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38.最強の委員長が迫る!ちびっ子2人組が大ピンチ

 S組の教室が、一瞬にして真空状態のような静寂に包まれた。


 緑の髪を鋭く揺らし、スローモーションのように高々と上げられた右手。  

指先には微塵の震えもなく、その角度は天を突く刃の如し。  


 ――間違いない。アタシが物理法則を書き換える「コピペ」を繰り出す際の、

あの予備動作と寸分違わぬ黄金角。


(……この女、やる気ね!)



 アタシは椅子の脚を指先で弾き、瞬時に四次元演算を開始する。  


 マリの前に展開すべきは、反射属性を付与した三重の幾何学結界か、

あるいは空間ごと捩じ切って攻撃を無効化するか。  



相手の魔力出力が跳ね上がる。眼鏡の奥の瞳が、獲物を捕らえる猛禽のように鋭く光った。


「――来るわ!」


 アタシが叫び、教室の時が止まった、その刹那!



「ねーーーー、キミたち、アタシと握手してくれない!?」


 掲げられた右手は、真空を切り裂く必殺技ではなく、

真っ赤なハートを散らしながらアタシたちの眼前へ差し出された。


「「「…………は?」」」


 振り上げた拳……もとい右手の下ろし所に困るアタシたちを尻目に、

委員長は野獣のような荒い息を吐きながら、無理やりマリの手を鷲掴みにした。



「かわいい、かわいいわ、ちっちゃな手! 

ああ、この白さ、この弾力、もう最高! 吸い込みたいッ!」


 こいつ、刺客かと思ったらただの重度の変態だった。  

緊迫した空気が一瞬で「事案」のそれへと変わり、アタシは引きつる顔でアカネに念話を送る。


(おいアカネ! この女の正体を教えなさい! )



『報告します。名前はセシリア・ルビー。

帝国司法局No.2の娘にして、兄は三つの方面軍が奪い合う超エリート。

本人も学園随一の魔術使いで、既に三重魔法まで会得しています』


(いやいや、目の前にいるのはただの変態だ。

使えないマザーシステムね! やばい、次はアタシの手を狙ってる!)



「と、トウマ、今日は一緒にお昼をたべようか!」


 アタシは全力で駆けると、怯えるトウマの席へ滑り込んだ。  

突然の厄災の接近に、トウマの顔が引きつり、老人の顔へと変化する。


(ごめんね。トウマ。でもあんたの犠牲は無駄にはしないわ)


