41.(後編):運命のランチタイム。――一個旅団とS級冒険者を添えて
マンガクラブでの小競り合いから三日後。
学園の空気は、一般生徒たちが気づかぬうちに、極限の緊張状態へと達していた。
そんな中、ついにルーン聖王国の聖女マリアが、白昼堂々と行動を開始する。
彼女は取り巻きを引き連れてS組を訪れると、ターゲットへ優雅な微笑みを向けた。
「サーヤさん。今日のランチ、ご一緒させていただけるかしら?」
当然、サーヤは「面倒くさい」と一蹴しようとしたが、
親友のマリが涙目で縋り付いてきた。
「サーヤ、お願い! 学食の特製プリン、1か月分奢るから!」
「……わかったわよ。おカネとプリンには逆らわない主義なの」
不承不承ながらも、ランチを承諾するサーヤ。
だが、その光景を植え込みの影から監視していたセシリアは、全身を戦慄させていた。
(なんですって……!? あの女、あんな優雅な顔をして、
もうサーヤ様に毒牙を向けるというの!?
このままでは私の、私だけの可愛らしいサーヤちゃんが、
ルーンの地下牢で『教育』の名のもとに変態的趣味の犠牲に――
ああああ! そんなこと、この私が許さないわッ!)
セシリアは震える指で生徒会幹部会へ暗号通信を入れた。
その声は、愛する者を奪われんとする悲劇のヒロイン(勘違い)の絶叫に似ていた。
「緊急事態です! マリア様が直接接触を開始! 拉致工作が始まりました!
今すぐ、今すぐ軍を動かして彼女を保護してちょうだい!!」
「なんだと!? 相手はあの『カレーパンの小娘』だろう?」
通信を受けた幹部は、手元の薄い資料に目を落とした。
そこには、アカネによって周到に隠蔽された「サーヤの記録」がある。
『サーヤ・シェンカー:魔力数値・平均以下。
【素行記録】昼食のカレーパンを奪われた際、
激昂して生徒会メンバーをボコボコにした前科あり。
【要注意事項】近衛師団を一方的に打ち倒した現場に居合わせていたが、
本人の関与は不明。混乱に乗じた不審人物と思われる』
「……データ上は、カレーパンごときでキレる、素行の悪いガキだ。
だが、あのセシリア嬢がここまで取り乱し、さらにルーンの一個旅団が集結している。
この小娘、データには映らない『帝国の存亡に関わる重大な秘密』を握っているかもしれない!」
セシリアの「個人的な愛の焦り」を、生徒会は「国家レベルの危機」だと読み違えた。
「ルーンの王女が狙う『未知の脅威』を奴らに渡すわけにはいかん。
公式活動にならない形で、最高戦力を送り込め!」
帝国軍本部から届いた返信は、極めて不穏な一文だった。
『解決すべく、一人のS級冒険者を送った』
「S級……! 帝国の主力戦艦十隻分に匹敵する、英雄級の冒険者か!
これならルーンに対抗できる 」
そんな嵐が吹き荒れているとは露知らず。
サーヤはただ、マリに手を引かれ、学食のテラス席へと向かっていた。
「……あ、来たわね。シェンカーさん」
テラスの特等席には、優雅に微笑むマリア。
その背後の空では一個旅団が主砲の照準を固定し、
校舎の屋上ではS級冒険者がスカウターのスイッチを入れる。
そして植え込みでは、セシリアが顔を紅潮させ、
「待っててサーヤ様、今すぐお助けしますわ……っ!」
とはぁはぁと鼻息を荒くしていた。
恐怖から逃れたい聖女と、愛ゆえに暴走する委員長。
二人の巨大な「勘違い」に挟まれた、銀河の命運を賭けたランチが始まった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
セシリアの暴走愛と、生徒会の「深読み」が見事に合致し、
ついに帝国最悪の切り札**【S級冒険者】**が投入されてしまいました。
ターゲットは、プリンを楽しみにしているだけの「カレーパンの小娘」。
……明らかにオーバーキル(戦力過剰)ですが、これが本作の日常です(笑)。
さあ、次はいよいよランチタイム本番! 第42話『S級冒険者vsプリン幼女。
――おじさんのスカウター、壊れる』
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