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第18話.目覚めの鐘は鳴り響く! 〜成長したサーヤと、膝をつく狂犬〜

「……サラが生きておるだと?」


 王座から崩れ落ちるように立ち上がった四次元大王は、アオイに数歩詰め寄った。


「はい。正確にはサラ様の意志と、全細胞の三次元データが帝国の最深部に凍結保存されています。精神データと身体データを正確に再構成できれば、理論上、生き返ることは可能です」


「…………そんなことが、物理的に可能なのか?」


 震える大王の問いに、アオイは冷徹に、しかし確信を持って答えた。


「本来、生命体の完全な再構成は不可能。ですが――あそこにいるサーヤ様なら、たやすく成し遂げます。彼女は生まれつき、あらゆる情報を具現化する『神のコピペ』権限をお持ちですから」


「ほ、本当か、サーヤちゃん!?」


 大王が、すがるような目でサーヤを見た。


「うん、まあ、だいたいのものならパパっとできるわよ。えへへ」


 鼻を高くするサーヤの頭の中は、別の計算で一杯だった。


(年寄りなんてチョロいものね。これで一生、お年玉とお小遣いをもらい放題だわ。四次元の国庫をアタ

シの財布にしてやる……!)


「サーヤ様、また悪い顔になっています。……でも素敵です」


 アカネのツッコミを華麗にスルーし、アオイは宣言した。



「私はこれよりマスターマザーシステムと同期し、母君のデータ解析に入ります。……アカネ、あなたに私の戦闘スキルを一時貸与します。サーヤをサポートしてください」


「了解です。……『システム同期、権限譲渡エクスチェンジ』」


 アオイの膨大な演算能力がアカネへと流れ込み、アカネの瞳が回路のように発光した。


「……驚いた。サーヤちゃんの周りには、とんでもないお友達ばかりじゃな」


 大王は感嘆し、王室の奥から一振りの優美なレイピアを取り出した。


「アカネとやら、これを持ちなさい。『風通しのレイピア』。あらゆる物理防御を透過する。……そして、これこそが狂犬あいつを目覚めさせる鍵となるはずじゃ」


「じゃあ、おじいちゃん。行ってくるね!」


「さ、サーヤちゃん! もう一度……もう一度だけ言ってくれんか!」


「おじいちゃん!」


「うおおおおおおお!! 」


 感動で王宮内を走り回る大王を背に、一行は戦場へと転移した。



 再び訪れたパブ『男友達』。


 店内では臨時店長のキャリーが、緑ジャージを振り乱して客を捌いていた。


「ほらトウマ、モタモタしない! グラスの曇りは心の曇りよ! ……あ、二代目、お帰り! あのアホ親

父、まだそこにいるわよ。マリのブロマイドをコンプするまで動かないって散財してるわ」


「いらっしゃいませー、アホ親父さま。昨日の続き、やりましょうか?」


 サーヤの声に、ガチャの画面を見つめていた狂犬が顔を上げた。


「……サーヤか。このガチャ、絶対に確率をいじってるだろ。ウルトラレアの『体操着マリちゃん』が全然出ないぞ」


「いいわよ、今日アタシに勝ったら、それのキラカードバージョンをあげるわ」


「よっしゃあ! 乗った!」


 狂犬が叫んだ瞬間、アカネが瞬時に結界を構築。三人は一瞬にして虚空の別空間へと転移した。



「ほう。大王のところへ行ったようだな。……その剣(暗闇の草薙刀)、少し厄介そうだ」


 狂犬は初めて表情を引き締め、四次元ボックスから『暗闇の盾』を取り出した。


「いくわよ!」


 サーヤが暗闇の草薙刀を振り下ろすと、空間そのものがブラックホールのように圧縮され、光さえも吸い込む真空の刃が狂犬を襲った。


 だが。


「――甘いな」


 無敵のはずの攻撃が、狂犬の盾に真っ向から防がれた。


「この盾は草薙刀と対で作られたもの。同規模のエネルギーは完全に相殺する。お前に勝ち目はない」



「……いえ、私を忘れてもらっては困ります」


 アカネがアオイから受け継いだ超加速演算で踏み込み、レイピアを一閃させた。


 ビュッ、という鋭い音が響き、レイピアは親父の盾をまるで幻影であるかのように透過し、その肩を掠めた。


「……何ッ!? ……『風通しのレイピア』か。だが、一度見れば次からは――」


 狂犬が反撃に移ろうとした、その時。


 ゴーン――……。


 どこからか、宇宙の静寂を震わせるような重厚な鐘の音が響き渡った。


「な、に……? 体が、熱い……」


 サーヤの胸の奥で、封印されていた膨大な魔力が爆発した。


レイピアに仕込まれていた『目覚めの鐘』が、サーヤの中に眠るサラの血脈を強制的に呼び覚ましたのだ。


「サーヤ様……その姿……」


 アカネが差し出した鏡を見て、サーヤは絶句した。


 そこに映っていたのは、幼い少女の面影を脱ぎ捨て、20歳ほどの絶世の美女へと変貌した自分の姿だった。


 流れるような銀髪、慈愛と威厳に満ちた瞳。


 それは、かつて銀河を魅了した王女サラそのものだった。


「……サ、ラ…………?」


 狂犬の手から、盾が滑り落ちた。


 最強の戦士としての覇気は消え失せ、彼は膝を突き、幽霊でも見るかのような目でサーヤを見つめた。


 目の前に立つのは、6500年もの間、夢にまで見た最愛の妻。


「嘘だ……。サラ、お前なのか…………?」


 復讐の鬼はどこへ消えたのか、そこにはただ、過去に取り残された一人の男が泣き崩れていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


遂に最終決戦、狂犬の親父との再決戦が始まりました。

突然のサーヤの変貌で戦意喪失の親父に、果たしてこのまま勝利できるのか?


さぁ、そろそろ皆さん、【☆☆☆☆☆】でサーヤ、いえ、作者に応援を!(笑)

ラスト5話!

まだまだ、物語は過熱していきます。

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