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3話〜懐古〜

「今日は早起きねぇ、いつもは起こさないと起きてこないのに」


「あはは…」


確かにそうだった、アリシアはどちらかというと朝がかなり弱い


なんなら前世の時から朝は弱いため、誰かに起こしてもらわないと絶対に起きなかった


寝ようと思えば昼まで寝てしまう


これに関しては苦笑いを浮かべるしかなかった


「お嬢様も、少し大人になられたということですよ。奥様」


「アン!」


「そうなのかしら?まだ10歳だし、もっと子供でもいいのに…」


「そうですねぇ、少し寂しゅうございます」


入ってきたアンという名の侍女長と共にしみじみというような顔で話をするベイリーの顔に少し泣きそうになった


前の人生では、濡れ衣を着せられた挙句処刑までされたのだから家門の名に泥を塗ってしまったことだろう


“申し訳ないな…”


涙をこらえるため、少し目元に力を入れたクシャっとした笑みを浮かべているとベイリーがそれに気づいたらしく驚いた顔でアリシアの頬に触れた


「どうしたの?アリシア」


「あらお嬢様、どうなさったんですか?」


「だ、大丈夫です!少し悪い夢を見て…お母さまの顔を見たら安心してしまって…」


少し目に滲んだ涙をゴシゴシと袖で拭く


夢ではないが、前の人生もある意味悪夢といえるだろう

だから母の顔を見て安心したというのも嘘ではないのだ


それを聞いたベイリーは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になりアンの方を向いた


「あらあら聞いた?アン、やっぱりまだ子供よ」


「そうでございますねぇ」


クスクスと笑いながらもどこか嬉しそうな表情をした母はギュッとアリシアのことを抱きしめたこの暖かさも母の腕も匂いも、どれもひどく懐かしく思えて、また涙が出てきそうになった


“こうやって二人の笑顔を見るのも久しぶり…”


前の人生では処刑間近で牢獄に閉じ込められているとき、二人の泣き顔しか見ていなかった

そうだ、昔はこうやってよく二人で話しながら笑っていた。と思い出す


アンはベイリーが嫁いできた時からずっと支えている心強い味方だ

そして、アリシアがまだ赤子のころの乳母でもある


「さ、涙を拭いて。私の可愛い娘、朝食にしましょう」


「顔を洗って、お着替えをしましょう。今日は公爵様もご一緒ですよ」


「お父様も?」


アリシアがグスッと鼻を鳴らし母の腕の中から出て、少し驚いた顔でアンの方を向くと微笑まれながら、ハンカチで涙を拭かれた


基本仕事が忙しい父、ハーシェル公爵は晩は一緒になることがあっても朝は殆どない

だが、こうやって時間があるときは必ず一緒に食事をとってくれるいい父親だ


中々会えないのを気にしていて、アリシアの誕生日などのプレゼントはかなり豪華だったりする


“確か、労働時間が長すぎるって皇帝陛下に直談判しに行ったんだっけ…?”


公爵という立場なこともあり皇宮での仕事もかなり多く、その場合は夜遅くにしか家に帰れないことも多くある


それもアリシアがまだ赤子の時は、時期的なものもあり仕事が増えに増え、耐え切れなくなった公爵は皇帝陛下に泣きながら直談判したらしい


"我が父ながら、皇帝陛下にそこまで言えるのはすごいと思う。本当に”


「さ、奥様は先に行ってください。公爵様がお待ちですよ」


「はーい、じゃあアリシア。またあとでね」


ベイリーはアンの前ではたまに子供っぽくなることがある

やはり、少し甘えているのだろうか。


アリシアは、前世の記憶を思い浮かべた

ベイリー・ハーシェルの紹介がゲーム内イベントのストーリーであったが、母がハーシェル公爵家に嫁いできたのは父がまだ小公爵だった頃なので14のころだ


母親がまだ恋しいころに嫁いできたため、年が上のアンに甘えていたのだろう

それがまだ抜けていないのだ


「さ、お嬢様。身支度をしましょう」


「うん」


アンに手伝ってもらいながら、アリシアは家着…とは少し言い難いが、少なくとも外出用ではないドレスに着替え、髪の毛も10歳の少女らしく可愛らしい髪形にアンが結ってくれた


