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26.メディの 下克上物語

 メディの父親は、元帝国大学病院の教授だった。


 王族の手術に失敗し、全てを奪われ、

息子であるメディと共にこの地に隠れ住んでいたのだという。


 しかし、アカネの「神業」を目の当たりにしたことで、

男の止まっていた時計が再び動き出した。


「これからは、俺ももう一度人のために役立ちたい。……メディ、準備を手伝え」

「……はい、父上! 」


 手際よく処置をこなす父親の背中を、

メディは眩しそうな、誇らしげな目で見つめていた。


「おじさん、見直したよ。すごい医者じゃない」


 アタシの言葉に、男は照れ臭そうに笑い、アカネに深々と頭を下げた。


「いや、師匠アカネには及ばないよ。……メディ、お前もサーヤさんたちから学べ。

回復術師の可能性をな」


 翌日。学園の廊下でアタシを待っていたメディは、昨日までとは別人のように堂々としていた。


「……おい、サーヤ。これ、父上からの礼状だ。あと……その、昨日はありがとな」


 顔を真っ赤にして礼を言うメディ。

そんな爽やかな空気をぶち壊すように、不快な靴音が響く。

生徒会のエリート特待生グループだ。



「そこ退けよ。不浄な『落ちこぼれ』の分際で」


 リーダー格の男が、メディをゴミを見るような目で見下ろす。


「帝国の面汚しが。回復しかできない無能は、

一生隅っこでカサカサしてろよ。不快なんだよ、ゴミが」


「……ちょっと、あんたたち言い過ぎよ」


 マリが抗議するが、奴らは嘲笑う。


「事実だろ? 杖も持てない回復職なんて、戦場じゃ肉壁にしかならない。

ほら、メディ。お前、ゴキブリより弱いんだろ? 」



「……いいんだ、サーヤ」


 アタシが拳を固めた瞬間、メディが静かに一歩前に出た。

その瞳には、昨日までのような卑屈さは微塵もなかった。


「俺は確かに、攻撃魔法は下手だ。だが……昨日、父上とアカネさんが教えてくれた。

回復術師は、やり方次第で『死神』にもなれるんだよ」


「はぁ? 負け犬が強がるな! くらえ、『ファイヤーボール』!! 」


 エリートが杖を振るう。

だが、メディは杖すら使わない。


「『ライトニング・プレス』――過剰生命エネルギー、強制注入! 」


 瞬間、メディの指先から放たれた極光が、エリート二人を包み込んだ。



「……なっ!? 身体が……動か、ない……っ!? 」


 それは破壊ではなく、過剰な「回復」の信号で脳の制御をパンクさせる「神の毒」。

アカネの術式配合を、彼は一夜にして自分のものにしていた。


「ぎゃああああああ!! 」


 生徒会の面々は、光の中で息もできずに崩れ落ち、廊下で痙攣を始めた。



「……もう、その辺でいいんじゃない? 」


 アタシの言葉に、メディは魔法を解いた。

エリートどもは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにし、逃げ出していった。


「帝国がどう言おうと関係ない。

……俺は、俺の魔法で生きていくよ。ありがとう、サーヤ」


 メディはかつてないほど清々しく笑った。


 アタシはマリから貰ったクッキーをバリバリと齧りながら、満足げに微笑む。



「良かったじゃない、メディ。

……でもあんた、次からはもう少し加減しなさいよ?」


「え……? ああ、そうだな。やりすぎたか」


「そうよ。あいつら、命のスペアを持ってないんだから。

死んじゃったらコピペして生き返らせるのに、アタシの魔力がもったいないじゃない」


「………………は? 」


 メディの笑顔が凍りついた。

その場の空気がマイナス40度まで急降下し、マリが持っていたクッキーを床に落とす。


 アタシは太陽のような笑顔で、真っ青になったメディの肩をポンと叩いた。


「なーんてね! ジョークよジョーク! あはははは! 」



 ……その日、マリとメディの2人間で

「サーヤにだけは絶対に逆らってはいけない」という、

文字通り死ぬほど重い鉄則が刻まれたことを、アタシだけが知らなかった。

後編までお付き合いいただき、ありがとうございました!


メディ、ついに覚醒しましたね! 『回復魔法でハメ殺す』というエグい戦法、これぞ最強メイド直伝の術式です。 そしてラストのサーヤ……本人はジョークのつもりですが、元海賊の倫理観がダダ漏れで、周囲の戦慄が止まりません。


メディ親子を救い、学園のヒエラルキーをぶち壊し始めたサーヤ一行。 ですが、これで黙っていないのがエリート揃いの生徒会。 次回、さらなる強敵がサーヤたちの前に立ちはだかります!


『メディ、カッコよかった!』『サーヤのラストの一言に震えた……(笑)』 と思ってくださった方は、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に**塗りつぶして応援いただけると非常に嬉しいです!

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