表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/74

44.(後編):地下遺跡のバトルモード――悪意が覗く第3階層

 図書館の引き出しの先は、虹色の光が流れる時空間のトンネルが広がっていた 。

そこに1台、剥き出しの椅子が並んだ、奇妙な乗り物が浮いている。


 先に入ったトウマとマリは、座席にしがみついてキョロキョロと辺りを見回していた。



「よかったーーー、伊集院さん、無事なようね」  


 遅れて飛び込んできたセシリアが、安堵の溜息をつく。

その後ろから、アカネが何事もなかったかのような足取りで入ってきた。


「ここはどこなの? サーヤ、何か知ってる?」


 震える声でマリが尋ねる。

この異様な空間で、異常なまでの落ち着きを見せているのはサーヤとアカネだけだ。



「異次元に迷い込んだようね。

一昨日読んだ漫画の中でも、同じようなシチュエーションがあったわ。

それは猫型ロボットが運転する、タイムリープをする乗り物だった」


「それじゃ、これはタイムマシンなのかしら!?」


「さあね。でも、図書館には戻れないみたいだし、前に進むしかないわ」



 女子たちが冷静(?)に現状を分析する一方で、

トウマはガチガチと歯を鳴らして縮こまっている。


「トウマ、しっかりしなさい。それとも、アタシとのデートが楽しくないの?」


 アタシが四次元海賊特有の威圧を僅かに混ぜて嘆いてみせた。


「楽しいでしょ? ……ね!!」


 そして威圧の念押し。


「は、はひっ!! いえ、楽しいです! 最高です!!」  


 涙目で叫ぶトウマ。そこへセシリアとマリの視線が鋭く突き刺さる。


「「やっぱりデートだったのね!」」


「さぁ、デートという名の『お宝探し』に出発よ。さあアカネ、出して」


 コクリと頷くと、アカネがコンソールのレバーを引いた。



 音を立てて動き出すマシン。

一瞬、目の前が光ったかと思うと、次の瞬間、アタシたちの前には意外な風景が広がっていた。



 どこまでも続く、湿った土と鉄の匂い。


 暗闇に光ゴケが点在する広大な地下洞窟――


 そこは「ダンジョン」だった。



「やっぱり。お宝はこうじゃなくっちゃ」

「お宝? 何のことよ、サーヤ」


 マリが詰め寄る。

セシリアもインテリ眼鏡を光らせて同調した。


「私もおかしいと感じていました。

デートにしてはイワサキ君ではあまりに役不足。……そろそろ説明して頂けますか?」



「アカネが読んでいた古文書マンガに書いてあったのよ。

この図書館の地下に、とびきりのお宝が眠っているって」


「だからって、なんで私やトウマ君を巻き込むのよ」


「マリはマぶだちだし、トウマは荷物持ちに使えそうだからよ」



「ま、マぶだち……つまり親友ってこと……。そ、それじゃ仕方ないわね」


 嬉しそうに俯くマリ。


 しかし、アタシの脳内はもっと冷徹だ。


(……仮にお宝が「カスアイテム」や「ハズレポーション」

だったとしても、地球人には価値があるはず。

富豪の伊集院家なら高く買ってくれる。そのためのマリよ)



 そんな裏心が顔に出たのか、トウマがジト目でこちらを見ている。  


 こっちは四次元と親父と聖遺物がかかっているのだ。

他人の目なんて気にしていられない。


 とはいえ、一人でも死なれては困る。

ダンジョン冒険をする前に、全員の実力を知っておく必要がある。


 アタシは最後尾に陣取ると、網膜スカウターで全員の魔力波長をスキャンした。


・トウマ:1500(潜在能力が鍵として異常に高い)  

・セシリア:1100(帝国貴族平均の800を優に超える数値。流石ね)  

・マリ:900(地球人にしては驚異的な努力値)


(……これなら、アタシが手を下すまでもないわね。しっかり肉壁になってもらうわよ)



 アタシたちはダンジョンで歩く順番を決めて、トウマを先頭に歩き始めた。

 ダンジョンは広く、天井からは不思議な発光石が吊るされている。


「前方、魔物反応! 来ますわ!」


 サーチ魔法を得意とするセシリアが叫んだ。


「任せて! ともだち・サーヤには指一本触れさせないんだから!」  



 マリが小熊のイラスト入りの杖を掲げ、火炎を放つ。

爆炎に怯んだゴブリンの喉元を、トウマの剣が迷いなく貫いた。


 即席だが、思いのほかバランスの良いパーティだ。

戦闘が終わると、静寂の中で「チャリーン」と乾いた音が響いた。



「……!? 今、お金が落ちる音がしたわ!」


「え? なにも聞こえないわよ」


「確かにお金の音よ。アタシが聞き間違えるわけがない!」


 ゴブリンが消えた跡に、一枚の銅貨が落ちている。

アタシは瞬歩で駆け寄り、それを拾い上げた。


「えへへ、コインめーっけ!」  


 泥だらけのコインは、見たことのない貨幣だ。

アタシは、綺麗にコインを拭いてポケットに収めた。

それを見守る一行の目は、驚くほど冷めていた。


「……サーヤ。それ、庶民の駄菓子くらいしか買えないわよ?」


 マリが冷静に指摘する。

その横では、セシリアが胸を押さえて悶絶している。


「その意地汚い執着心、そして泥を拭う小さな指先……。

あああ、萌えますわ! 汚れたコインになりたい……!」


 セシリアが恍惚とした表情で身悶え、トウマが頭を抱えたその時だった



『嘆かわしい……。こんなふざけた奴らが我が聖地を汚しに来るとは』



「……っ!!」  


 アタシの背中に氷柱つららを突っ込まれたような悪寒が走った。


(今、誰かに覗かれた!!)


 それは単なる視線じゃない。

アタシの存在そのものを値踏みし、排除しようとする明確な「悪意」のプレッシャーだ。  

隣のアカネも既に戦闘モードに切り替わっており、鋭い目で周囲をスキャンしている。


 しかし、声の主、発せられた方法と場所を突き止めることはできなかった。



 やがて、ダンジョンは行き止まりにたどり着き、階段を下りていく。

その入り口には「ようこそ第3階層へ」と手書きの看板が立っていた。


 ダンジョンといえば3階層目からが本番だ。

この先に潜んでいるのは、これまでのゴブリンのような雑魚ではない。


「アカネ、全力展開の準備。……念のため、蘇生魔法の術式も並列で組んでおきなさい」


 アタシは拾ったばかりのコインを強く握りしめた。  

第44話(後編)をお読みいただきありがとうございました!


即席パーティによる初陣、いかがでしたでしょうか。

火力を叩き出すマリ、必死に剣を振るトウマ、そしてサーチと変態的萌えを担当するセシリア……。

意外にもバランスの良い(?)パーティが結成されました。


 しかし、そんな賑やかな道中を切り裂く、謎の声と悪意の視線。

『聖地を汚す者』とは一体何者なのか。

そして、サーヤがアカネに命じた『蘇生魔法の準備』が、この先の絶望を予感させます。


もし「続きが気になる!」と思ってくださったら、

ぜひ【評価】や【ブックマーク】で応援いただけると、更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