2. [4次元] 大花火大会 その① 派手にいかなくちゃね
ビーム砲を撃ち終わって、戦艦 3,000 隻が無防備に近づいて来ている。
こちらが1隻なのを良いことに、完全になめ切っているようだ。
「もうライセンスもないし、遠慮はいらないわね」
「ボク、二代目の『アレ』を見るのは2度目だよ。
どれだけ吹き飛ぶかなー?楽しみだなー 」
後ろの席からボクっ娘ユーリが元気に顔を出した。
「アタシ、絶対に [3次元] なんて行かないわよ。
アタシを怒らせたことを後悔させてやるわ」
「おぉー! 」
「うぁ」
「そうだ」
「よし」
「でも3千隻全部は無理だから、エリカは逃げる準備をお願いね」
「いいぜ。あいつ等を1,000隻まで減らしてくれたら、小惑星まで逃げて見せるぜ」
アカネはそう告げると席に戻り準備を始めた。
「おーけー。次はキャリーね!あの小惑星群で隠れられそうな座標を出して! 」
「はい2代目、H 238 に空洞のある小惑星があります」
間髪入れずにキャリーが答える。
その声を聞いてエリカが座標を合わせ始めた。
「次はユーリ、エネルギーを充填!完了と同時に、敵の中心部へレーザー発射して」
「了解! 10 秒待ってね」
ユーリは嬉しそうに口笛を吹きながらレーザー砲のセットを始めた。
その横でエリカが操縦桿とペダルの最終チェックをおこなっている。
「それにしても久しぶりだな。あいつ等、飛びあがって驚くぞ」
「いやいやエリカ、驚く前に吹き飛んじゃうよ」
「そりゃそうだな(笑)。でも二代目、帝国軍の前でアレを見せちまっていいのか? 」
「大丈夫よ。これから起こることが [3次元] に報告されても、どうせ誰も信じないわ。
それに 30 億ギラがかかっているの。出し惜しみはしないわ」
「確かに常識を超えてるからな。それにしてもまた『30億ギラ』かよーーー笑」
爆笑するエリカの後ろで、キャリーが弾着距離を測っている。
「敵艦隊までの距離は 0.75 光年です」
「サンキュー。じゃあユーリ、盛大に1発お願いね」
―――ユーリはうちの攻撃担当のボクっ娘少女だ。
サイドテールの髪にかわいいピン止めが良く似合う。
普段は半ズボンとフード付きのパーカーを着用している。
彼女は僅か 12 歳にして帝国射撃選手権で優勝。
史上最年少で帝国軍にスカウトされた。
ユーリのスキルは、正確な射撃と強烈なバフ能力。
バフが乗せられたビーム1撃は、戦艦クラス 10 隻を軽く吹き飛ばす。
巨大なビーム砲を備えた戦艦でも、1隻をワンパンで沈めるのは難しい。
あまりにバグりすぎた能力だったため、
幹部は恐れ、その力を最高機密としてしまった。
その後ユーリは訳あって除隊して、この船に乗っている。
ちょっと見、ボクっ子の可愛い少女だが、とても危険な少女なのだ。
今回の敵は 3,000 隻。
ビーム砲は、1回の掃射にエネルギーの10%を消費する。
エネルギーが満タンの場合でも充填しながら5回が限度だ。
しかし、うちの船はパトロール艦との追いかけっこでエネルギーを消耗している。
掃射後に逃げることを考えたら、1回分のエネルギーしか残っていない。
ユーリが1発打ち込んで残りの2,950隻に反撃されては、ひとたまりもない。
そこでアタシの出番である。
最近、船長としての権威が揺らいでいるので、
ここはドカーンと、力の差を見せつけておく必要があるのだ。
「二代目!敵全体の座標を出します……、えっと 360 度ぐるりと囲まれています」
「つまり、四方八方敵だらけってことね」
「攻撃、10 秒後にきます」
敵が撃ってくるのに、キャリーの声は更に弾んでいる。
これから飛び出すアタシの打上げ花火がよほど楽しみらしい。
「問題ないわ。じゃあ、祭りを始めましょう♪ 」
アタシはメインモニターの前に、ゆっくりと歩いていく。
身長120センチぐらいなので、トコトコって感じにも見える。
「二代目、いくよっ! 」
「いいわよユーリ!やってちょうーだい」
「「 30億ギラ!いきまーす! 」」
ユーリがパネルを叩くと、
戦艦の主砲を遥かに凌駕する極太の閃光が放たれた。
ユーリのバフが乗ったその一撃は、光速を超えて空間を削り取り、
直進上の虚空を真っ赤に加熱させる。
その光の奔流を見つめながら、私はゆっくりと両手を広げた。
「さあ……増えなさい」
私の指先が虚空でピアノを叩くように跳ねる。
その瞬間、宇宙という「システム」に致命的なエラーが発生した。
一筋だったはずの破壊の光が、鏡合わせの迷宮のように反射し、
分裂し、増殖していく。
2、4、16、256――。
物理法則が悲鳴を上げ、光の軌跡が網目状に宇宙を埋め尽くした。
それはもはや攻撃ではない。
宇宙そのものを「光」という色で塗り潰す、無慈悲な上書き(コピペ)だった。
キャリーがモニターを見ながら、うっとりしている。
逃げ場を失った3,000隻の戦艦が、次々と光の竜に飲み込まれていく。
厚い装甲が紙細工のように弾け、核融合炉の暴走による白銀の爆炎が連鎖した。
漆黒だったはずの四次元海域は、数千の太陽が同時に生まれたかのような、
直視できないほどの輝きに支配される。
「「「 たまやー! 」」」
ユーリの無邪気な声が響く中、その凄まじい「爆発の華」を背に受けて、
私たちは次元の狭間へと滑り込んだ。
その光は四次元海域一帯の暗闇を隙間なく照らし、幻想的な風景を作り出している。
エリカが操縦桿を限界まで引き、船体が異次元への跳躍を開始する。
視界が『ぐにゃぐにゃ』と歪み、数千の戦艦が放つ断末魔の光が遠ざかっていく。
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