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36.魔法競技会 ~天才剣士 VS 欲望姫 最後に笑うのは誰だ?~

 午後。魔法科学園の競技場は、異様な熱気に包まれていた。  


 クラス対抗戦の最終種目、通称『フライリレー』。  

浮遊魔法と隠蔽を組み合わせ、100キロの距離を5人で繋ぐこの競技は、

軍関係者が最も目を光らせる「実戦」の縮図だ。



「S組が先頭、成績順にスタート位置を下げる。……相変わらず、露骨な差別だわ」  


アタシ、サーヤは観客席でマリと並んで座っていた。  

アタシたちは最後に行われる『魔術コンテスト(武闘会)』のために温存。


 レース開始。S組が順調に飛ばし、2年生のケイとリズがいるA組がそれを追う展開。

だが、その平穏は、第4ランナーにバトンが渡った瞬間に崩壊した。



 ――ドォォォォン!!


 空気が爆ぜるような音が響き、最下位のF組のエリアから「何か」が飛び出した。  

巨大モニターに映し出されたのは、あまりの速度に輪郭がブレた、

つつましく飛んでいるつもりのキャリーだった。  


そして、最終ランナーの……エリカ。



「ヒャッハー! 風が止まって見えるぜえええ!」


 悪ノリしたエリカが、浮遊魔法というよりは「空間を蹴る」ような

異常な挙動で、先行する全クラスを文字通り「置き去り」にした。

S組の優等生たちが、その衝撃波だけで木の葉のように叩き落されていく。


 貴賓室の軍人たちが立ち上がり、絶叫する。


「なんだあのスピードは! 偵察機より速いぞ! どこの国の最新兵器だ!?」


 その時。観客席の隅で、新調したメガネ(スカウター)を

指で押し上げていたユーリが、ガタガタと震えだした。


「……う、嘘だろ。ボクのスカウター、測定上限は5万のはずなのに

……アイツに向けた瞬間、液晶が真っ赤に焼けて『Error 999999』って……。

アイツら、本当に同じ人類なの!?」


 アタシは頭を抱えた。


「……あいつら、何してんのよ」


「サーヤ様、申し訳ありません。……すぐに対処します」  


隣のアカネの目が、見たこともない冷徹な光を宿した。


 直後、場内アナウンスが流れる。


『――F組、失格! 魔法に不正な加速術式が混じっていたため、全員退場!』  


 アカネが軍のメインサーバーをハッキングし、データを書き換えたのだ。  

同時に、エリカがいた場所から人影が消えた。


アカネが『時間結晶』を強制展開し、彼女を月面の修理ドックまで

一瞬でパージ(転送)したのだ。……南無。


さようならエリカ、キミの(神がかった)アホな飛行は、

永遠に人々の記憶に‥‥‥、記憶から削除するわよ。



 そして。気を取り直して始まった最終種目『魔術コンテスト(武闘会)』。  

バトルロワイアル形式のこの試合、S組のリーダー・トウマは必死だった。


(……怖い。あのC組のチビっ子が、こっちを見てる。

さっきの失格騒ぎも、あの子の仲間だろ!?)


 トウマは恐怖を隠しながら、A組を瞬殺。  

先にA組を倒し、上のクラスから順番に対峙する作戦を立てた。

すべては、C組と当たるのを最後にするための時間稼ぎだ。



「うちのエースは、マリで決まりね。男子のメディ、あんたは肉壁になりなさい」


「えっ、ボク前衛!?」


アタシ達はS組と逆に、下のクラスから駆逐し始める。

作戦は、嫌がるメディを盾にし、マリの強力な二重魔法が炸裂する

オーソドックスな戦法だ。


B組でマリの二重魔法を防げるものなどいない。

危なげなくB組を葬り去るC組。

そして残ったのは、S組とC組だ。


 トウマの作戦では、ここで余裕を見せてC組に勝ちを譲れば

全てが終わるはずだった。  

だが、トウマの目論見はボロボロと音を立てて崩れていく。


 貴賓室から地球方面提督が立ち上がったかと思うと、

その場でルール変更をしたのだ。



「素晴らしい! 予定を変更し、ここからは個人勝ち抜き戦とする!

