1.本日を持ちまして海賊をクビになりました
【読者の皆様へ】 本作を見つけていただきありがとうございます!
物語のスタートは宇宙から始まりますが、第1章のクライマックスを経て、
舞台はタイトルにある**「老化地獄の魔法学園」**へと移り変わります。
その前日譚としての宇宙無双をまずはお楽しみください! (#^.^#)
『 本日を持ちましてホーキンス海賊団の(海賊ライセンス)は終了致しました 』
帝国歴 9,600 年 12 月 8 日深夜0時、
帝国ギルド組合からウチの船宛に1通の通知が届けられた……。
アタシの家は親父の代から [4次元] 海賊を家業としている。
昔の海賊は自由に宇宙を駆け回り、商船を襲ったり宝探しで高収入を得ることができた。
誰もが「自由」と「冒険」に憧れる職業No,1だった。
しかし、今ではDQNとパワハラのイメージが嫌われて、
常時人手不足のブラック職業となってしまった。
少人数では商船を襲うことができず、
最近の海賊はもっぱらギルドの依頼を中心にこなしている。
そしていつの間にか、ギルドは自分が使いやすい海賊にライセンスを与え、
都合が悪い海賊たちを [4次元] 海域から追い出し始めた。
今度の標的は、うちになってしまったらしい。
アタシの海賊団は元々構成員が少なく5名しかいない。
しかし、少数精鋭で仕事が正確なため評判が良い。
殆どの仕事はギルドを通さず、帝国の商人から直接依頼を受けている。
これがギルドには面白くなかったのだろう。
今日突然そのライセンスがはく奪されてしまった。
海賊ライセンスは国の資格で3つの特典がある。
1.ギルドの正規依頼が請けられる
2.帝国軍以外なら誰にでも戦闘が許される
3. [4次元航路] の航行が認められる
アタシの船は、もともとギルドの仕事を受けていないし民間船を襲うこともない。
だから1、2番目の特典は関係ない。
だが、3番目の特典は別だ。
今後、アタシの船は [4次元航路] を飛ぶだけで帝国軍につかまってしまう。
それは、商売だけでなく、ココに住むことも許されないことを意味するのだ。
アタシは生まれて1度も [4次元] から出たことがない。
噂によると、 [3次元] では時間経過が恐ろしく早いらしい。
噂じゃ、そこには**【魔法】なんていう古臭い技術を教える学園**まであるっていうじゃない。
正気を疑うわよね……。
たった数か月で作物が育つ……。
60 年で人が老人になる……。
まさに老化地獄……。
<本当に、あんな場所へ行くっていうの?>
想像するだけで、全身の毛穴が収縮するような悪寒が走る。
[4次元]では、100年経っても細胞の劣化ひとつ起こらない。
だが[3次元]は違う。
毒のように流れる「時間」という概念が、生きたまま肉体を腐らせ、
シワを刻み、わずか数十年で意志なき肉塊へと変えてしまう。
[ 4次元 ] 海賊たちの間では、そこは生者の尊厳を奪う終着駅と呼ばれていた。
アタシはそんな『老化地獄の [3次元] 』で暮らしていく自信がない。
アタシ以外のメンバーは、みんな [3次元 ]出身者だ。
口を揃えて戻りたくないと言っている。
きっと [3次元] 宇宙は想像できないぐらいの地獄なのだ……。
「「 前方から敵です! 」」
「「 えーっ ?!
また来たのーっ ?! 」
落ち着きを取り戻したコクピットで、アラーム音がこだました。
レーダーを見ながらキャリーが続ける。
「敵の数、増えています。500…600…、今度は戦艦級の船ばかりです!!
まだ増えています、2000、2500… 」
メインモニターに映った巨大惑星・サバトの影から巨大な艦影が次々と姿をあわらした。
サバトは、モスグリーンのガス惑星で土星のような輪を持つ星だ。
外側には小惑星群がゆっくりと流れている。
その小惑星の間を縫うようにして、数千の戦艦がこちらに向かってきている。
モニターは、あっという間に戦艦に埋め尽くされた。
「 もおーーーっ!!!
さっきパトロール艦を振り切ったのに、今度は戦艦がお出ましかよ!付き合いきれないぜ」
前方の操縦席でエリカがイライラを爆発させた。
エリカの言う通りだ。
いくらウチがライセンス切れの不法海賊だとしても、この数は狂ってる。
今日は惑星ベルリーニを出港した直後から、警告もなくパトロール艦に追い掛け回された。
その時の数は500隻。今度は、その6倍の3,000隻!しかも全てが戦艦級なのだ。
「もしかして奴らの狙いはアタイたちじゃなくて、
メルビスで乗せた(あの子)じゃないのか」
エリカが眉をひそめて、ロク爺を見た。
ロク爺はうちのメカニック、親父の代から船に乗っている。
「ライセンス切れの取り締まりで、この数は確かにない。
それに『あの小僧』、いかにも【訳あり】といった感じじゃったからな」
ロク爺がいう『あの小僧』とは、
アタシたちがメルビスで船に乗せた 10 歳ぐらいの少年のことだ。
10 歳の子供がたった1人で、海賊船に護送される。
誰が見ても【訳あり】でしかない。
「ロク爺も怪しいと思うだろ?
