24.入替試験は大騒ぎ
「おう、ねえちゃん。オレっちを呼び出したのはあんたかいな?」
アタシの口が、勝手に関西弁を喋っている。
意識はしっかりあるのに、身体の操縦席に別の誰かが座っている感覚。最悪だ。
「はい。あなた様には、サーヤ様の学力を限界まで引き上げていただきたいのです」
アカネが冷静に(というより嬉しそうに)答える。
「うわーー、このちびっ子、けったいな精神力しとるな。
頭の中、カネとケーキしか入っとらんで! 」
( ちょっと! 誰がちびっ子よ! っていうかアンタ、アタシでしょ!? )
アタシは脳内で叫んだが、その声は誰にも届かない。
「……ま、ええわ。オレっちと同化すれば、試験なんて楽勝や。
知識を脳みそにブチ込んでやるさかい、覚悟しときや! 」
それからの数日間、アタシの人生で最も濃密(かつ意味不明)な時間が始まった。
アカネが持ってきたのは、究極のドSアイテム**『睡眠学習枕・改』**。
「なぁ、寝るなよ。絶対に寝るなよ! 」
「今から魔法論理の初歩を朗読するぞ。しっかり復唱しろよな! 」
寝ようとすると枕から直接脳内に、おっさん臭い関西弁と魔法式が響き渡る。
眠る瞬間こそが最大の学習効率を生む――とかいうアカネの理論のせいで、
アタシは一週間、一睡もさせてもらえなかった。
そして迎えた、試験当日。
アタシの意識がはっきりと戻ったのは、最終科目『魔法歴史年号』の直前だった。
隣の席のマリが、ガタガタと震えながらアタシを見ていた。
「今日のサーヤ……別人のようにキレっキレね。
さっきの数学、ペンの走る音が教室中に『銃声』みたいに響いてたわよ…… 」
「……えっ、覚えてない」
気がつくと、アタシは究極の集中状態、いわゆる**『ゾーン』**に入っていた。
一週間不眠不休で知識を詰め込まれ、謎の関西弁と融合したアタシの精神は、
すでに人を超えていたらしい。
「こらっ! そこのシェンカー!
なにをさっきから机の上に立ち上がって叫んでいるんだ! 早く座って解答を書け! 」
試験官の怒鳴り声で、アタシは自分が机の上で仁王立ちしていたことに気づいた。
全校生徒の視線が、アタシの短いスカートから伸びる生足……ではなく、
その殺気に釘付けになっている。
「……失礼。ゾーンのまま始めます! 」
椅子に飛び降り、ペンを握った瞬間、脳内にデータが溢れ出す。
<問題:帝国首都がアメリアに移った年を答えよ>
「こんなのバリバリよ! 『バリバリだぜ、ロックンロール696!』……解答:696年! 」
書き殴る振動で机がガタガタ揺れる。 そして、ついにその時が来た。
<問題:エロワード王がプレアデスを併合した年を答えよ>
「これは……あれ? ど忘れ……」
一瞬、思考が止まる。
その時、脳内の関西弁がドスの利いた声で囁いた。
(おい、ねーちゃん。顔はやばいよ、ボディにしな! や! )
「……そうだ! 『顔はヤバい(8)よ! ボディ(1)にしな(4)!』」
アタシは無意識に、その暗記用のフレーズを教室全体に響き渡る怒号で叫んでいた。
静まり返った教室。試験官は恐怖で一歩下がり、隣のマリは鉛筆を落とした。
アタシの解答用紙を見た試験官が、引きつった笑みを浮かべて絶句している。
そこには、全問完璧な回答が、解答欄を突き破りそうな筆圧で――
まるで血文字のように書き殴られていたのだ。
「……そこまで。ペンを置いてください。
……あと、シェンカーさんは後で指導室に来るように」
試験終了の合図。
アタシは真っ白な灰のように燃え尽き、椅子に崩れ落ちた。
やった。やりきった。これで一攫千金だ。
だが、廊下に出たアタシを待っていたのは、賞賛の嵐……ではなかった。
「おい、見たかよ。あいつ、本当は伝説の総長だったんだぜ…… 」
「可愛い顔して、『顔はやばいよボディにしな』って……完全にプロの犯行だろ…… 」
ひそひそと囁かれる、かつてないほど「敬意を込めた」恐怖の視線。
「……なんか、アタシの評判があらぬ方向に爆走してる気がするんだけど? 」
すると、マリが遠巻きに、壊れ物を扱うような手つきでアタシの肩を叩いた。
「サーヤ。……ちょっと言いにくいんだけど、
もうあなたのこと、皆が**『爆走のスケバン・サーヤ』**って呼んでいるみたい。
……あ、私からは何も言わないから、命だけは助けてね? 」
「ちょっとマリ! アンタまで何を……! 」
F組からC組への昇格よりも早く、アタシは『キャンデー姫』から、
恐るべき新称号へと強制昇進させられていた。
アタシの学園生活、これ本当に大丈夫なの……!?
「後編までお付き合いいただき、ありがとうございました!
……はい、サーヤがやってくれました。
まさかの『顔はやばいよ、ボディにしな』発言。
本人は必死に年号を思い出していただけなのですが、
周囲から見れば完全なガチ勢の威嚇ですよね。
天才海賊、まさかの学園デビューが『スケバン』になってしまいましたが、
ここからC組での波乱の生活が始まります!
今回のエピソード、『笑った!』『スケバン・サーヤ最高!』
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面白いな、続きも読みたいな、と思っていただけるよう頑張りますので、
これからもよろしくお願いします!




