28.(後編)エバーグリーン黒竜事件~その②
滝での惨劇を目の当たりにしたアタシたちは、マリの家へと向かった。
「家」と呼ぶには、それはあまりに規格外だった。
地球の上級貴族である伊集院家の本邸は、広大な敷地に鎮座する純白の巨大な古城。
門をくぐってから玄関に辿り着くまでに、馬車で10分を要するほどの威容である。
立ち並ぶ精緻な彫刻、虹を写す大噴水。
漂う「カネの匂い」にアタシのテンションは上がりかけるが、
隣を歩くマリの横顔を見て思いとどまった。
彼女の表情は、いまだ鉛のように重いままだ。
吹き抜けの広大なロビーに入ると、マリの両親が出迎えてくれた。
父親は筋骨逞しい現役のエリート軍人で、その眼光は鋭く力強い。
対照的に母親は、マリと違い美しい翡翠色の髪を持ち、
まるでお姫様がそのまま年を重ねたような優雅な女性だった。
「サーヤちゃん、よく来てくれたね。
君の噂はケイ(兄)とマリから毎日聞いてるよ。
会えるのを楽しみにしていた」
「うちの子と仲良くしてくれてありがとう。
あなたのような子がそばにいてくれて、私は本当に安心なのよ」
二人の言葉には、社交辞令ではない本物の慈愛がこもっていた。
アタシが「いえいえ、アタシこそマリさんにはお世話になっちゃって」と、
珍しく縮こまって挨拶していると、父親の鋭い目がマリの異変を捉えた。
「マリ……何があった。その顔は、ただの旅疲れではないな」
「父上……滝の公園に、黒竜が現れたのです」
マリが声を震わせながら語る惨状。
領民が食い殺され、それを帝国貴族が「ペットの遊び」として放置して
去ったという事実に、父親の表情が、静かな、だが凄まじい怒りに染まっていく。
「マリ……お前の力なら、抵抗できたと思うが? 」
「……いえ。それが帝国貴族の飼い竜だと分かった瞬間、
私は……何もできませんでした。悔しくて、情けなくて……っ」
大粒の涙をこぼす娘の頭に、父親は大きな手を置いた。
「……無理もない。
だが、領民を食われて黙っている領主など、伊集院の名にはおらん」
彼は軍服のボタンを力強くはめ直すと、鋭い足取りで玄関へと向かった。
「あなた、大丈夫なのですか? 」
不安げな母親の問いに、父親は振り返らずに答えた。
「今から軍の本部へ行ってくる。
そのような危険な竜を領内に入れた事実確認と、厳重な抗議を申し立てる。
……案ずるな、これは領主としての責務だ」
車を呼び、嵐のような気迫で出かけていく父親の背中。
アタシはその背中を見送りながら、嫌な予感を感じていた。
正義が通じる相手なら、最初から竜を放し飼いになんてしない。
アタシは、そっと隣のアカネに視線を送った。
「……アカネ、準備しておきなさい」
「承知いたしました。……最悪の事態(プランB)を想定しておきます」
後編までお付き合いいただき、ありがとうございました!
マリの両親、素敵でしたね。特に父親である辺境伯の
『領民を食われて黙っている領主はいない』という言葉。
本当にかっこいい騎士なのですが……相手はあまりにも傲慢な帝国貴族。
正義を貫こうとする父、涙を流すマリ。
彼女たちの誇りが踏みにじられた時、ついに我らが『四次元海賊』の理性が限界を迎えます。
次回、サーヤとアカネが仕掛ける、
帝国軍のトラウマ級の『お仕置き』と『集金』をお楽しみに!
『帝国貴族、許せん!』『サーヤ、早くやってまえ!』 と思った方は、
ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に**塗りつぶして、
サーヤに魔力を(?)分けてあげてください!
これからも皆様に「面白い」「続き気になる」と思っていただけるように頑張ります。




