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48.(中編)野生を封印されたマリの受難と、四次元の理を超える「鬼」の閃光

【第2試合:マリ vs 四次元の鉄壁ガーディアン】


「次は私ね。……なんか、今日は体が軽い気がするわ!」  


 マリが拳を鳴らして前に出る。だが、アカネがアタシに目配せをした。


(マリのバフをロックです。ここを壊されたら帰る道がなくなります)

(了解。マリには悪いけどそうするわ)



 マリは気づいていない。自分が「自覚なき強化」で戦っていたことに。

マリが闘技場に入場する。足元を踏みしめるが、何も変化がない。


「……あれ? おかしいな。この前の『ドカン』って感じが来ない」  


 前回のように体重を乗せて踏み込んでも地面が爆発しない。


 マリは首を傾げながら、何度もシャドウパンチや、キックをしたが

前のような「ドカン」「ビュっ」という音も聞こえてこない。



「今日の私、身体の調子が悪いみたい。物理がダメなら、魔法でいくわよ!」


 マリの対戦相手は巨大な盾をもったガーディアン。攻撃 対 鉄壁 の戦いだ。


 マリは物理攻撃を諦め、火柱と氷の礫を交互に放つ、精緻な魔法攻撃に切り替えた。

地球貴族としては最高峰の連撃を放つ。

だが、相手は四次元の修羅場を潜り抜けた『鉄壁』の称号を持つガーディアンだ。


『詠唱が綺麗ないい魔法だ。しかし、お嬢ちゃん。

四次元の鉄壁は三次元の属性魔法じゃ焼けねぇんだよ!』


 マリは必死に食らいつき攻撃を続ける。

しかし、ついには魔力が底を突き、電磁ネットに絡め取られて敗北した。


「調子が出なかったなー」と悔しがるマリ。アタシは黙って迎えた。



【第3試合:トウマ vs 銀河最強剣士ソウザ】


 1勝1敗で迎えた第3試合。

トウマの前に立ったのは、かつて四次元海賊団で「銀河最強」と呼ばれた伝説の剣士だった。  


 剣士の名はソウザ。

戦艦の時代に剣士がなぜ存在するのか?

それは海賊の戦い方に理由があった。


 昔も今も、海賊は接近戦が得意で常に相手の船に、自分の船を衝突させ、

白兵戦で勝負を決める。

そのため海賊船はスピードと操縦性に優れ、パイロットの技術もぴか一だ。


 サーヤ海賊団の船の敏捷性と、変則的なエリカの運転技術も、

海賊船ならではの特性といってもよい。


 その中、帝国軍から鬼のような強さで「鬼剣士」として恐れられたのが

このソウザである。



「『鬼剣士』、こんなところに隠れていたのですね」


「アタシもロク爺から名前だけは聞いたことがあるわ」


 トンデモない大物の登場にアタシとアカネは息を飲んだ。

もちろん、トウマは相手のことを知らない。



「試合、はじめ」


 博士の開始の号令と共に、トウマが動いた。

アカネの作った10万ギラの剣を構え、上段に剣を構える。


『……ほう。その構え、その呼吸。三次元の小童にしては、恐ろしいほどの才を秘めているな』  


 鬼剣士は、トウマの中に眠る「四次元の血」の片鱗をいち早く見抜いた。


「……だったら、僕の全力、受けてみろ!」  


 トウマの渾身の一撃。だが、鬼剣士は紙一重でそれをかわし、

無駄のない動きでトウマの死角へ回り込む。



『惜しいな。その才能、あと数百年磨けば私に届いたかもしれん。

……さらばだ、若き天才よ』  


 鬼剣士の必殺の閃光。

四次元の理を乗せたその刃は、トウマの防御を易々と貫いた。

しかし、トウマはギリギリのところで、鬼剣士の剣を止める。


『ほう、思ったよりもやりおるわ。

それなら少し、剣というものを教えてやろう』


 そういうと鬼剣士は構えを変え、下段の構えを取る。

トウマの上段に対し、鬼剣士ソウザは下段。

互いに動かず、3分が過ぎようとした。



 しかし……。


「アカネ、見えてる?」


「はい」


「2人は音速を超えた領域で、剣を交えているわ。

トウマがこんな戦い方ができるなんて。

でも、相手の鬼剣士が稽古をつけて、トウマのレベルを

引き上げているように見えるんだけど」


「その通りです。あれは指導の剣です」


 と、アタシがアカネと話している矢先に、

トウマがゆっくりと倒れていった。



「「 勝負あり。ソウザの勝ち 」」


 審判の声が響くと、観客が割れんばかりの歓声を上げた。

鳴りやまぬ称賛の拍手、これは2人の剣士に向けられた。



『少年よ、今日の戦いを誇るが良い。

そして、大きくなれ。その時に再び相まみえようぞ』


 そういうと、鬼剣士は控室へ帰っていった。



「……1勝2敗。ま、相手が悪かったわね」  


 アタシは担架で運ばれるトウマを見送り、隣で静かに佇むメイドを見た。


「アカネ。あの鬼剣士、最高に格好良かったわ。

……海賊に『やられっぱなし』はない。この敗北を絶望的恐怖で塗りつぶしてきなさい」


「承知いたしました。

……その前にまずは、この騒がしい配信を『静止画』にして差し上げましょう」


 アカネが静かに、そして冷徹に歩み出る。



 博士はダンジョンでのアカネを細かく観察しており、『普通のメイド』とは見ていない。

だが、スカウターのアカネの数値は、わずか「3000」だ。


(数値以外の何かが、あのメイドにはある)


 博士の目は厳しく、観察者の目となりアカネに降り注ぐ。



 対戦相手のコーナーから登場したのは、ヒトではないドラゴンだ。

アカネに対して異常なまでに、警戒を抱いた結果、

銀河最強種族の1つ、レッドドラゴンを呼び寄せたのだ。


 会場のあちこちから悲鳴が聞こえる。

ネットからの視聴とはいえ、その恐怖は避けられない。


 アカネは会場に入ると、ドラゴンの存在を意に介さず、深々とお辞儀をした。


 それが、サーヤとアカネだけが分かる「公開処刑」の合図であることに、

まだ銀河中の誰もが気づいていなかった。

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