 なぜか委員長はトウマには近づいてこない。

ここが、今この教室で唯一の聖域エスケープゾーンになりそうだ。

アタシはその後の昼休み中、トウマの背後に張り付いて離れなかった。


 この日以来、アタシとマリはトウマと急接近していくこととなる。

その結果、意外な方向へとアタシ達の関係は発展していく。



 その夜。アタシの部屋ではキャリー、エリカ、ユーリが集結し、

『地球潜入作戦』会議が開かれた。


「で、みんなこれまでの成果を教えてちょうだい。

ウルティマウェポンの件、何か糸口は見つかったのかしら?」



「アタイから話すぜ。……アタイは裏社会のボスから、とんでもない怪物の噂を聞いた。

この地球には、『ヤマタノオロチ』っていう竜種の末裔がいるらしいんだ」


「なに、そのファンタジーな話!ウルティマウエポンとは違うけど

面白そうだから聞かせてよ」


「竜種って言っているが、正体はシリウス人らしいぜ。

しかも身体強化がバグってて、戦艦の主砲を片手で止めるらしい」


「「「嘘だーーー!!」」」


「絶対にないわな」

「また、エリカのホラが始まった」



 一斉にツッコミが入る。

だが、キッチンで紅茶を淹れていたアカネが、かつてないほど厳かな声で補足した。


「エリカ様の話は、真実です。

その者の名は、帝国の禁忌目録にも記されています……。


 八つの恒星を飲み込み、その鱗はオリハルコンすら凌駕する絶対硬度。

かつて銀河連邦の艦隊を単騎で壊滅させ、時の皇帝に『生ける天災』

と言わしめた、いにしえのシリウス人、その最後の生き残り――」



 アカネの澱みのない解説に、部屋の空気が一気に張り詰める。  

アタシも息を呑んだ。そんなバケモノが、この地球に潜伏しているというのか。


「……そ、それで? その『生ける天災』は今どこにいるのよ?」


 アタシの問いに、アカネは眼鏡の奥の瞳を僅かに細め、淡々と続けた。


「はい。現在はネオ歌舞伎タウンにて、『八頭やず』という源氏名で

ホストのトップを務めているという情報があります」



「「「………………そりゃないわーーーーー!!!」」」



 アタシ、エリカ、キャリー、ユーリの声が完璧に重なった。


「なによそれ! 銀河を滅ぼすバケモノが何でシャンパンコールしてんのよ!」

「絶対それ別人だろ! 名前がそれっぽいだけだろ!」


 ユーリとエリカの激しいツッコミを無視して、アカネが平然とおかわりを注ぐ。


「ホストの話は事実です。しかし、それは仮そめの姿。

帝国に恨みを持っている存在ですので、うまくいけば仲間にできるかもしれません」



「分かったわけど、アタシそういうの苦手、ホストはアカネに任せるわ。

次、ユーリ行きなさい」


 ホスト話に脱力したアタシを横目に、

ユーリがメガネを外し、テーブルに置いた。

その真剣な表情に空気が引き締まる。


「次は僕ね。はい、これ見てよ」


「それ、あんたがしてた怪しいメガネじゃん」


「いいから、二代目もかけてみて」


アタシは顔が小さいから、メガネ苦手なのよね。

って、かけたら、すごいのが見える。



「「 ユーリの体に数字がついてるわよ、何の意味があるの? 」」


「それはボクの魔力量……これ、魔力のスカウターなんだ。

イワサキ博士からもらったんだよ」


「あんた、博士に会ったの!?」


「その末裔の、別の博士にね。戦って勝ったら勝手にくれた」


「でかしたわ、ユーリ! 」


「ついでに博士から聞いたんだけど、

ウルティマウェポンの部屋の『鍵』は、

トウマっていう甥っ子が持ってるらしいんだよ」



( やっぱり! )


 その言葉に、アタシの目がギラリと光った。


「アカネ、これでターゲットは決まったわね」

「はい。ターゲットが決まれば、あとはやりようがあります」


「えへへ、誰かさんよりも貢献したね」


 ユーリが勝ち誇ったようにエリカを見る。

まさかのユーリの圧勝にエリカはいじけて、

ティーカップでシャンパンタワーを作り始めた。

 


「で、最後はキャリー。あんたは?」


「はい。私は図書館の中に『ダンジョン』を発見しました。

ある場所に空間の歪みがあって、四次元のダンジョンに繋がっているようなのです。

ただ、場所が確定できなくて……」


 バラバラだったピースが、音を立てて繋がっていく。  

トウマが持つ『鍵』、そして図書館の『歪みの扉』。


「さすがはキャリー、完璧な仕事だわ。

……なるほどね。トウマを捕まえて、その鍵で図書館の隠し扉をこじ開ける。

この最短ルートで決まりね」


「アタシ達の目的が定まった……。

そうなると、むくむく湧いてくる海賊魂。」


「明日トウマをさらって吐かせましょう。

毒入りのケーキを食べさせて、うふふふふ」



「エリカ、変なナレーションと、

似てない人まねは止めてください!

私なら、激辛ケーキを食べさせて吐かせます!」


「いやいや、ボクならくすぐり地獄で……」


「「「うふふふ」「えへへへ」「けけけけ」」」



 暗い部屋に響く、邪悪な笑い声。  

ただでさえビビりなトウマにこんな連中をけしかけたら、

精神が崩壊して使い物にならなくなる。


「……アカネ、アタシたち二人でやるしかないわ(慈悲)」


「お任せください。

この『強制睡眠学習枕』で、ゆっくりトウマさんを洗脳しましょう」



 < アカネ、あんたまで…… >



 ……トウマ君、ご愁傷様。  

うちの3バカは置いておいて、このメイドに狙われたら逃げられない。

アタシは月面の人工空を眺めながら、静かに彼の冥福を祈った。

 ご愛読ありがとうございます!


 S組の委員長……刺客かと思いきや、ただの「重度の可愛い子好き」でした。

帝国軍の未来が少し心配になりますね。


 さて、ついに「鍵」と「扉」の場所が確定しました。

ターゲットは、今や老人のような顔になってしまったトウマ君。

果たしてサーヤ(と洗脳枕)は、トウマから鍵を奪えるのか!?


次回は、明日21時10分ごろに更新予定です。


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