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37.一番強い奴、前に出なさいよ

 S組に昇格して最初の登校日。  

教室の扉を開けた瞬間、そこは別世界だった。


 周りはみんなアタシ達と違う制服を着ている。  

帝国貴族の血筋を証明する、深い緑のブレザー。

メディも一応は一族の末席としてその緑を纏っているが、アタシとマリは違う。


 地球の上級貴族であるマリの胸には金の星、

下級貴族と偽っているアタシの胸には銀の星が施されているが、制服自体は普通の紺色だ。

この緑の海の中で、アタシたちの紺色は嫌でも目立つ。



「やっぱりチビはチビだな。まぐれで勝ったからって調子に乗るなよ」

「だいたい、トウマが腹痛にならなきゃ、お前みたいなドブスチビは今頃病院のベッドだぜ」


 席に着くなり、モブ貴族たちが教科書通りの罵倒を投げかけてくる。  

アタシは内心で鼻で笑った。

四次元宇宙の基準で言えば、アタシは銀河系トップクラスの美少女なんだけど?


 クラス全員がアタシ達を見下して笑っている。

 ……いや、二人だけ違った。  


 一人は、月面でのトラウマが蘇っているのか、青白い顔でガタガタ震えているトウマ。  

そしてもう一人は、ポニーテールに眼鏡を光らせた、いかにも『委員長』という風貌の女子。


彼女だけは、値踏みするようにアタシの魂の出力を観察しているようだった。



「――では、新しく仲間になった三人、挨拶をしてください」


 担任に促され、まずはメディが壇上へ上がる。


「頑張れ、落ちこぼれ」というヤジが飛んだが、

メディがキッと前方を睨んだ瞬間、空気が凍りついた。  

視線の先には、先日彼にボコられた学生たちが固まって座っている。


「おい、あいつ、ヤバいオーラ出してるぞ……」

「いつの間にあんな眼をするようになったんだ?」


 笑い声は、瞬く間にひそひそ声へと変わった。



「次、サーヤ・シェンカーさん」

「はい」


 アタシは壇上に上がると、まず全員をゆっくりと見渡した。  

少しだけ、かつて略奪の限りを尽くした『二代目海賊』のトーンを混ぜて、言い放つ。


「ねぇ。この中で一番強い人はだれ? ちょっと、前に出てきなさいよ」


 可愛らしい女の子の挨拶を期待していた教室が、一瞬で静まり返った。  

ドスの利いた、背筋を凍らせる低い声。  


「……っ!? こ、こいつです」


 なぜか男子たちが敬語になり、指差した先には小さくなっているトウマがいた。


「なーんだ、あんたか。この間は世話になったわね。

こんど、ゆっくりと『お礼』をしてあげるわ」


 ――ガーーーーン。  


 トウマは絶望に顔を歪め、膝を抱えて震え始めた。


「おい、イワサキ、お前は剣技大会No.1 なんだからビビるなよ」

「ただのチビだろ、楽勝だよ」


と周りが励ましているが、本人は知っている。

アタシが指二本で世界を終わらせられる存在だと。



「なーんて、うそです。みなさん、仲良くしてくださいね。えへっ」


 アタシなりに最大限可愛く、首を傾けて微笑んでみた。  

だが、その瞬間。


(※ただし、クラスメイトの視点では、

獲物の喉笛を狙う死神の不敵な笑みにしか見えていなかった)


「「「ひぃっ!!」」」  


 なぜか最前列の生徒たちが、椅子ごと後ろにひっくり返った。


 そんな中、やはりあの委員長風の女子だけが、

頬をあからめながらアタシを見つめていた。なによ、熱でもあるの?



 最後にマリが「足手まといにならないよう精進します」と、

聖女のような完璧な挨拶を披露した。


「「「よかったー、こっちはまともだー!」」」  


マリには割れんばかりの拍手が送られる。

なぜかアタシの時と違って、空気が暖かい。


最初、イジメてやろうと思っていた女子達も

アタシの後なので、和やかになり、マリに拍手を送っていた。



(な、なによ! アタシの時と全然反応が違うじゃない! これが集団イジメなの?)


 ショックを受けたアタシは、マリの背中に隠れるようにして壇を降りた。  

途端、教室中の生徒が防御結界を展開し、一斉に身構えた。


「ヤバい、あいつ、伊集院の背後を盾にして狙撃のタイミングを計ってるぞ!」

「死ぬ! 視線を合わせるな!」


 ひどいわ。アタシ、ただ悲しかっただけなのに。

そんな挨拶が終わり、アタシのS組生活が始まった。



 ――そして昼休み。


「ちょっと、いいかしら?」  


昼休みになったタイミングで、S組の委員長がアタシ達の席に近づいてきた。

いよいよ裏ボスの登場だ。


途端に教室の空気が変った。ざわつく学生たち。


委員長というかぎりは、トウマよりも強いに違いない。

つまり、この学園の1年生で1番強い学生だ。

マリの実力では引き分けでいいところかもしれない。


アタシなら余裕で潰すことができるが、このクラスの親族は

帝国軍人、しかも幹部の連中もいることから、派手に踊ると、身元がバレてしまう。

バレないギリギリで勝負になるかもしれないわね。



 委員長は眼鏡をきゅっと上げると、右手を高々と上げた。  

その角度、指の曲げ方。


……それはアタシが物理法則を書き換える時、

つまり「コピペ」を繰り出す時のポーズと瓜二つだった。


(こいつ……まさか、アタシのスキルを盗んだ!?)

 ご一読いただきまして、ありがとうございます!


 ついに始まったS組生活。制服の色からして差別化されていますが、

サーヤの「挨拶」で一気に空気感が固定されましたね(笑)。


 本人は可愛く振る舞っているつもりなのに、

周囲は**「首を飛ばされるカウントダウン」**を聞いているかのようなこの温度差。

トウマ君、ついに学友からも見捨てられそうになっています。


 そして気になるのが、眼鏡の委員長……。 アタシのスキルを盗んだ? それとも……?


 次回は明日の21時10分ごろの更新予定です。


 第38話『四次元のポーズ? 委員長の秘めたる情熱』

教室の空気を一変させた委員長の「右手」が、サーヤに襲いかかる(?)!


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