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第2話.名付け親は変態学者? 暴かれるアカネの正体

 「わしがこの【試作番号A0001号】に――『アカネ』と名付けたんじゃからな」


 その言葉が発せられた瞬間、部屋の空気が凍り付いた。  

無機質な最強メイドとしてアタシの横にいたアカネが、

一瞬だけ、本当に一瞬だけ、プログラムにはないはずの「迷い」を瞳に浮かべた気がした。



「……マスター。データベースを照合しました。

……合致。貴方は、帝国技術局、第四特別開発室の――」


「そうじゃ。わしがマザーシステムの管理を任されていた頃、

マスターマザーに対抗するためにこっそり仕込んだ『バグ』、それがアカネなんじゃよ」


 アカネが博士にゆっくりと頭を下げた。

アタシ以外に対して、初めて見せる仕草だ。



 博士は、懐からボロボロの端末を取り出し、

勝手にアタシの通信機へとハッキングを仕掛けた。



「おい、じじい。勝手に他人の回線をいじるんじゃないわよ!」


「まぁ待て。お前さんの持っているこの通信機、妙にいい筋の改造がしてあるのう。

この『重力の檻』を食い破るような独特の組み方……見覚えがあるわい」



 博士がニヤリと笑い、回線を強制的に繋いだその瞬間。  

スピーカーから、耳をつんざくような怒号が響き渡った。


『――おい、このクソボケ学者! まだくたばらずに、

生ゴミみたいな研究室に引きこもってやがったか!』


 その声に、アタシもエリカもユーリも、全員の背筋が伸びた。  

船に残してきたはずの、あのロク爺だ。



「やっぱり、お前か!ろくでなし。

お前こそ、こんな3次元まで何をしにきたんじゃ?」



「「 ろくでなし!? 」」


「ふぉっふぉっふぉ! やはり生きておったか、

脳筋海賊団の落ちこぼれエンジニアめ。相変わらず口の悪さだけは銀河一じゃな」


『貴様に言われたくないわい!

二代目、そこのジジイの言うことを真に受けるなよ。

そいつは頭の中にバグが詰まった変態学者じゃ!』



 アタシは呆然と通信機を見つめた。  

まさか、ロク爺とイワサキ博士が、ここまで知り合いだったとは……。



「ワシと、ろくでなしは、帝国技術局で共に兵器の開発をおこなっていた。

だが、ヤツめは途中で裏切り、脳筋の世界へ逃げていきおった」


「お前だって、こっちに来たくせに人の事ばかり言うな」



 帝国の最新鋭艦すら置き去りにするロク爺の整備術。

その正体は、帝国技術局で博士と同じ釜の飯を食っていた「天才の相棒」だったというわけね。


「ということは、ちびっ子!お前は狂犬が抱いていたあの赤ん坊か!

……なるほど。四次元最強のお前ら脳筋海賊団が、

帝国にハメられてライセンスを剥奪された理由が、ようやく繋がったわい」


「脳筋、脳筋いうな!」


「まぁ、黙って聞きなさい」


 博士は急に真面目な顔になり、空中にホログラムを投影した。  


  映し出されたのは、銀河の支配地図――そして、そこには存在しないはずの

「数億年前の地層」から見つかったという設計図だった。



「帝国はある時期から、おかしな宗教に染まり始めた。

法王なる怪しげな存在が皇族を追い出し、政治を握った。


 奴らが狙っているのはレア素材じゃない。

……四次元に眠る『ウルティマウエポン』と、時間を操る『時間結晶』じゃ」


「時間結晶……? さっきアタシがソウザに使った、あれのこと?」



「そうじゃ。だが、驚くのはまだ早いぞ、

シェンカーの娘よ。ワシがその遺跡で見つけた知識……。

それは、数億年前のワシが、今のワシに向けて書き残したものだったんじゃ」


「……はぁ? 数億年前のアンタが? なにそれ、ギャグ?」


 アタシが鼻で笑うと、博士は今までで一番重い口調で、宇宙のことわりを口にした。



「宇宙は、繰り返しておるんじゃよ。生まれては消え、また同じ歴史を辿る。

だが、その輪廻の中で唯一、時間が一定に保たれる場所がある。

……それが、お前さんたちがいた『四次元』じゃ」


 アタシの背中に、冷たい汗が流れた。  

帝国が四次元から海賊を追い出そうとしているのは、単なる利権争いじゃない。  


 宇宙のループを管理し、神の座に就こうとする「法王」にとって、

システムの外側にいるアタシたちは、消去すべき最大のバグだったのだ。


「そして、その秘密を暴こうとしたお前さんの親父――

『狂犬』は、今、法王の膝元であるルーンに幽閉されておる可能性がある」



「……親父が、捕まった?」


 遊び人の親父の存在など、すっかり忘れていた。

だが、つかまっているとなれば話は別だ。 あんな男でも親や親だ。


物語の断片が、恐ろしい速度で「親父の行方」と「帝国の陰謀」へと紐づいていく。



「さあ、商談の時間じゃ。

ワシの忘れ物をルーンから取ってきてくれたら、お前さんに最高の『報酬』をやる」


「その前に早くマンガをくれ」


「……聖遺物のマンガなんて比べ物にならん、

銀河をひっくり返すほどの代物(聖遺物)じゃぞ、さーーて、いくらになるのかのう? 」


 さ、さすが師匠!アタシの心は完全にわしづかみにされていた。

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