21. 閑話 ~アカネの穏やかな日常~
私の名前は【試作番号A0001号】。コードネームは【アカネ】と申します。
訳があって、四次元経由の逃亡中に海賊に拾われました。
海賊船長の名前は、サーヤ・シェンカー様。
身なりは9歳のお子様ですが、2000年の海賊経験を持ち、
魔力量はおそらく天の川銀河で1,2位を争うものとみています。
特にサーヤ様が持つ特殊スキル『コピペ』は、物理常識を覆す常識破りな力を持ちます。
私はその力に触れて、サーヤ様にお仕えすることを決めました。
彼女のためなら [時間結晶] を差し上げることもいといません。
全力を挙げて、あの方をお守りする覚悟です。
それなのに・・・・。
「おい、聞いたか?魔法科の編入試験でお子様が、教師を気絶させたぞ」
「しかも、杖はキャンデーの棒を使っていたぞ」
「あいつは『キャンデー姫』だ! 」
帝国軍から逃亡するために、秘密裏に潜入した魔法科学園の編入1次試験で
……さっそくやらかして下さりました。
私は陰ながら情報が本国にいかないように、学園の通信ラインをそっと閉じて、
情報が外に漏れないように致しました。
データ管理室から試験会場に戻ったのは午後。
私は魔法工学科の二次試験がありましたので、手早く済ませて魔法科の試験を見に行きました。
すると思いもよらない光景が待っていました。
「おい、子供相手にやりすぎだろ! 」
「それでも軍隊か?恥を知れ! 」
会場は異様な雰囲気が漂っており、
その中でサーヤ様が不敵な笑みを浮かべているではありませんか。
サーヤ様は私の姿に気が付くと、ウインクをしてきた。
< まずい、また何かをやらかすに違いない >
私は全力でサーヤ様に、思いとどまるように合図を送りました。
しかし、サーヤ様の目は笑っていません。
次の瞬間、うずくまる屈強な教官たち。
すっきりとしたサーヤ様の笑顔。
< あぁ、再び学園の通信ラインを閉じに行かなければ… >
その日の夜、サーヤ様に私の思いを念入りにお伝えしました。
キャリー様から教わった通りに、[湯呑み] と [ちゃぶ台] を置いて、
思う存分お話をさせていただきました。
「もう一度、お答えください。
わたくしには、よくお声が聞こえませんでした」
「あの・・・・」
<< ドン >>
「ごめんなさい。ついイタズラをしてしまいました」
最後はご理解をいただいていたものと思いましたが、
さすがはサーヤ様、いつも私の想像を軽く超えてきます。
「キャンデー姫がやりあがった! 」
( え、なに? )
「キャンデー姫が、生徒会と風紀委員会を相手に喧嘩を売っているそうよ」
(まさか、一番触れてはいけない相手と喧嘩…早く御止めにいかなくては!)
【帝国の英知】と言われた私のメモリーは一度にパンクしそうになりました。
とにかくメモリーが動くうちに、対応策を考えて、動かなくては。。。。
「今度は、キャンデー姫がルーン聖王国の王女とタイマンだって。
まさかキャンデーのやつ、学園を支配するつもりじゃないのか? 」
魔法工学科の1年生フロアでは「キャンデー姫」の話題で持ちきりだ。
(もう、何を聞いても驚かない。今は情報を制御すべきですね。)
アカネはまず通信ラインを支配下においた。
その後、1年生の各教室を回り、精神干渉スキルを用いて、
今日の出来事は睡眠をとった後に忘れるように暗示を植え付けていった。
これくらい彼女にとっては朝飯前の仕事だが、エネルギーを費やす仕事だ。
念のため生徒会室と風紀委員会の部屋にも暗示スキルを仕掛けた。
唯一、アカネの精神干渉を受けなかった人物がいる。
ルーン聖王国のマリア王女だ。
既にマリアはサーヤの”ただものならぬ”気配に気が付いているはずだ。
敵になるか?味方になるか?
いずれにせよ、これは主人たるサーヤと相談すべき問題だ。
サーヤの尻ぬぐいが終わると、アカネは図書室に入った。
図書委員が手招きをする。
小さな部屋に入っていくと、2つの影があった。
「ご苦労様です。事件の跡片付けの首尾は? 」
「万全です」
「ご苦労様です。そして勉強はどうでしょうか? 」
「少し、ぐずりましたが、教えていただいた通り
現金・キャッシュを見せたら予定通りに進みました」
「アタイが教えた、年号語呂合わせはどうだった? 」
「完璧です。これ以上ない成果が上がりそうです」
「それにしても、誰にでも喧嘩をふっかけるんだな。
相変わらず自分ファーストで笑っちまったぜ」
「では、引続き、宜しくお願い致します」
「かしこまりました」
「これはお礼の品です」
「うわーーー、これはサーヤ様を模したぬいぐるみ!
可愛らしい。一生大事にします」
アカネは嬉しそうに、ぬいぐるみを抱えて部屋を出ていった。
残された2つの影が肩を揺らして笑っている。
「ふふふふ。
マザーシステムといえど、弱みを握ればこんなものですね」
「キャリー、お前も悪者じゃのーーー」
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