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40.(前):潜入、マンガ研究部! ――そこは200年続く狂気の魔境でした

 アタシが描いた魂の絵は、結局、誰一人として正しく理解することができなかった。  


 だが、その「深淵の芸術」を、マンガ研究部の部長――

『腐女子』の称号を持つ西園寺スーだけは、震える手で受け止めてくれた。


「……素晴らしいわ、サーヤ氏。

この線の歪み、まさに禁忌タブーに触れた者の苦悩が滲み出ている……。

合格よ。今日から貴女は、我ら『マンガ研究部』の一員よ!」



 こうして、放課後のアタシの居場所は決まった。  

だが、このクラブは想像以上に「魔境」だった。


 まず、この部には二百年続く世襲制の伝統があるという。

部長は代々『腐女子』と呼ばれ、副部長は『デブオタ』、会計は『ガリ勉』と称される。


 アタシは当初、これらを不名誉な蔑称だと思っていたが、

彼らにとっては魂に刻まれた「聖なる称号」らしい。

その誇り高い眼差しを見る限り、どうやら本気マジだ。



 さらに驚くべきは、その創作ルールだ。  

作品タイトルには必ず『百合』か『薔薇』という戦術コードを冠し、

作中では同性同士の親密な交流を描かなければならない。


 それもただ仲良くするのではない。

精神的、時には肉体的な衝突を経て深まる絆を描くのが「鉄の掟」なのだとか。


(なるほど……。未来宇宙でも『薔薇』は騎士の象徴。 『百合』は純潔の盾。

これは、高度な軍事教本をマンガの体裁で偽装しているのね……!

表向きは痴話喧嘩、その実は高度な心理戦のシミュレーションというわけか。

恐るべし三次元のオタク……!)



 サーヤは一人で納得していた。  

そして、なぜか親友のリズも、その「しきたり」に異常な速さで順応していた。


 彼女は風景画をバックに描いたり、人物の横にリンゴや花を配置したりすることで、

作品に多層的な意味……つまり、隠された戦略図を埋め込んでいるようだった。



 クラブの活動は過酷を極める。  

週に一作品を仕上げるため、金曜日が近づくと部内には戦場のような緊張感が漂う。


 リズが背景を描き、他の部員たちが人物を肉付けし、

最後に部長が「らんらんとした目」――相手を射貫くような眼光を描き込んで完成だ。



 アタシの担当は、専ら『枠線』だった。  

一度、可愛い猫を描いてみたのだが、部員全員から

「このゴブリン、毒耐性高そうですね」と真顔で批評され、アタシの芸術センスは

「あまりに天才すぎて我々人類には早すぎる」と判断された結果である。



 そして、(事件)はアタシが入部して四作目の脱稿を控えた、金曜日の午後に起こった。



「――そこまでです。動かないで」


 バァン! と扉が乱暴に開かれ、銀の腕章を巻いた風紀委員たちが雪崩れ込んでくる。


「学園内でいかがわしい思想を流布する絵画を制作することは、校則違反です。

この作品は没収、以後のクラブ活動は無期停止とします!」


 風紀委員の一人が、描きかけの原稿を無造作に掴み上げた。リズが、青白い顔をして立ち上がる。



「待ってください! これは正当な芸術活動です。没収する権利なんて……!」


「黙りなさい。我々は風紀委員長マリア様の名において、

不純な分子を排除する権限を持っているのです」


 風紀委員は、帝国貴族に憧れる地球人の学生だった。

彼らは特権意識に酔いしれ、強引に活動停止の宣言を続ける。



 リズが筋道立てて議論で立ち向かうが、

理屈で勝てないと悟った風紀委員は、ついに魔杖を抜いた。


「ぺらぺらと生意気な……! 力づくで教育してあげます!」


 風紀委員の1人が呪文を唱え始める。 

リズも反撃の呪文を唱えようとした。


 しかし、その時……。  

風紀委員が懐から小さな銀のオーブを取り出し、高く掲げた。



「我々に攻撃など無駄だ! 見よ、マリア様より拝領した秘宝――

『マジックキャンセラー』がある限り、この部屋で魔法は使わせないぞ!」


 リズの指先に集まった魔力が、音もなく霧散していく。  

一転して、部室内は絶望的な沈黙に包まれた。

ご愛読ありがとうございます!


せっかく見つけた安住の地(?)マンガクラブが、まさかの強制活動停止!?

風紀委員が持ち出した謎の秘宝「マジックキャンセラー」の前に、

魔法が封じられたリズたちはどうなってしまうのか……。


そしてサーヤだけが気づいた、そのオーブの「拍子抜けな正体」とは!?


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