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1話〜選択〜

「今ここに!アリシア・ハーシェルの処刑を決定する!」


裁判所でボロボロの服を着て、跪いているアリシアの前にいる、金と緋の装束に身に纏った男、皇太子エイベル・エル・ド・アスーフィアが冷ややかに言い放つ


どうしてこうなったのか


何をしたというのか


どうして、信じてくれないのか


そんな考えがアリシアの頭の中をグルグルと駆け巡る

しかし目の前の男は塵でも見るような目でアリシアのことを見下ろしていた


「アリシア・ハーシェル何か最後に言いたいことはあるか」


「・・・どうせ、何を言っても信じてくださらないのでしょう?」


絞り出すように発したその声には、もう涙も憤りもなかった


アリシアは顔を上げ、かつての貴族ハーシェル公爵家公女の気高い姿で目の前の男の顔をじっと見つめた


「私は、信じてくれない方に対していつまでも縋り付くほど愚かではありませんので」


「ハッ!そうか、そうやってエブリンのことも蔑んだのだな」


「殿下・・・」


皇太子の横に並ぶ、可愛らしい女

こわぁいとでも言いたげに目を潤ませながらも、こちらを見てニヤリと笑うのを見逃さない


“悪どい女”


「もうよい!この女を断頭台へ!」


そんなことにも気がつかない皇太子は近くに待機していた衛兵に断頭台へ連れて行くよう命ずる


「…申し訳ありません、ハーシェル嬢」


アリシアを立ち上がらせた彼らの目には悲しみと罪悪感が浮かんでいた


アリシアの後ろから両親が泣き叫ぶ声が聞こえてきた


‘ごめんなさいお父様、お母様’


外へと引きずられながら、最後まで自分を信じ、真実を訴え続けた2人に感謝していた


だが、悔しさは残る


『信じた人に裏切られる苦しみ』が、こんなにも惨たらしいものだとは――


やがて外に出ると、民衆の怒号が降り注ぐ。


「殺せ!」「裏切り者!」「悪女め!」


誰も、真実など見ていない。


彼らが見ているのは、作られた“悪役”である彼女の姿だけだ。


外に引き摺り出されると、民衆の殺せと言う声が響く


民衆までも、アリシアのことを信じてはいない

いや、あの女のことを信じている

悔しいけれど、どうにもできない

だが、公爵領の人々は彼女を信じ続けた


彼女にはそれだけで十分だった


それでも、妬ましい気持ちはどうにも消えない


‘呪ってやる’


せめて、彼らが地獄に落ちるより苦しい人生を歩めるよう、呪ってやる


ギロチンに頭を置かされながら、そんな恨み言を心の中で唱え続ける

視界の端で、ギロチンの刃が繋がれているロープが切られるのが見えた


ガシャン!!


その音と共に、視界も意識も暗闇に包まれた。


‘もし、本当に地獄というものがあるのなら彼らが死よりも苦しい仕打ちを受けますように’


彼女が最後に祈ったのは、そんなことだった






「ここは・・・」


彼女が目を開けると真っ暗な空間に1人立っていた


「死んだんじゃないの?

いや、ここが死後の世界なの?

随分と暗い場所」


皮肉を交えた声で辺りを見回す

何もない、黒いだけの空間


人は皆、良い行いをすれば天国に神に近いところへ、悪いことをすれば地獄。悪魔に近いところへ行くと言うのを聞いたことがあるというのに


「嘘ばっかり、まぁ見たことがある人なんていないんだから仕方ないけど」


「あれは?」


真っ暗な中に一筋の光があった

お日様のように暖かく差し込むような光ではなく

そこだけが輝いているような、異様な輝き


それがキラリと輝くたび、こっちに来いと言われているような気がして


何となく、彼女は足を進めてみた


光に近づくたびに、それがいかに明るく光っているのかが分かる。

それほどに眩しい


しばらく歩き続けて、アリシアは息を飲み光の中へと意を決して入ってみる


(もしかして、天国への入り口だったりして)


眩しさに瞑ってしまった目をそっと開けてみる。

すると、何だか見たこともない光景が目に入る


「何・・・ここ、ここが天国?

でも、何だか帝国とは違うような・・・」


飛んでいる鉄の鳥


見たことのない服装


高度な建築物


「ここは・・・いったい」


呆然としていると、いきなり空間がグニャリと歪み場面が変わった。


すると、1人の女が目に入った。


ベッドの上に転がりながら、何か四角い小さなものを操作している


「あれは、何?」


彼女は興味本位で、それを覗き見てみると綺麗な絵柄の物語が目に入った


題名は


「公爵令嬢の悪女制裁記・・・?」


その瞬間、頭痛が走った。

それと同時に、何かが頭に流れ込んできた


これは・・・記憶だ


だが一体誰の…



“あぁ、そうだこれは…私の前世”



そして、彼女がいた世界は前世で彼女自身がハマっていたゲームの世界!

悪女“エブリン”による冤罪を回避しながらヒーローと結ばれるヒロイン‘アリシア’だった


「嘘でしょ・・・」


そう、彼女は前世で交通事故で死んだのだ

そしてこの世界にきた。

だが、記憶は受け継がれずにそのまま育ったらしい

お陰で、死んでから思い出すことになるとは誰も思いもしなかった


「何なのよ・・・それ」


どうせなら生きている間に思い出さしてくれればいいものを

死んでから思い出したってすべて後の祭りなのだ


「まぁ、終わったことを嘆いても仕方ないしね、さっさとここを出よう・・・」


彼女はクルリと方向転換し、元の暗闇へ帰ろうとすると、目の前に白いウィンドウが現れた


これは、転生系漫画でお馴染みのやつだ。と呆然とする


【やり直しますか?はい、いいえ】


「やり・・・直す?」


目の前に現れたウィンドウに問われた

彼女は理解が追いつかなかった

一体何を問われているのか


やり直すか?


何を?


あの、屈辱的な人生を…?


それならば__


「やり直すに決まってるでしょ」


あの女と皇太子、どちらにも一泡吹かせてやらなければ気が済まなかった


呪えないのなら、この手で直接


“地獄へ叩き落としてやる”


何の迷いもなく、はいをタップした


すると、彼女自身の足元がパカっという音を立てて開いた


「え?」


もちろん足場がなくなれば人は・・・


「え、ちょ…うそでしょ!」


叫ぶ暇もなく真っ逆さまに堕ちていく


彼女は急降下する恐怖で、叫びたいことは多くあるが口をつぐむことしかできなかった




そんな彼女を見つめる人影が一つ


「早くここまでおいで君にはその資格がある、“神”になる資格が」


うっすらと笑みを浮かべて、そう言ったのは彼女には聞こえていなかった

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