閑話(後編):赤髪の処刑人と、目覚める千里眼(キャリー)
「ふはははは。さすがに帝国貴族のご用達の定期便だ。
高級貴族があふれるほど乗っている。一生遊んで暮らせる宝が手に入るぜ」
定期便を襲った海賊の親玉・ゴートがコクピットを占拠し、勝どきを上げた。
彼らはベガ星系で暴れまわっていた海賊団で、一度四次元海域に足を踏み入れた。
しかし、四次元海賊の圧倒的武力の前に大敗し、3次元へ逃げ帰っていた。
帝国からは大隊級海賊(戦艦300-1000で対応)と指定される大物海賊だ。
防戦に回っていた帝国兵たちは、1人減り2人減り、もう残り少ない。
「エリカさん、急いでほしいところがあります。
1つフロアーを降りて、9時の方向、突き当りの部屋に行ってほしい……です」
「オーケー、キャリー。何か訳アリだね、10秒で到着だぜ!」
キャサリンの千里眼には、あの親子の危機が映っていた。
「ママ、こわい」
「私たちがどうなろうと構わない。せめて子供だけは許してくれないだろうか」
部屋では10人以上の海賊たちが親子を取り囲んでいる。
その中の兄貴分が、奪ったワインを飲みながら答えた。
「子供か、それじゃ特別に許してやろう」
「よかった……」
子供を抱きしめて安堵する母親。
だが、自分は確実に殺されることを知っているため、
その目には覚悟の色が宿っている。
「子供の臓器は、レッドスターで高く売れるらしいからな、ふふふふ」
父親は、海賊の悪魔のようなセリフに耳を疑い、母子をかばうように覆いかぶさる。
部屋から貴金属を集め終わると、兄貴分が魔力を込め始めた。
「あーー、なんてこと、神様、助けてください」
「もっと、叫べ。その祈りは海賊の大好物だぜ、へへへ」
絶望が部屋の空気を押し殺そうとしていた、そのとき、
<<< バーーーーーン >>>
轟音とともに扉と共に海賊が2人、吹き飛んだ。
「おまたせーーーー。エリカちゃんだよ」
「だ、だれだ?」
「あれ?エリカちゃんって言わなかった?」
「ふざけやがって」
「ふざけてんのは、お前らだろ。
アタイが狙っていた船を襲いやがって」
「お前も海賊なのか?
知って驚け、俺たちはゴートさまの手下だ。
ふはははは、分かったら命は助けてやるから、さっさと行け」
「ゴート、聞いたことがあるな。なんだっけ?
あーーー、この前、四次元から逃げていった奴かーー。
あれは笑ったな。弱すぎてなーーー」
一瞬で凍ったように海賊たちが固まる。
ゴート一味が四次元に入っていたことを知っているのは
四次元海賊たちだけだ。
(( つまり、こいつは…… ))
その場にいた海賊たちの背筋が凍った。
しかし、四次元海賊は大物揃いだ。
それに奴らは三次元が嫌いだから、こちらに来るはずがない。
「変なことを言いやがる。思わず勘違いしたじゃねーか。
こんなところに四次元人がいるわけねーわ」
「そ、そうだ」「そうだ」
「こいつから殺っちまえ! 」
その妙な勘違いと割り切りが、海賊たちの運命を変えた。
気が付くと、目の前の少女が満面の笑みを浮かべている。
「ま、まさかーーー」
「そのまさかだ!悪かったな」
気が付くと、辺り一面の海賊たちは血を吹いて倒れている。
部屋の主、貴族の親子も顔面蒼白で、こちらを見てる。
「ごめんな。汚すつもりはなかったんだが……」
そういうとばつの悪そうな顔で部屋を出ていった。
「エリカさん、敵の数はあと200人ぐらいです。
逃げた方がいいんじゃないですか?今なら逃げ道を確保できます」
「いやだ! あいつらに海賊のルールを教えてやらなきゃ、
親父に叱られるわ。200人ぐらい楽勝よ」
「うふふふ、本気ですね? 」
「まかせろ」
キャサリンは、生死の狭間にいるはずなのに何故か楽しくて仕方がない。
自分のSSS級スキルが、エリカという「暴力の天才」と噛み合って、
まるでパズルが完成していくような快感を感じていた。
その後、客船の海賊たちは、たった2人の少女に蹂躙され、
「赤髪と血に染まった海賊闘争」として世間を賑わせることとなる。
――そして、この時助けられた少年が、
後に帝国軍で『赤髪の恩人』を探し続けることになるのは、また別の話である
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