19.忍び寄る影
「ふぁあーーーー」
「サーヤ、大丈夫?
今朝からあくびばかりしてるけど」
「昨日もアカネと夜遅くまで勉強してたから、
ほとんど寝てないのよ」
「へーー、やるわね。
じゃあ、次の試験はばっちりね」
そういいながらマリは、やたらと後頭部辺りを気にしている。
「どうしたの? 」
「昨日から何かが私の後頭部に当たっている気がして」
(マリの髪型が少し歪んでいると思ったら、そういうことなのね。)
アタシは何となく理由に感づいていた。
後ろの方から微弱だが魔法が飛んできているのだ。
あまりに微弱なので、マリ本人ですら気が付いていない。
この微弱な魔法だが、
小さければ小さいほど使いこなすのが難しい。
魔法技術だけの話をすると巨大な魔法を使うより
技術が必要かもしれない。
(そんな魔法技術の高い子が、このF組にいたかしら?)
「サーヤ、そろそろ体育着に着替えましょ。
魔法体育の授業に遅れるわよ」
この件は本人があまり気にしていないのだから、
アタシがあれこれ考えても仕方ない。
そういえば次の授業・魔法体育は、
アタシが電撃を食らわせた ”あの教師” の授業だ。
この時代の地球は、魔法の研究が進んでいない。
そのため、身体を鍛えれば魔力を効率的に引き出せると勘違いしている。
しかし、アタシのように身体が小さくて、ひ弱でも
巨大な魔法を打ち出すことができてしまうのだ。
要するに魔法力とはイメージの力(妄想力)で、
その力を強くしたいのなら部屋に引きこもり、
推し活で妄想するのが一番なのだ。
要するにこの授業は無駄。アタシは動きたくない。
「ほら、サーヤいくわよ」
そんな気持ちを知ってか?
マリが強引にアタシの手を取り、体育館へ引っ張っていった。
体育館には編入試験でアタシの担当だった熱血教師がいた。
緑色のジャージに身を包み、腕組みをしてみんなを待っている。
「いいか!魔力は健全な肉体に宿るんだ。
これから腕立て伏せと腹筋をおこなう。みんな並べ」
「はい」
クラス全員が一列に並んで腕立て伏せの体制をとった。
「じゃあ、いくぞ、1,2,3,4」
ちびっ子コンビのアタシたちも同じメニューだ。絶対に無理!
だが、隣のマリは、ゆっくりだが皆のペースについていっている。
「おい、シェンカー。魔法操作は得意でも体力はゼロか?
ふはははは」
この教師はアタシの電撃を食らってピクピクしていたくせに、
優越感たっぷりで、勝ち誇ったようにニヤけている。
(こ、こいつ、あの時の仕返しをしているのか!)
「じゃあ次、魔力操作の練習をする。
このボールを風魔法で頭上に持ち上げながら体育館一周! 」
アタシたちの前には、バスケットボールが1つずつ置かれた。
「はい」
学生たちはそれぞれ杖を持ち、ボールを浮かび上がらせた。
隣でマリが、ゼイゼイ言いながら子熊イラスト付きの杖を振っている。
アタシも、アカネに買ってもらった可愛らしいウサギマークの
杖を取り出した。
「あっ、シェンカーはしなくて良い。見学していなさい」
「えっ、アタシも! 」
「けが人が出ると、今度は俺がクビになるから頼むよ」
ちぇっ、つまらんないの。
アタシは仕方ないので、体育館の隅に座って実習を見守った。
ボールを持ち上げて高さが定まらない学生、
歩く速度にボールがついてこない学生、
みんな、あちこちでボールが落ちる音がする。
「「 きゃーーーー! 」」
<< ドン >>
右奥の入口付近で女子生徒が倒れた。
凄い音がしたので、周りの学生たちが心配そうにのぞき込んでいる。
その間から、ちらっと見えたが倒れているのは伊集院マリだ。
こちらから見えなかったが、他の生徒が操っていたボールが、
マリの顔に当たった拍子で倒れ、後頭部を打ち付けたようだ。
打ち所が悪かったら後遺症にもなりかねない。
先生が真っ青になり、マリを開放していいるが、
取り囲んでいる学生の後ろで、4人男子学生がニヤニヤしているのが見えた。
( まさか・・・・ )
それよりも今は、マリだ。
アタシはマリのもとへ駆け寄った。
「大丈夫、マリ? 」
「えへへ、失敗しちゃった」
「おい、まだ動いちゃいかん。そのままだぞ」
「はい。先生」
「アタシが保健室まで一緒に行きます」
アタシは杖を出すと、マリを風スキルで優しく浮かせて、
一緒に保健室まで移動した。
保健室につくと、安心したのかマリは眠ってしまった。
アタシは、マリの着替えを取りに教室に戻ることにした。
それにしても、宙に浮かしたボールが当たったぐらいで体が吹き飛ぶだろうか?
バスケットボールといえど、勢いがないとそうはいかない。
後ろの方で男子学生がニヤニヤしていたが、
教室のイタズラも含めてあいつ等の仕業なのか?
アタシはマリの着替えを持って保健室の前まで戻ってきた。
すると、誰かがマリのベッドの横に立っているようだ。
( 先生かしら? )
保健室のドアをノックすると、その人影が消えてしまった。
見間違いではない。確かに誰かがいたはずだ。
その証拠に魔力を使った痕跡が残っている。
( まさか?マリにイタズラをしかけに? )
アタシはマリの身体に異常がないか?痛打した後頭部を調べた。
すると、不思議なことに、大きなコブが綺麗に消えている。
魔法の痕跡は回復スキル(ヒール)の後だ。
これほど完璧な回復スキルを、一介の学生が使えるわけがない。
あの人影は一体誰だったのか?
敵か?味方か?
人影の意外な正体は次話までとっておきましょう。
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<目指せC組!総合成績Cまであと半年>
サーヤ成績表(F組)
魔力:D
魔法技術:S
体術:E (寝不足のため体術DOWN)
学力:D- (歴史年号暗記がUP)
ギルド戦闘指数:150
総合成績E+:
アカネ成績表(C組)
魔力:B
魔法技術:A
体術:A
学力:S
ギルド戦闘指数:310
総合成績:A
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