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40.(後):〆切を越えた者たち。――マジックキャンセラーをキャンセル返し!

 リズの魔法が消された。


 魔杖を構えた風紀委員たちが、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。  

だが、アタシは掲げられたその銀のオーブを凝視し、思わず目を丸くした。


(……え? あのオーブ、まさか……)



 それは、この時代の魔法技術なんかじゃなかった。  

6500 年後、アタシの時代の「ナノマシン妨害電波発生器」。


 それも、子供たちが鬼ごっこやイタズラで使う安価な玩具だ。

子供が使う微量の魔法をキャンセルして「ひっかかったー!」

と笑い合うための、ただのパーティーグッズである。


(げっ。あんなオモチャまでマリアは持ってるの!? どこで拾ってきたのよ……)



 だが、魔力の薄い現代の地球人には、その玩具程度の出力でも致命的らしい。

魔法を封じられたリズは、絶体絶命の窮地に立たされていた。  

しかし、アタシが防御結界を張るよりも早く、横から「フッ」という不敵な鼻笑いが漏れた。


「やれやれ。マジックキャンセラーですか。

……敵もなかなかやるものですな。

しかし、我々をただの学生だと思ってもらっては困ります」



 声を上げたのは、副部長のデブオタ、タカだ。  

彼は悠然とポテトチップスの袋を置き、太い指で安っぽい木製の杖を――

いや、それはただの「棒」に見える代物を振った。


「では、こちらも――『マジックキャンセラー』への

『キャンセル返し(上書き)』といきましょうか。

〆切一時間前の修正に比べれば、この程度の妨害、ノイズにもなりませんよ」


 瞬間、タカの杖から放たれた虹色の魔力が、銀のオーブを包み込んだ。  

オーブは嫌な音を立てて火花を散らし、そのまま機能を停止して床に転がった。



「な、何っ!? 委員長の秘宝が、ただのデブに無効化されただと!?」


「失敬な。私は『デブ』ではなく、『伝統ある称号』を授かっているのです。

……さあ、会計。トドメを」



 促され、ガリ勉の会計――忍者のポーズをとる男子が音もなく前に出た。


「ついに拙者の出番のようですな。

実家から届いた『忍者コスプレ用・魔法キット(試作品)』、

その威力、とくとご覧あれ! 締切を守れぬ者は、死あるのみでござる!」


 逆上した風紀委員たちが、二つの杖を交差させて「稲妻」と「氷の矢」を放つ。  

だが、ガリ勉の忍者が呪文を唱えると、氷の矢は春の雪のように溶け、

稲妻は夜空の花火のように美しく弾けて消えた。



「『秘技・七変化』でござる。〆切前の修羅場という名の地獄を生き抜いてきた

我らに対し、温室育ちの貴公らの魔法など、そよ風に等しい……!」


(……強い。何なの、このオタクたち。だけど何だろう、

この心の痛みは。アタシより名演技じゃない……だけど痛い……)



 アタシは悟った。

〆切という名の絶対的な絶望と戦い、徹夜の極限状態で精神を

研ぎ澄ましてきた彼らの魔力は、生半可なエリートなど足元にも及ばない。


それは、ある種の「悟り」に近い極致なのだ。



 風紀委員たちは、自分たちの誇る魔法が赤子のように扱われたことに恐怖し、

腰を抜かしながら脱兎のごとく逃げ出していった。



 この「マンガ研究部・逆襲事件」は、瞬く間に学園を駆け巡った。


「……面白いわね。まさかあの娘サーヤが入ったクラブが、私の風紀委員を退けるとは。

これは、本格的に彼女を確保しなければならないわね」


 報告を聞いた風紀委員長マリアは、不敵に、そしてどこか嬉しそうに微笑んだ。


 一方、生徒会幹部会。  

中央に座る生徒会長が、報告書を読み上げながらニヤリと不敵に笑う。


「風紀委員の面目が丸潰れですか。いい機会だ。

この混乱に乗じて、風紀委員会を叩き潰し、サーヤをこちらの傘下に加えるとしましょう……」


 誰も気づいていなかった。  

サーヤが選んだはずの「お気楽な金稼ぎ部活動」が、学園を三つの

巨大な勢力に引き裂く致命的な引き金になったことに。



 生徒会、風紀委員会、そして狂気のマンガ研究部。  

後に 2000 年に渡り、魔法科学園の歴史に刻まれることになる血塗られた抗争――。


「魔法科学園 三国志」が、今、ここに幕を開けたのである。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


先輩たち、強すぎましたね……。

〆切という地獄を潜り抜けてきた者だけが到達できる、狂気の魔力。

サーヤの「枠線担当」も、ある意味では平和を守るための賢明な判断だったのかもしれません(笑)。


しかし、この小さな部室での騒動が、まさか学園を三つに割る「三国志」の幕開けになるとは――。


次回、ついに動き出すマリアとセシリア。

二人の「サーヤ争奪戦」は、なぜか変態的な方向へと加速していきます。


明日も【12時ごろ】と【21時ごろ】の2回更新を予定しています!

面白いと思ってくださったら、ぜひ星(★)やいいねで応援をお願いします!

皆様の応援が、サーヤの新作マンガの画力に繋がります(多分)。

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