9.【潜伏】追っ手は500年後。アタシたちの「3次元(地球)」生活、はじまる。
初めて見る20569HG星域――この星の住民が『地球』と呼んでいる惑星は、
青い大気に包まれた、残酷なほど美しい星だった。
「わーい! ボクたち助かったんだね! 」
「いやユーリ、喜ぶのは早いぞい。
さっきの超次元移動でセンサーが全滅、主砲も沈黙じゃ。本格的に船がイカれたかもしれん」
「不時着してバラバラにならなかっただけでもマシよ。それより……アカネは? 」
アタシの問いに、キャリーが小さな声で「こちらです」と手招きした。
見ると、アカネがキャリーの腕の中でぐったりと気を失っていた。
「……ただ、眠っているだけのようです。エネルギーを使い果たしたのでしょう」
精気を失った顔で寝息を立てるアカネ。
こうして静かにしていると、アンドロイドには到底見えない。
どこか品のある、ただのあどけない少女だ。
「……アカネって、本当にマザーシステムなの? どう見ても普通の子どもじゃない」
「うん、二代目。ボクもそう思うよ。それに引き換え……こっちは」
ユーリがニヤリと笑って、操縦席を指さした。
「ぐぉーー……ぐぴぴぴ……ムニャ……」
「……人間というより、野獣ね」
エリカも極限の操縦で神経をすり減らしたのか、爆睡中だ。
黙っていれば抜群のスタイルを誇る美女なのだが、
今はその台無しな寝顔が、不時着の凄まじさを物語っていた。
「ロク爺、修理はできそう?」
「うーむ、オーバーホールしてパーツを自作せにゃならん。最低でも一年はかかるわい」
「一年!? その間に帝国が来たら終わりじゃない! 」
ユーリが悲鳴を上げたその時、キャリーの腕の中でアカネがゆっくりと目を開けた。
「……それは、大丈夫です。彼らは『時間結晶』を持っていない。ここへ来る手段はありません」
「アカネ! 起きたのね」
アカネはキャリーに支えられながら、ふらつく足取りでタブレットを手に取った。
「[4次元]から[3次元]へのゲートは、1000年ごとの周期でしか開きません。
次にこの時代への航路が開くのは……500年後です」
「なるほど! つまり帝国軍がアタシたちを追いかけてきても、
500年前か500年後にしか到着できないってことね! 」
ユーリがポンと手を叩く。一見、超高度な物理学の話をしているが、
見た目は少女二人がタブレットを囲んで遊んでいるようにしか見えない。
「ただし、注意が必要です。この時代にも、
500年前に派遣された『駐留軍』のマザーシステムが存在するはず。
彼らはこの世界に溶け込み、使命を世代を超えて受け継いでいます」
「まるで大昔のブラック……なんとかだね」
「ユーリ、それを言うなら『ブラック企業』です。
かつて一方通行で僻地に飛ばされることを左遷といい……」
出た。キャリーの『歴ヲタ』スイッチだ。
話が長くなる前にアタシは遮った。
「つまり、その『現地のマザーシステム』に見つからなきゃ、アタシたちは自由ってことね? 」
「はい。ただ、特殊なスキルで目立ちすぎると、即座に捕捉されるでしょう。
……サーヤ様、くれぐれも『目立たないように』」
アカネの言葉に、エリカとユーリが同時にアタシを見てニヤついた。
「「 ……無理だね 」」
「何よ! 言いたいことがあるなら言いなさいよ! 」
「いやー、二代目は何をやっても目立つからな。この前も警官をぶっ飛ばしてたし」
「あれは、アホな警官が悪いの! アタシはむしろ巻き込まれた被害者なのよ! 」
アタシの絶叫が、静かな月面に虚しく響いた。
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