中身は17歳なので少し恥ずかしい気持ちもあるが、アンがあまりにも可愛い可愛いとほめちぎるので、アリシア自身も段々と悪い気はしなくなっていき、されるがままになっていた


「完成しましたよ、さぁ参りましょう」


「うん!」


アリシアは化粧台の椅子から降り、まだ小さい体では少し重い扉をアンに開けてもらって外に出た。


部屋から出たアリシアの目に映った景色は、前の人生と何ら変わりなく、涙が出そうになるのをグッとこらえてダイニングへと向かう


「お嬢様!おはようございます!」


「おはよう」


「おはようございます!お嬢様!」


「おはよう」


ダイニングに向かう途中に会う使用人たちは、皆笑顔でアリシアに挨拶をする


アリシアもパッと花を咲かせたような笑みで使用人たちに挨拶を返す


この挨拶一つですらも懐かしさを覚える


しばらく歩いていたのだが___


“こ…こんなに広かったっけ?”


体が小さくなったせいで歩幅も狭くなったのか、中々ダイニングに辿り着かない


しかも体力もやはり少なくなっているらしく、アリシアは息切れし始めた


後ろからついてきていたアンは、そんなアリシアの様子を見て、あッというような表情をしてアリシアに駆け寄った


「そうでした、お嬢様。今かなり体力が落ちているんでしたね」


「え…?な…なんで…?」


ゼェゼェと息を荒くしながらアンの方を向いた

アンはきょとんとした顔をして、口を開いた


「え?お嬢様、お忘れですか?つい先週まで熱で寝込んでいたのですよ」


「…あ」


アリシアは、アンの言葉でようやく思い出した

10歳のこの時期、アリシアは確かに風邪をこじらせしばらくの間寝込んでいた


戻ってきたのが大体いつくらいか分かったアリシアは感激で泣きそうになった

何故なら


“そうだ!その熱のせいで、皇子との婚約が延期になったんだ!”


そう、熱を出したせいで皇子であるエイベルとの婚約前の顔合わせが延期になり、まだ婚約成立していないのだ


あくまで、その候補というだけにとどまっている


“神様ナイス…!”


「お嬢様?」


小さくガッツポーズをしているとアンに不思議そうな声で尋ねられ、ハッと意識を戻した


「ううん!なんでもない…」


「そうでございますか…ではお嬢様、はい」


「ん?」


アンが目の前で腕を広げたため、それにアリシアはキョトンとした


これは…いったいどういうことなのだろうか

もしかして…と様々な考えが頭の中を駆け巡る


「抱っこしましょう!」


“やっぱりー!”


アリシアの顔が少し引き攣る

当たり前だ、外見は10歳とはいえ中身は17歳なのだ。


流石に、抱っこを頼むような年齢ではない


“あと普通に恥ずかしい!”


「だ、大丈夫だよ。歩けるから…」


「ですがお嬢様、このままではダイニングに着くのがお昼になってしまいます

公爵様と奥様をお待たせしてしまいますよ」


「う…」


そう言われると反論できなかった。


抱っこは恥ずかしいが、父と母を待たせてしまうことは嫌だったアリシアは、スッと手を伸ばしてアンに抱きついた


アンは抱っこできることが嬉しかったのか、笑顔で抱き上げ、そのまま鼻歌でも歌い出しそうな足取りでダイニングへと向かっていった


“やっぱり恥ずかしい…”


アンに抱っこされているアリシアを微笑ましい、という目で見つめる使用人が多く、アリシアはダイニングに着くまでアンの肩に顔を埋めていた

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