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6話〜大公家〜

悩みに悩み、とりあえず会ってみないことには始まらないという結論に至ったアリシアは、ジョシュアに手紙を出した


使用人に手紙を送るように頼んだ時はかなり驚かれた。


なぜいきなり大公家?と顔に出ているのが丸わかりだった


それに関してはアリシアにも気持ちはよくわかるので、黙っていた


“で、三日前に送って…”


そんなアリシアは現在、走る馬車の中にいる

外出用のドレスと、輝く宝石のアクセサリーで綺麗に着飾って


“どうしてこうなったの!?”


アリシアは三日前に手紙を送ったのだが、領地がかなり近いこともあり、返事はすぐに来た


しかも、二つ返事で了承され翌日には大公家から迎えの馬車が来た


アリシアも流石に驚きを隠せなかった。


了承の返事が来たら都合のいい日を聞いて、それまでに説得の内容を考えておこうと思っていたのだが、あまりの速さに考える間もなく着飾られ、使用人によって馬車に押し込められていた


“まぁ、なっちゃったものは仕方ないよね…”


もう半ば諦めながら、窓から外の景色を眺めた


ハーシェル公爵領とシストア大公領の距離はそこまで遠いものではなく、現世のような車や電車などがなくとも、2時間もあれば着く距離だった


「今どれくらい経ったんだろう…」


「ちょうど一時間ほどですよ、お嬢様」


一緒に馬車に乗っていたアンが、アリシアの呟きに答えた


こういう外出の場合、普通は専属の侍女が付いてくるのだが、アンはベイリーにアリシアのことを頼まれているため、外出の時は基本一緒に出かけるのだ


まず、アリシアには専属の侍女という者がいない


“確か…ゲームでは…”


その理由もしっかりゲーム内で明かされていた。


アリシアが生まれ1歳になったころ、そろそろ侍女を決めようかという話が出たのだが、多くの侍女がアリシアの‘専属’という言葉に惹かれたらしく、争奪戦が始まってしまったのだ


それも何日たっても一向に決まらず、最終的にベイリーが、世話は皆で外出するときはアンが付いていくように。と命じたことで収まった


“アリシアの愛されっぷりがよく分かるってことで、人気のストーリーだったよね”


「お嬢様、見えてきましたよ!」


そんなことを考えていると、そうやら到着したらしくアンに肩をたたかれた。

アンが指差す方を窓から見ると、少しづつ家や教会のような建築物が見え始めた


「大公領です!」


まだ少し遠いが、ここからでもわかるほどに美しい街だった。


見るものすべてが輝いて見える、日の光の反射などではない


それ以上に、まるで宝石の輝きのように眩しい街並みがアリシアの目に映った


「綺麗…」


「えぇ、公爵領の街並みも美しいですが大公領も美しいです」


前の人生でも、大公領には来たことがないアリシアは目を輝かせながら、大公領の街並みを見回す

市場も人も皆活気付いて、明るく笑っている


やはり大公領というだけあり、公爵領よりも少し広く人も多い


「ハーシェル嬢」


「はい」


馬車の周りを護衛していた大公家の騎士が窓をノックしたため、アリシアは窓を開けて返事をする


「もうすぐ大公家に着きます。あちらです見えますか?」


「はい…大きいですね」


アリシアの目に映ったのは、皇宮と変わらないのではないかと思うほどの大きな城

前の人生で、皇太子の婚約者として暮らしていた皇宮と遜色ないほどに、豪華な城が見えた


公爵家も大きい方だが、大きさよりも素材や中の装飾に拘ったため大公家よりは小さい


勿論それでも、帝国一の富豪なので金額は十分すぎるほどかかっている


普通に暮らしていれば一生働かないどころか、どんな高級食材を食べても3代くらいは、裕に暮らしていけるほどの金額がかかっている


“そう考えると、公爵家凄い…”


ゲームをしていたころは、そこまで気にしていなかったが、やはり自分がキャラに成り代わってしまうと思うところがあるのか、アリシアは少し遠い目をしてしまっていた


「あと数分ですので、ご準備を」


「はい、ありがとうございます」


アリシアはもうすぐ着くという事実に少し緊張し、深呼吸をした

目の前にいるアンもさすがに緊張しているのか、表情がいつもよりも硬い


そんな様子を見たアリシアは、笑ってアンの手を取った


「大丈夫よ、すぐにお返事をくれるような優しい方なんだから。それに、大公領の人々もみんな笑顔じゃない」


「お嬢様…そうですね」


アンはアリシアのその言葉に、少し気持ちが落ち着いたのか、柔らかな笑顔を浮かべた


“こうやって手を握って安心させてくれるのは、アンの役目だったな…”


昔からアリシアが不安そうにしているときは、いつも温かく子供の自分の手よりも少し大きい手で、包み込んでくれていた


その手は、一侍女として働いてきたころの名残なのか、少し傷があったり火傷の跡があったりするがアリシアには、何よりも綺麗な手に見えた


貴族の令嬢の美しい白魚のような綺麗な手よりも


「ハーシェル嬢、到着しました」


「さ、降りましょう」


「はい、お嬢様」


大公家の騎士が馬車の扉を開け、手を差し出してくれた。

アリシアはその手を取って、用意してもらった踏み台を使って馬車から降りようとした


「待て」


降りようとした瞬間に、すぐ近くから声が聞こえた

まだ若い、少年の声

騎士が振り向いた方を見てみると__


“あ…”


光に反射し、まるで星の光のような美しい銀髪を持った少年がそこにいた。

薄っすらと笑みを浮かべており、その笑みですらも彫刻のような美しさだった


アリシアは瞬時に理解した

例え、ゲームでしか見たことがなくてもすぐに分かった


「初めまして、アリシア・ハーシェル公爵令嬢」


「ジョシュア・ド・シストアです」


彼こそが、大公子なのだと

顔立ちもそうだが、立ち居振る舞い、纏う雰囲気

全てが気品に溢れている


これが12歳かと、圧倒されてしまうほどだった

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