23.入替試験 はじまる
魔法科高校に編入して、あっという間に二か月が過ぎた。
朝起きて学校へ行き、勉強して帰って寝る。
息つく暇もなく次の日が訪れては過ぎていく。
眠気と疲れ、回復したらまた疲れと眠気。
こ、これが[3次元]の時間の流れなのか……?
あまりにも早すぎる。
気がつくと老人になるという噂も、あながち嘘ではなさそうだ。
今日は先週末に行われた【小テスト】の結果発表日。
結果を楽しみにしながら朝食のスクランブルエッグを口に運ぼうとした、その時だ。
「やりましたね。おめでとうございます。
私との特訓のおかげで、あなた様の成績はついにDランクまで上がっていますよ」
アカネが満面の笑みでキッチンに入ってきた。 アタシの手が止まる。
「……これから発表なのに、なんでアンタが結果を知ってるのよ? 」
「学校のサーバーに少し潜り込みました。情報の鮮度は大切ですから」
あぁ、そうだった。この子は帝国の英知を集めたマザーシステム。
彼女にかかれば、全銀河で今朝消費された卵の数すら言い当てるだろう。
「あれだけ死ぬ気で頑張ったんだから、当然C組に上がれるわよね? 」
「いいえ。今申し上げた通り、まだ『D組』の実力程度です」
「……あんなにやったのに、まだD組なのーー!? 」
絶望がアタシを襲う。
まぶたが限界までくっつくのを我慢して呪文公式を覚えた夜。
滝に打たれながらの魔法化学式暗記……。
あの地獄の日々を乗り越えて、まだ届かないのか。
「大丈夫です。入れ替え試験は来週。
今のペースではギリギリ届きませんが……
一気にS組まで上り詰める最短ルートがあります。それが『魔法コンテスト(武闘会)』です 」
「魔法コンテスト(武闘会)? 」
「参加資格はC組以上。今のサーヤ様の実力はこれです」
【小テスト結果(平均)】
魔法論理:23/100(F)
呪文暗記:10/100(F)
魔法年号:90/100(A)
魔法算数:70/100(B)
魔法化学:85/100(B)
「ひどい偏りね…… 」
「ええ。ですが、このコンテストで優勝すれば――
まさに**『一攫千金』**。
莫大な賞金と特待生枠が手に入りますよ」
<< 一攫千金!! >>
なんと素晴らしい、魂に響く言葉だろう。
アタシの細胞という細胞がプチプチと音を立てて目覚め、
瞳が『金』の形に光り輝く。
そうよ、アタシはこの時代の秘宝をコピペして持ち帰り、[4次元]で豪遊するのよ!
「やってやろうじゃないの! ラスト一週間、本気出すわよ!」
その日から、学校は試験前のため午前帰宅。
アタシたちの挑戦はここからが本番だ。
帰宅すると、アカネは白衣にインテリ眼鏡、そしてなぜか鞭を手に持っていた。
「サーヤ様に足りないもの。それは自信、そして魔法論理の克服です。
今こそ、これを使う時が来ました」
目の前に置かれたのは、以前アカネが持ってきた【はちまき】という布だった。
デザインはダサいし、頭が締め付けられるからアタシは嫌いだ。
「いやよ。それカッコ悪いもん」
「サーヤ様、これはただの布ではありません。一攫千金のためです、さあ!」
アカネの押しに負け、アタシは渋々はちまきを巻かれた。
「……巻いたわよ。これで集中すればいいのね? 」
「はい。ゆっくりと、精神を統一してください…… 」
言われるがままに目を閉じる。 すると、突然。
ぐにゃりと視界が歪み、脳内を強烈な電流が走り抜けた。
「あれ……? なにこれ、目が回…… 」
アタシの意識が、急速に遠のいていく。
代わりに、アタシの喉を使って、**全く聞き覚えのない「図太い声」**が漏れ出した。
「おう、ねえちゃん。オレっちを呼び出したのはあんたかいな? 」
「…………は? 」
自分の体なのに、自分の意志で動かない。
アタシは、自分という存在を特等席で眺める、ただの観客になっていた――。
「最後まで読んでいただきありがとうございます!
ついに始まった入れ替え試験特訓編。 アカネの持ってきた『はちまき』、実はとんでもない代物でした……。 ラストで現れた『オレっち』の正体とは!?
そして、サーヤの脳内が『カネとケーキ』で埋め尽くされていることが発覚してしまいました(笑)。 次回、いよいよ試験本番! サーヤの身に何が起きるのか!?
本日、1時間後の【22:40】に後編を更新します! 続きが気になる!と思ってくださったら、ぜひブクマや評価で応援いただけると嬉しいです!」




