第19話.母、再誕! 〜銀髪が赤く染まる時、逃亡者サトルに死の宣告を〜
「……サラじゃないわよ、サーヤよ! 覚悟しなさい、このアホ親父!」
覚醒し、絶世の美女の姿となったサーヤが、一切の躊躇なく拳を固める。
「い、いや、ちょっ、ちょっと待てサーヤ! その姿でその殺気は、心臓に悪い……!」
「さすがサーヤ様。相手が実の父親だろうと、泣いていようと、集金と制裁に関しては一切の容赦がありません」
アカネが淡々と記録を取る横で、サーヤの拳にブラックホールの如き魔力が収束していく。
「さぁて、昨日のお返しをしてあげるわ!」
「そ、その魔力……やはりサラの……。ぐはああああっ!?」
親父が慌てて時間を止めて応戦するが、サーヤはそれを鼻で笑った。
サーヤは、前回の戦いで、親父が使った時間結晶のアルゴリズムを瞬時にコピペし、外側から結界を粉砕。そのまま渾身のボディブローがサトルの腹部にめり込んだ。
「続いて、おじいちゃんにもらったこれで……トドメよ!」
サーヤが『暗闇の草薙刀』を振り抜くと、空間がザリリと削れ、小さなブラックホールが発生した。
「さ、サーヤちゃん、親に向かってそんな物騒な……あ、ああっ! 俺の盾がぁぁ!」
狂犬の誇る『暗闇の盾』が、シュルシュルとホールに吸い込まれ消滅した。
「勝負あったわね。さあ、慰謝料と養育費、一括で払いなさい!」
「分かった、サーヤ……。これで手を打とう」
親父が財布から取り出し、差し出したのは、分厚い札束だった。
「アンタ、最初からそうすればいいのよ」
にんまりと札束を受け取ったサーヤ。
だが、ふと違和感に気づく。
一番上と下だけが本物で、中身は新装開店したパブのチラシだった。
「……あの、バカ親父ぃぃぃ!!」
気がつくと、親父の姿は消えていた。
その頃、街の場末の酒場では、親父・サトルが一人、震える手で酒を煽っていた。
「……あんな姿になられたら、まともに戦えるわけねーだろ……」
「……サーヤ様、サラ様の解析が終わりました」
サーヤが四次元王宮に戻ると、手柄を褒めて欲しそうな顔で、アオイが駆け寄ってきた。
「あとは、このエーテル体をコピペしてください。成功率は99.9%です」
ガラス瓶の中で揺れる、煙のようなモヤ。
それは、サラの全情報がマージされた究極のバックアップだった。
「本当に、サラに会えるのか?」
大王が震える声で尋ねる。
アカネとアオイが無言で頷く。
そしてアカネが、四次元ボックスからサーヤに「最も純粋な魂の依代(アカネの趣味の体操着とブルマ)」を、そっと差し出す。
「……これ、絶対に必要ないわよね?」
「儀式にはカタチが重要なのです」
文句をぶつぶついいながら、サーヤは儀式のコスチュームに着替えた。
アカネが熱く燃える視線を送る中、サーヤは天高く両手を上げ、指を動かす。
マージされたデータのモヤが人の形を成し、眩い光の中から、白銀の髪を揺らす女神が姿を現した。
「さ、サラ……」
「お父様……」
二人は涙を流して抱き合った。
アカネとアオイがその前に膝をつく。
「ありがとう、二人のマザーシステムよ」
「……マスター、いえ、お母様。回路の隅々まで、貴女の設計思想(愛)が刻まれています」
「お母様ですって?」
「ええ、この二人は私が作ったのです」
「そ、そうだったの?」
「そうですね、少し説明が必要ですね……」
サラによると、
四次元王国の大王名代として帝国に赴いた彼女は、反乱を企てる四天王に狙われた。
帝国の近衛師団長だった親父・サトルは、サラを守り、いつの間にか恋に落ちた。
やがて、サラは身ごもる。
不思議なことに、身ごもったサラは四次元の魔力が使えなくなってしまった。
ここぞとばかりに、ルーン正教と結託し、二人を追い詰める四天王。
サラは、サーヤが生まれると、サトルが二人を守れないと察知し、娘を守るために自らをデータ化し、復活の日のために、アオイとアカネを作り、データ保管とサーヤの行く末を託した。
「お母様といえば、ほら、ここにお前の娘がおるぞ!」
「え、あ……おか、あ、さん……」
「あなたが、あの赤ん坊……大きくなりましたね」
照れくさそうにするサーヤを、サラは優しく抱きしめた。
「私を戻してくれて、本当にありがとう。……ところで、サトルさんは今どこに?」
「それが、困ったものなのよ。お母さん」
サーヤが、サトルの近況を暴露し始めた。
イメキャバ通い、マリのブロマイド収集、そしてエロの限りを尽くすバカ親父の姿を。
その瞬間。
サラの美しい白銀の髪が、怒気と共にどす黒い赤色へと染まり始めた。
「サ・ト・ル・さ・ん……?私を待たせた挙句に……マリちゃんの……体操着バージョン、ですって……?」
王宮の窓ガラスが振動でピキピキと音を立て崩れていく。
「う、うそ、お母さんの髪が……真っ赤に……アカネ、アオイ! 逃げるわよ! 物理障壁全開!」
「手遅れです、サーヤ様。お母様の殺気が事象地平線を超えました!」
「あー……。わしは、そろそろ部屋に戻るとするわい。ヤバいことになったわ」
大王がコソコソと逃げ出し、アオイとアカネは物理的にガタガタと震え始めた。
銀河最強の母親、ブチギレの再誕である。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ついにサーヤの母、サラが復活しました。
復活早々、むちゃくちゃ親父・サトルにブチ切れてしまいました。
ラスト3話で無事にハッピーエンドに向かえるのか?
終わり良ければ総て良し。ってならないのが、この物語(笑)。
どうぞ、お楽しみに。