先に3勝した方の勝ちだ!」


 トウマの顔が、さらに土気色になる。  

大会運営は、さすがに焦ったが誰も提督には逆らえなかった。


第一戦。

C組の先鋒はメディ。相手は女子生徒だ。

少しは検討すると思ったが、あっさりと火炎魔法で敗退してしまった。


第二戦。

C組の次鋒はマリ。

相手の火炎魔法を、こともなく氷魔法で防ぐと、

風と水の二重魔法で竜巻を作り出し、相手を葬り去った。


第三戦。

ここでもマリの無双ぶりが発揮される。

相手は強化魔法で肉弾戦を仕掛けてきた。


マリは自分に風魔法をかけて、さらりと攻撃をかわし、

氷魔法で足止めをした後に雷撃を放った。

第二戦に続き、瞬殺だ。


C組のマリがS組を瞬殺していく。

今年の協議会は番狂わせだらけだ。


「さすが、伊集院大佐の娘さん」

「大佐の魔力にも劣らない天才だ」


会場が地球貴族マリの活躍に盛り上がり始めた。


「あれが伊集院の。帝国貴族に負けぬ魔力じゃないか」


提督も部下の娘が活躍していることを知り、嬉しそうに周りに漏らした。


だが、次でマリの快進撃、いやC組の快進撃が終わることを

会場の誰もが知っていた。

さっきの剣術大会で優勝したトウマが登場したからだ。


そのころ、アタシは必死に考えていた。


(……どうしよう。マリがあんなに頑張っちゃったし、

アタシも頑張ると瞬殺しちゃうし、目立つとアカネに叱られる。

……ここは、引き分けがベストよね?)


トウマはトウマで、月でサーヤに力の差を見せつけられているので、

怖くて何もできない。早く降参したい。


 アタシはジリジリと距離を詰め、相手の隙を探るふりをした。  


だが、トウマの視点では、こう見えていた。


(……来る。あの子、一歩も動いていないのに、俺の『死の未来』が100通りくらい見える……!

あの微笑み、間違いなく俺の首をどう飛ばすか計算してる暗殺者の目だ!)



「F組のちびっ子、怖くて固まってんのか、うへへへ!」  


観客席から聞き覚えのある、下品なヤジが飛んだ。

月面から逃げ帰ってきたエリカだ。


 瞬間、アカネが指を弾き、エリカを再び月面へ(今度は大気圏外へ)飛ばした。

だが、アタシの堪忍袋の緒が、音を立てて切れた。

アタシの瞳に、かつて銀河を恐怖させた『四次元海賊』の冷酷な輝きが戻る。



「……殺気!? うわぁぁぁぁ!」


 トウマは絶叫し、腹を押さえてうずくまった。


「す、すみませーん! お腹、お腹が痛いです! 棄権します!!」


 会場中が、シーンと静まり返った。  

最強の天才トウマが、何もしていない少女を前に、戦わずして逃げ出したのだ。


「ゆ、優勝、C組……」  


審判の困惑した声が響く。  アタシたちは静まり返った表彰台に立った。


「……何よ、この後味の悪い勝ち方。まあいいわ。とりあえず、来週からはS組昇格ね」


 アタシは不敵に笑った。  

不本意な形だが、これで「イワサキの遺産」には一歩近づいた。  

この学園を、アタシの欲望どおりに染め上げる日は近い。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

クラス対抗戦、終わってみればC組の(物理的・精神的)大勝利でした。


……エリカ。 彼女の勇姿と、アカネの無慈悲なパージ(強制転送)は、

どうか皆様の心の中にだけ留めておいてください。


そして、ユーリが必死に手に入れたスカウター。

まさかエリカに向けた瞬間にエラーを吐いて爆発するとは……。

四次元組の基準値、恐るべしです。


さて、不本意(?)ながら優勝をもぎ取ったサーヤたちは、

来週からついに**エリート揃いの「S組」**へ昇格します!


果たしてサーヤは、目的の「ウルティマウェポンに通じるカギ」

聖遺物マンガ」へ辿り着けるのか? ……まあ、無理そうですね。


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