第12話.王女の粛清、法王の罠、そして海賊の撮影会(ビジネス)
聖都ルーンの華やかな喧騒から遠く離れ、王宮の奥深く。
マリア王女は、冷たい銀のティーカップに映る自分の顔を見つめていた。
自由だった学園生活は遠い夢。今、彼女の目の前にあるのは、
血と欺瞞に塗れた政治闘争の盤面だ。
「マリア様、今晩はアダムズ公との会食、
明日の昼には貴族院の予算委員会への出席となっています」
「分かりました。それで法王は?」
「特に動きはございません」
執事のセバが、お茶を入れながらそっと手紙を差し出す。
「今週の金曜日ね」
「はい。今回は法王派の大臣が4名集まるようです。
先日のマヤ州のテロにも法王派が絡んでいるようです」
「わかりました。では、手筈通りに進めてください」
マリアがゆっくりとティーカップを口元へ運んだ。
「それと、水曜日の品評会には彼も連れていきます。
そのつもりで、お伝えしておいてくださいね」
「かしこまりました」
一礼をすると執事・セバはマリアの部屋を後にした。
「やっと、お会いできますね。この日を半年以上待っていました。
あなたのチカラ、ぜひとも我らのため借り受けなければなりません」
マリアの目に誓いの炎が燃えていた。
◇
一方、正教会の暗部。
法王は礼拝室の影で、誰にともなく報告を捧げていた。
「法王様、今年の品評会は、あのマリア王女が参加するそうです。
これまで散々、我々の邪魔をしてきた聖王国の英知を
今度こそ葬り去ることができるでしょう」
「せっかく、聖王国から引き離して地球に放り込んだのだから、
そのまま、あちらにいた方が幸せだったものを。
わざわざ早死にするために帰ってくるとはな」
「ははははは」
「それと、地球から来ている例のメイドですが、いかがいたしましょう?」
「あのものにはアルを付けてあったはずじゃな」
「はい。そのアルですが
最近、不可解な行動が目立つようになりました。
効き目がうすくなってきたのではないでしょうか?」
「そうかもしれん、品評会が終わったら、
姉ともども、もう一度、精神干渉魔法コキュートスで
彼らの操り糸を強化にせねばならんな」
「あのメイドは危険じゃ。
ともかくアルの目と耳を使って、知りえる情報を取りまくれ。
そのためには、あの小娘にアルをもっと接触させるんじゃ」
実は先日、地球から銀河に向けて放送された1本のバトル動画が届いていた。
それには、あのドラゴンが1撃で粉砕されるという信じられないものだった。
ドラゴンを手玉に取った少女は『アカネ』という名だけ分かっている。
正教会はアカネを100年に一度の師団級カラミティとして認定して
監視対象とすることに決めた。
これはパーフェクトメイドにして、マザーシステムのアカネにとって
青天のへきれきと言えるミスだった。
アカネは、サーヤとソウザの戦闘は、強固に上書きし、完璧に秘匿した。
これは、サーヤの力は神がかっているので当然上書きをする、
しかし、「サーヤと比べて自分は小さい」その認識が、
自分に対する秘匿を甘くしてしまったのだ。
「品評会にはジュノー、あなたが参加してください。
地球から来た、あのものを取り込めるようならば、こちらに引き入れ
敵になるようであれば、その場で処分しなさい。後始末はこちらでしておきます」
「承知いたしました。法王様、今日ははどちらへ」
「今日は礼拝室で1日、祈りをささげています。
いつものように夕方出てきますので、後のことは任せます」
そういうと、法王は礼拝室へ向かった。
◇
そんな暗雲が立ち込めているとは露知らず。
留学生たちの寮は、別の意味で地獄の様相を呈していた
「ねぇ、サーヤ、今週の品評会の出し物決まった?」
「アタシたち留学生だし、2年生だから関係ないでしょ」
「いいえ、先生がいってたじゃない。
『今年は留学生も特別に出し物を考えておきなさい』って」
「知らない。アタシは、お金にならないことに力は使わない主義なの」
「もう、しょうがないわね。
セシリア、貴方はどうするの?」
「私はある研究発表をするつもりです」
「やっぱり委員長は違うわね。題材はなんなの?」
「『萌えと愛の相関関係』を、
量子力学の視点から捉えた研究を発表しますわ」
「アタシはどうしよう……?
そうか!お金持ちの貴族が集まるのなら、
アタシは例のおみくじを真似して研究発表するわ」
「なにそれ?なんか悪い予感がするけど」
◇
「サーヤ、私の画像を撮るのは良いけど、恥ずかしいことはしないでよね」
「わかってる、わかってるって。いいねーマリちゃん、
もう一度、視線をこっちにちょーだい」
< カシャ、カシャ >
「サーヤ様。ブルマの食い込み角度、光学的にも完璧でございます」
「いいねーマリちゃん! その猫耳を恥ずかしそうに触るポーズ、もう一枚!」
<カシャ、カシャッ!>
「……なぜボクまでバラを口にくわえて、撮られるんだい?」
アルの困惑を、サーヤは札束の計算機を弾くような笑顔で一蹴する。
「いいのよ、アル! あんたのその『無自覚な色気』とマリの『純真さ』。
これを四次元ホログラムで立体化したブロマイドにすれば、
ルーン中の女子生徒と富裕層の貴族から、金貨が滝のように流れ込むんだから!」
「(マリさんの)画像、私にも回してください……!
等身大の壁紙として、礼拝室の天井に貼り付けますわ!」
セシリアの変態的熱量が、撮影現場の温度を不自然に上昇させる。
「品評会まで時間がないわ! 撮って撮って撮りまくるわよ!」
マリアが「革命」の準備を進め、法王が「暗殺」の罠を張る中で、
サーヤは**「ルーンの芸術界に、萌えという名の略奪」**を仕掛けようとしていた。
三者三様の野望が交錯する「品評会」の幕が、今、上がろうとしている。
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