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4.少年の告白

「「 おい、ついたぜ! 」」



「はっ…? 」


「えっ…?! 」


「……ふぁ、おはよーございます」


「三途の川で先代に会ってきた……」



 エリカの声でアタシたちは目を覚ました。

ロク爺が変なことをいっていたが、うちのバカ親父はまだ死んでない。


「……現在の座標が出ました。

予定通り小惑星の空洞の中にいます」


 キャリーが現在位置を報告すると、

続いて船外の様子がモニターに映し出された。


 アタシたちが逃げ込んだ小惑星は「ちくわ」の形をしており、

空洞の奥にドッグが作られている。


 おそらく開拓時代に使われていたドッグなのだろう。


 ドッグの横にはクルーが休めそうなデッキも見える。

これなら船の整備とエネルギー補給ができそうだ。



 それに、客室にいる少年………。


((  や、やばい  ))


 子供が乗っていたのを、完全に忘れていた。

うちのクルーが全員ダウンしたぐらいだから、後遺症になってもおかしくない。


 とにかく相手は大切なお客様だ。デッキで治療して、ゆっくり休んでもらおう。



「キャリー、お客さんを迎えに行って!一緒にデッキに移るわよ」


「分かりました、呼んできます」

「アタイも一緒に行くぜ! 」


 キャリーの後を、エリカが追いかけていった。


「キャリーたちはお客さんと、ホバーボートでデッキに向かってね。

 アタシとユーリは、船外の破損を確認してデッキに向かうわ」


「「 りょーかーい 」」


 2人はじゃれ合いながら、ドアを出ていった。



「二代目、ワシはエンジンとビーム砲の整備をしておくぞい」


「うん、ロク爺。1人で働かせて悪いけど頼むわね」


「いいってことだ。エリカのやつ、派手な運転したからな。

 モジュールの調整もしておいた方が良いじゃろ」


「さんきゅ」


 ロク爺は整備用のタブレットを手に取り、エンジンルーム行きのエレベータに乗った。

ドアが閉まる寸前、思い出したかのように再び開いた。


「デッキに酒があったら、そっちの補充も頼んだぞい。

 放っておくと、エリカの奴に全部飲まれるからな」


ドアが閉まり、エレベーターが動き出す。


――ロク爺。先代の頃からの腐れ縁だが、その腕は本物だ。

帝国軍ですら、ビーム掃射直後の慣性制御には手を焼く。


 3,000隻の精鋭たちが「物理の法則」に縛られて硬直していたあの瞬間、

ロク爺が調整したこの船だけが、重力の檻を食い破って加速できた。


「(帝国軍を置き去りにする整備術、か。そりゃ懸賞金も跳ね上がるわね……)」


 アタシは船の損傷をチェックしながら、改めてロク爺の偉大さを感じていた。

その後、デッキについたのは2時間後だった。



「二代目……お客様を連れて来た。

お腹が空いていたようなのでパスタを作って食べさせてあげた」


「ありがとね。キャリー。

それにしても『あの子』、あんな滅茶苦茶な光速移動のあとで よく食べられるわね」


「もっと滅茶苦茶にできるぜ。まだアタイ、本気だしてないし! 」


 キャリーとアタシの間に、エリカが割り込んできた。


「あんたは良いの、エリカは休んでいなさい! 」


「ねーキャリー、アタイもお腹空いたー 」


 相変わらず人の話を聞いていない。

操縦の腕前は一流だが、本当にこいつはガキだ。


「キャリー、うるさいから、こいつにも何か作ってあげて」


「倉庫にチョコレートムースの材料がありましたので、すぐに作ります」


「それならボクも!ボクも! 」


「ユーリの分もありますよ。2人とも、おとなしく待っていてくださいね」


 エリカとユーリがキャリーに餌付けされて、やっと静かになった。



 背後のテーブルでは、少年が黙々とパスタを頬張っている。

あれだけ脳をシェイクされる回避運動を食らって、吐くどころか完食とは。


 少年の漆黒の瞳は、凪いだ湖のように静かだった。

「この度は、大変なことに巻き込んでしまい……」 丁寧な仕草。


 だが、声に「感情の揺らぎ」が一切ない。

130センチほどの小さな体から漂うのは、子供特有の未熟さではなく、

完成されすぎた「個」としてのオーラだった。



 ……あれ?この仕草? 少年かと思ったが話していると少女にも見える。


「いいのよ。ビジネスとしてアナタを護送しているのだから」


「私、部屋でずっとモニターを見ておりました。

帝国軍に囲まれた時には、さすがに覚悟を決めました」


 ……この子。思ったよりも大人だわ。


 これなら帝国が追いかけてきた事情を、少し聞き出せるかもしれないわね。



「それにしても、どうやって、あの大軍を壊滅させたのでしょう?

私にはビーム砲を1度、撃っただけのように見えましたが……」


「こちらも商売なのであまり、種明かしはしたくないの。

ただ、そちらの事情を教えていただければ、ほんの少しだけ秘密を教えても構いませんよ」


 アタシのスキルは希少性が高い。なるべく他人には知られたくない。


 だが、今回の依頼は国家レベルの秘密が隠されているようだ。

聞き出すことができたら、今後の商売につながる。


 その秘密と交換ならアタシのスキルを話しても損はないわ。


「かしこまりました。この度はご迷惑をおかけしましたので事情をお話ししましょう。

ただし、ここだけの秘密としてください」


(( え、、ホントに話してくれるの? ))


 ダメもとで交渉したのにあっさりとOKしてくれた。

いつの間にか隣のテーブルから、エリカとユーリが移動してきている。


( そりゃ、みんなも気になるわよねー )


 キャリーがチョコムースを運んできた。

2人はスプーンを加えながら、耳を傾けている。



 少年はゆっくりと、穏やかな声で……

けれど、この宇宙のことわりを根底から覆すようなトーンで話し始めた。


「実は……私……皆さんと同じ人間ではありません」


 ――ガシャン。 ユーリたちのスプーンが床に弾け、乾いた金属音がデッキに響き渡った。


「私は――シルバーネオ帝国が、400年かけて造り上げた『A001』。

この銀河のすべてを管理する、生体メインフレームの1つなのです」


 スプーンを落としたまま、固まったエリカとユーリ。

キャリーがこちらの会話を気にしながら床を拭いている。


 アタシたちは息を飲みながら、少年の次の言葉を待った。

ご一読いただきありがとうございます!


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