きっとまた誰かさんが大金積まれて、ヤバい仕事を持って来たんだぜ」
エリカがアタシの方を見てニヤリとした。
「ビンゴじゃな。なんせ二代目は、あの年でアレじゃからのう」
「おカネ大好き、カネの亡者」
「そう、それだ! 」
キャリーを含めたコクピットの4人が、アタシを指さしヒソヒソと話している。
いや、丸聞こえだ。
「な、なによぉー。アタシのせいってわけ?
そもそも何で海賊がおカネを欲しがっちゃいけないのよ!
ちょっとお金をもらったけど、いつも通りの普通のお仕事よ! 」
「はぁ?『ちょっとのお金』だったら、こんな数の戦艦が囲んだりしないだろ」
「エリカの言う通りじゃ! 」
( くっ、エリカの奴、こういう時だけ勘が鋭いのよね、、、 )
「……あと 1分で敵のビーム射程距離に入ります」
キャリーの報告と同時に、メインモニターが激しいノイズに揺れた。
3,000隻もの戦艦が発する巨大な重力波が、
周囲の空間を飴細工のように歪ませているのだ。
暗黒の宇宙に、モスグリーンの惑星サバトを覆い隠さんばかりの光点が埋め尽くす。
「空間密度、上昇。このままでは船体が圧壊します! 」
逃げ場を塞ぐ光の檻。
絶体絶命の重圧の中、アタシは、愛用のキャンディを噛み砕いた。
砕けた砂糖の甘みが、脳に直接火をつける。
「ねぇユーリ、『ちょっとのお金』の仕事なのに敵は撃ってくるかな? 」
「『ちょっとのお金』だから、撃ってこないかもな?うひひ」
キャリーと違い、こっちのバカ2人の声はうるさいだけだ。
バカとはいえ、エリカは操縦士、キャリーは攻撃担当。
ムカつくけど『やる気』を出してもらわないと、この状況では不安だ。
ここは船長として、アタシが折れるしかない…。
「「 分かったわ。本当のことを話すわよ!話を聞いたら仕事をしてちょーだいね 」」
コクピットの視線がアタシに集まった。
「…… 30 億ギラよ! 」
「え?何が? 」
「だから、報酬が 30 億ギラなのっ! 」
ロク爺が、アタシの言葉を聞いて椅子から転げ落ちた。
当然だ。30 億ギラといえば国家予算級で、牧畜用の小さな星を変える額だ。
「やっぱりカネかよーーー!
ぜったい何かあると思ったんだよね。
で二代目、あの子はいったい何者なんだ? 」
「知らないわよ!アタシは、メルビスでエージェントに頼まれただけ。
メルビスからベルリーニまで送り届ければ、報酬金を 30 億ギラもくれるっていうのよ!
これは、やるしかないでしょ? 」
確かにアタシはおカネが大好きだ。持っていて損はない。
だけど、今回の依頼を引き受けたのには、本当のことをいうと、もうひとつ理由がある。
実はこの依頼、エージェントと一緒にいた貴族の頼みなのだ。
しかも服装から見て王族か高級貴族だろう。
アタシの母は王族に連なる貴族出身だったらしい。
落ちぶれた星系の王族を見ていると、
人ごとに思えなくなり、つい、引き受けてしまったのよね。
「第一波来ます! 」
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ビームが稲妻をまといながら船をかすめていった。
その後、全艦から間髪入れず船の周りを撃ちまくってきた。
まるでゲームのようにギリギリを狙ってきている。
3,000対1の絶対的有利な状況で、奴らはアタシ達をなぶり殺しにするつもりだ。
戦艦のビームは一度撃つとエネルギー充填に3分間かかる。
最初の射撃で恐怖を植え付けて逃げられない中、3分間怯えさせる卑劣なやり方だ。
「む、ムカつく―!
た、たった3,000隻ぐらい、アタシがやってやるわ! 」
「二代目、遂にアレをやるのか? 」
「これも30億のためよ」
「命のためじゃないのかよ。笑」
仲間の軽口を背中で聞きながら、アタシは立ち上がった。
指先が、コンソールの奥に隠された「禁忌のトリガー」に触れる。
帝国軍よ、覚えておきなさい。
海賊のライセンスを切るってことは、
帝国という国家を「客」から「獲物」に変えるってことよ。
30億ギラの価値、その身に刻んであげるわ!
「さあ――お掃除の時間よ」
ご一読いただきありがとうございます!
この物語は、宇宙海賊ライセンスを剥奪された2000歳の幼女船長が、数千年前の地球へ逃げ込み、身分を隠して魔法学園で暴れ回る(予定の)お話です。
お楽しみに!もし「面白いかも」と思ってくださったら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援いただけると、作者のモチベーションがコピペで増殖します!




