第1話.投げ銭40億ギラ!? 500年前の変態博士とアカネの名付け親
「アンタ、なかなか強かったわよ。
約束通り、仲間にしてあげるから、あとで私のところへ来るといいわ」
クレーターに沈んだ最強暗殺者・ソウザは、目だけでアタシに感謝を述べた。
どうやら体中の骨が折れてしまっているようだ。
あとでアカネが、治癒魔法で治してあげる予定だから問題ない。
それより、さすがは元銀河最強の暗殺者だ。
もう少しで本気を出して、地球ごと吹き飛ばすところだった。
「3対2で魔法科学園学生チームの勝利だ!」
いつの間にかアナウンサーが闘技場に降り立ち、観客を盛り上げる。
感動した観客たちが、「投げ銭」を投げ入れている。
投げ銭の額は、いつの間にか30億ギラを越して40億ギラに届こうとしている。
「マジかよーーー。アタシが命がけで請け負った仕事を軽く上回っているじゃない。
やっぱりアイツはマッドサイエンティストだわ」
アタシはイワサキ博士を『金儲けの師匠』と仰ぐことにした。
割れんばかりの歓声と罵声が入り混じる中、闘技場の中央に、
物理法則を無視した『光の階段』がしめやかに降りてきた。
「……さあ、行くわよ。この先にアタシの『お宝』が待っているの! 」
腰を抜かしているマリとセシリアを促し、アタシは迷わず光の段へと足を踏み入れた。
トウマは心配そうにセシリアの背中を押し、最後にアカネが上がってきた。
階段を上りきり、重厚な扉を抜けた瞬間、肌を撫でる空気が一変した。
闘技場の熱気は消え、目の前に広がっていたのは、どこまでも続く穏やかな『草原』。
「気持ちいいーー……これ、本物の風ね」
階段に時間の歪みがあり、別の三次元座標へ転移したのだ。
おそらくどこかの星の土地に繋がっているのであろう。
草原の中にある一本道を三分ほど歩くと、
手入れされた畑の先に一軒の古びた家が見えてきた。
「ここね。これだけ派手に演出するくらいだから、
きっと、すごいお宝を持っているに違いないわ」
招き入れられた室内は、いかにも科学者が好みそうな雑多な研究室だった。
「おおお、なんと芳醇な香り! 待っていたよマイハニー!」
いきなりセシリアに絡み出す変態博士。
しかし、それはアンドロイドだとすぐに分かった。
やはり、博士は500年前に3次元に来たので、
とっくの昔に、あの世にいってしまったのだろう。
アタシはつくづく『老化地獄』の3次元宇宙を恐怖に感じた。
「さて、諸君。この度はダンジョン攻略おめでとう。
本来、君たちに直接祝辞の言葉を述べたいのだが、すでに私はこの世にいない」
「え、そうなんですか?それではあなたは何者なのですか?」
マリが不思議そうに博士に尋ねた。
「ふぉっふぉっふぉ。科学の力じゃよ。
ワシの脳みそをマザーシステムにインポートして、
その知識が君たちと話しているのだよ。本当に残念だ」
最後は寂しそうにうつむきながら博士がつぶやく。
「まぁ、お亡くなりになっているのですか」
少ししんみりとするセシリア。
「「 茶番は、それくらいにされたらいかがでしょうか? 」」
アカネが「ぺしっ」と何かを叩いた。
「「 あっ! 」」
変な声が聞こえて、もう一人の博士が現れた。
「ど、どういうこと?」
おどろくマリとセシリア。
「サーヤ様が対戦したソウザの魔法と同じ仕組みです。
博士は自分の身体を部屋の風景に合わせて、
カメレオンのように私達を見ていたのです」
「そして、セシリアのおしりを触ろうとした」
「その通りです。サーヤ様」
「ほんと、どうしようもない変態だな」
「なんじゃなんじゃ、触るぐらい良いじゃないか。減るもんじゃなかろう。
200年ぶりに『推しの子』のお尻を触って何が悪いんじゃ。」
真っ白な白衣のオッサンが駄々をこねた。
アタシはそれを冷めた目で眺め、アカネに命じて博士を
セシリアから引き剥がさせた。
「いいから、早く賞品を出しなさいよ。
……それとも、ソウザのところまで飛ばしてあげようかしら?」
「待て待て、物騒な。……ところで、お前ら二人は何者じゃ?
圧倒的な力、そしてその淀みのない魔力の質……興味深いのう」
博士の眼鏡の奥で、鋭い知性が光る。
アカネが一歩前へ出て、静かに、けれど揺るぎない声で自己紹介をした。
「私は【試作番号A0001号】。コードネームは――【アカネ】です」
その言葉を聞いた瞬間、博士は驚くふうもなく、懐かしそうに目を細めた。
「おー、やはりお前がアカネか。
……博士、アカネを知ってるの? と聞きたい顔じゃな」
博士は椅子に深く腰掛け、愉快そうに笑った。
「知っているとも。わしが、
この【試作番号A0001号】に――『アカネ』と名付けたんじゃからな」
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