13.編入試験 ~でも、目立っちゃダメなのよね~
「も、もう結構です。ミス伊集院。
お父様の魔力に匹敵する力でした」
「ふん! 」
マリは評価の際、父親のことを出されたのが
よほど気に入らなかったのか、不機嫌だった。
後から聞いたのだが、マリの父親は帝国・地球方面軍の大幹部。
父親も学園出身で、常に主席を貫いたエリートらしい。
マリは小さい頃から父親と比べられることが多く、
それが何よりも大嫌いだった。
「今度はあなたの番よ。みっともなく落ちないでよね」
ドン、と音を立てて席に座ると、
マリは遠くを見たままでアタシに話しかけてきた。
対人戦はアタシの得意中の得意だ。
しかし、いつも海賊同士の真剣勝負しかしたことがない。
どれだけ目立たずに、相手を殺さずに戦えるか?
はっきりいって、アタシにも分からない。
「うーん、一応頑張ってみる」
「つぎ、サーヤ、サーヤ・シェンカーさん」
( アタシの出番、キターーーーーー )
「「「 はい!はい!はい! 」」」
「はいは、一回でいいです」
「クスクスクス。あの子、かわいいー 」
会場から笑い声と歓声が上がった。
伊集院マリは、小さくて可愛らしいが完璧すぎて、
どこか冷たい感じがする。
しかし、サーヤは危なっかしくて、
守りたくなるタイプに見えるらしい(現実はドSの守銭奴)。
教師と受験生たちは、低学年の短距離走を見るような、
優しくて好奇心の強い目で、最年少の登場を見守った。
一方、サーヤ自身は困惑の中にある。
(伊集院マリに良い所をみせたい)
(アカネが見張ってるし、帝国に正体がバレるとやばい)
(マンガで大金を得るためには2番で合格するしかない)
(でも、挑発的なマリに負けたくない)
そんなことを考えているうちに、試験が始まった。
目の前には、若い男性教師が立っている。
「さっきの子に負けるなよ!
俺は鍛えてるからどーんとぶつかってきなさい」
いかにも熱血の体育教師といった言動で、
アタシを励ましてくる。
こんな良い人を怪我させるわけにはいかない。
とにかく優しく気絶させるには‥‥。
「えっと、これぐらいで大丈夫かしら? 」
アタシはチップを持っている振りをして、自分のスキルで
魔法らしきものを打ち出すことにした。
そのためには、杖。。。。
あれ? 杖、、、アタシ持ってない。
この時代はチップと杖がないとスキル(魔法)を
生み出せないことになっている。
アタシは慌てて、ポケットに手を入れた。
すると小さな棒状の何かが手に触れた。
取り出すと、
棒付きのペロペロキャンデーが出てきた。
「何もないよりはマシね」
昨日、食べるのを忘れていたキャンデーを
指でつまみ、適当な呪文を小声で唱えた。
まず巨大な水の玉で、教師を覆った。
あまり時間をかけ過ぎると窒息死してしまう。
そこで間髪入れず、小さな雷を1つ打ち込んだ。
ここでも加減を間違えると、教師が死んでしまうので、
そーーっと、そーーっと、力を注ぎ込んだ。
「ぎゃ、ぎゃーーー 」
それでも電流が強かったらしい。
教師が気絶してしまった。
( あれーー? 地球人、弱すぎでしょ )
教師が気絶してしまったことで、試験はストップ。
今日は2人連続で生徒に倒されてしまい、
職員室は大騒ぎとなった。
しかも、アタシの場合、
杖を使わず、ペロペロキャンデーを杖代わりにして
魔法を生み出したのだ。
受験生たちは、最初優しくアタシを応援していたのに、
今は化け物でも見るような目つきで怯えている。
「な、なかなかやるわね。
やっぱりアナタはライバルになる人だわ」
伊集院マリがアタシの方を見て、顔を引きつらせながら
声を絞り出していた。
「いえいえ。火と氷で作ったミニ竜巻には負けるわよ」
「なぜ…?なぜ私が二重魔法を使ったことが分かったの?
この技はお父様以外、誰も魔法構成を言い当てた人がいないのよ。
あなた、いったい何者なの? 」
アタシはマリを持ち上げるためにフォローしたつもりだったのに、
完全に裏目になってしまった。
「はっ」
またしても冷たい視線がアタシの背中に。。。
これはアカネが怒っている視線に違いない。
アタシは怖くてアカネの方を見ることができない。
そんなとき。
「すごいぞキャンデー姫! 」
誰かが変な掛け声をアタシにかけてきた。
それがきっかけに、一斉に会場で声援が巻き起こった。
「キャンデー」
「キャンデー」
「キャンデープリンセス」
「キャンデー姫」
「キャンデー守銭奴」
「もう、やめて。これ以上騒がないで」
アタシは、
変な掛け声が混じっていたことに気づくことなく、
席に戻り、ひたすら耳をふさぎ、アカネの視線に怯え続けるのであった。
ご一読いただきありがとうございました!
ついに始まったサーヤの編入試験。
果たして、アカネとの約束「2位合格」の行方は……?
次回の更新は、このあと【1月1日】の22時10分を予定しています。
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