクベス教皇は、傍らに控える「新顔」の少女に目を細めた。
「その者は、見ない顔ですね」
「はい、先日、帝国の正教会支部から参ったものです。
とても淑やかな顔立ちをしておりますが、ホーリーナイト、
しかも聖騎士団長のダンを瞬殺する腕前でございます」
「な、なんと。その歳でか?まだ15,6歳であろう。
本当に聖騎士武闘会で何度も優勝したあのダンが負けたのか?」
「はい。瞬殺だったと聞いております」
「名は何というのじゃ?」
「キャサリンと申します」
「良い名ですね。あなたに神のご加護があることをお祈りしています」
「ありがたき幸せ」
そういうと少女はグリグリメガネを、くいっと持ち上げた。
「今日の品評会は二重、三重の罠を設けました。
王族の名を地に落とし、あわよくばマリア様のお命も……」
「これ、はしたない。我々は神にお仕えする身です。
せめて、主の元へお導きさせていただくと言いなさい」
「はっ、それでは早速準備にかかります」
◇
品評会の会場は、主会場と副会場に分かれている。
主会場では、大聖堂のスペースをいくつも区切り、
小さなブースに発表をする者たちが出展している。
ある者は聖魔法科学の研究発表を、
ある者はポーションなど薬品の発表を、
またある者は聖魔法を芸術として発表していた。
アタシ達、留学生トリオのブースは、芸術エリアに出展。
入口から近い所をうまく確保できた。
「ねぇ、本当にこの格好でビラを配るの?
ちょっとスカートが短くない?」
「いいのよ、これが『デフォ』なの。
羞恥心を捨てなさい、マリ。それが金貨に変わるんだから!」
そういうと、アタシもマリとおそろいのメイド服に着替えた。
「ムフフ、本当にルーンに来た甲斐があったわ。
伊集院さん、シェンカーさんと一緒に画像を取らせて下さい」
「だめです!うちのタレントの撮影は禁止です。
画像が欲しいなら、是非、お買い求めください」
「関係者もダメなの?ねぇシェンカーさん、
このメイド、いやマネージャーさん厳しすぎない?」
「いいわね。アカネ、アンタその役が似合ってるわね」
「ありがとうございます。サーヤ様。本日はお二人を、
ルーンで最も高価な『お宝』として売り込んでみせます」
アカネが、今日はスイッチが入ったようにやる気に満ち溢れている。
マネージャーというよりもプロデューサーだ。
◇
副会場のセレモニーが終わったようだ。
ここから主会場にどっと客が流れ込んでくる。
どのブースも臨戦態勢になり、開場の時間を待った。
「それでは、今日の作戦を確認するわよ。
まず、アタシとマリは、入口でビラ配り」
「分かったわ。恥ずかしいけど頑張る」
(可愛い、そのけなげな姿がファンを生み出すのよ)
「セシリアとアルは、執事としてお茶の給仕ね!
聖魔法学園随一の美形コンビが給仕するカフェ……。
これこそがアタシの考える『愛の永久機関・無限課金システム』なんだから!」
「任せて、シェンカーさん!」
「やっぱりボクもやるのかい?」
「当り前じゃない。セシリアだってクラスのために
頑張っているのよ。アンタも頑張りなさいよ」
本当はセシリアは、クラスのためなんかじゃなくて、
マリとアタシのブロマイドを報酬でもらえるから
自分の欲望のために頑張っているのだ。
「アルくん、一緒に頑張りましょう」
「は、はい、リーズさん」
アルはセシリアに弱い。
セシリアさえ、支配できれば、このイケメンは使い放題よ。
プラチナクラスの他の女生徒も
このイケメンと働きたくて、自主的にカフェで働いてくれる。
これこそが、アタシの考える愛の永久機関、無限課金システム。
「それでは、皆さん……カウントダウンです!」
「「 3、2、1、開場でーーーす! 」」
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会場から一斉に拍手が鳴り響き、品評会の幕が開いた。
さぁ、ルーンのお金持ちたちよ、かかってらっしゃい。
アタシが四次元海賊の恐ろしさをみせてあげるわ。
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