31.【閑話】銀髪の狙撃手と砂漠の花(前編)
「ボクの名前は、ユーリ・ロージャー。四次元海賊団の砲手兼バフ担当。
……あ、今はライセンス剥奪中のプーだけどね」
居心地の良かった四次元を追い出され、ボクはいま、三次元の「地球」に滞在している。
この星は海が豊かだけれど、魔法スキルの技術が驚くほど低い。
何でも手作業。本当に、不便で平和な田舎だ。
「一年経ったら、このドッグで会いましょう」
サーヤは目的のために学園へ行き、キャリーとエリカのコンビはどこかへ。
ロク爺は月に残って船の修理。
ボクは一人、ホバーバイクを転がしてアフリカの大地へ向かった。
目的はピラミッドという超古代遺物の調査だ。
面白い武器でも隠されていないかと思ってね。
灼熱の太陽が照りつけるカイロの市場バザール。
そこでボクは、萎れかけた花を売る少女――エマに出会った。
「ねぇ、お兄ちゃん……。このお花、買ってくれない? 」
泥だらけの服を着た、まだ六歳かそこらの少女――エマ。
その瞳は、絶望に慣れきったような虚ろな色をしていた。
「ボク、お花には興味ないし……そもそも女の子だよ」
「えっ……? ご、ごめんなさい、お姉ちゃん……。
でも、これを全部売らないと、今夜も叩かれちゃうから……」
彼女の細い手首には、無数の痣があった。
ボクはため息をついた。ボクだって孤児院育ちだ。
こういう「景色」には、四次元にいた頃から人一倍鼻が効く。
「一輪だけ、もらっておくよ。お釣りはいらない」
小さな銀貨を一目置くと、ボクはこっそりと自作の「通信ボタン」を
彼女のポケットへ忍ばせた。
「エマちゃん、困ったらそれを押して。
辛い時には助けてあげるから。黙っておけば大丈夫さ」
その数時間後。ボクが市場を離れた後の裏路地で、悲劇は動いていた。
「エマ、おいで。お前の新しい主人が決まったよ。
よかったわね、次は花売りをしなくていい場所だよ」
親代わりの女は、冷酷な笑みを浮かべてエマを帝国軍の男に引き渡した。
エマが異変に気づいた時にはもう遅かった。
彼女は無理やり布袋に詰め込まれ、軍用車両へと放り込まれた。
「……よし。魔力の高い『検体』の確保完了だ。ピラミッドの研究所へ運べ」
女は男から投げ渡された金貨の袋を、さも愛おしそうに撫でていた。
――夜。砂漠のキャンプでくつろいでいたボクの元に、通信ボタンの悲鳴が届いた。
「……始まったか。やっぱり、この星の大人は信用できないね」
ボクは愛車に飛び乗り、アクセルを全開にする。
砂塵を巻き上げ、夜の静寂を切り裂いて、銀色の閃光が疾走した。
エマちゃん、待ってなよ。
ボクが、この世で一番残酷な方法で助けてあげるから――。
前編をお読みいただきありがとうございます!
エマの窮地に、またまた『不機嫌な海賊』が動き出しました。
ユーリが手に入れる『謎の新アイテム』とは……?
ブクマしてお待ちくださると、とても嬉しいです。




