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魔王降臨、勇者立志 ①

多分IFです。

「こい、聖剣」


「来いゲシュタルト」


黒い仮面の男と青い鎧の騎士が剣を交える。


なんて残酷なんだろう。

おそらく2人とも自分が誰と戦っているのか気づいていない。


「さっさと片付けろエイラ」


「そんな奴さっさとやっちまえよ魔王」


外野が騒ぐ。

黙れ。

2人のことなんて何も知らないくせに。


「だそうです。私はこれから貴方を倒さねばならないらしいです」


フレイが言う。

やめて、フレイ。

あなたが倒そうとしている人は...。


「そうか。できるものならやってみろ。私の先になっ!」


やめてエイル。

あなたは...。


剣と剣が幾度も交わる。

どちらかの勢いが減るまで。


「開放」


フレイが剣技を使う。


「絶対回避」


エイルはそれをスキルで避ける。


なぜ気づかない。

お互いにそのスキルを待っている相手は1人しか知らない筈なのに。


「集え我が配下よ」


フレイが手を上に伸ばすと魔法陣が形成される。


「応えよ我が神よ」


エイルが手を正面にかざすと魔法陣が現れる。


「悪魔降臨」

「神降臨」


黒く染まった72振りとかした悪魔と後ろに大きな時計のようなものを背にして神が現れた。


「破壊の捕食者」


世界が黒に染まる。

これは、まさかフレイのスキル!?


「創世の創造者」


世界が半分だけ蒼く輝く。


「火炎球」


フレイが火の球をエイルに放ち、その隙に背後へ回る。


「はぁ」


しかし、エイルがため息を吐くと火は消えてしまった。


「なかなかやるようですね」


「そう言う貴様もな」


「しかし、惜しかったな」


「はて?」


惜しかったというのは、どういう意味なのか私にもわからない。


「もう少し早くそれに気づけば、この戦いはもうすこし長引いただろうに」


「それ?」


「分からないか」


フレイをみる。

さっきまで気づかなかった。

フレイの胸元には...。


「聖剣ですか」


「ああ。その聖剣は、時間を司る剣。すでに貴様の寿命は吸い尽くした」


「なっ...」


フレイが地面に伏せる。


「魔王!」


魔王軍が叫ぶ。

しかし、魔王は起き上がらない。


「よくやったぞ勇者!」


そんな...エイルがフレイを。

フレイはあれだけ心を殺して今まで...。


「戦う相手が悪かったな」


エイルがフレイに吐き捨てる。

まだ気づかないのか。


「そうですね」


信じられないことに死んだと思われるフレイの声が聞こえる。


「なにっ」


エイルはフレイを振り返った。


そこに立っていたのは一振りの魔剣を持った魔王だった。


「なに、簡単なことですよ」


『儂らの権能じゃ』


『これしきで魔王様は死んだりしないわ』


「魔剣アガレス、魔剣フェネクス...」


おかしい、聖剣が魔剣になってから悪魔の力は使えなかったはずだ。


「貴様、悪魔を失ったのではなかったのか」


エイルが問う。


「開放で、本来の力を使えば問題ないです」


そんな、今まで何を試してもダメだったのに。

開放も何度か試していたはずだ。


「それに、私は魔王。悪魔の力を借りられない道理はないでしょう?」


まさか、自分を魔王と認めたことに答えはあるのだろうか。

今まで、彼自身が魔王を名乗ったことなどなかったのに。


「それならこれは?」


エイルの手元から聖剣が消える。


「なるほど、過去へ干渉してきましたか」


「へぇ、これも防ぐのか」


次の瞬間フレイの前に数えきれないほどの剣が迫る。


「これならどう?」


「オセ」


『承知』


フレイの体が突然消え去り、エイルの放った剣たちが掠れる音だけが聞こえた。


「こんなもんですかね」


フレイはエイルの後ろに立っていた。


「シャクス、サブナク」


そう呼んだ剣をエイルに向かって投げる。

しかし、そんな攻撃では。


「絶対回避」


エイルはそれを避け、フレイに迫る。


「じゃあ、今度こそバイバイ」


ガコンと何かの音がした。

エイルの時計だ。

時空さえも切り裂く剣がフレイに降ろされる。


「まだ...です」


「私もそろそろ本気を出すから、貴方も出しなさい」


エイルがフレイに言う。

まるで、弟子に言い聞かせるように。


「その仮面を外しなさい」


「別に良いですよ」


フレイがそう言って仮面を外した。

これでお互い気づくはずだ。

自分が誰と戦っているのかを。


仮面を取ったフレイの目には魔法陣が浮かんでいた...いや、刻まれていた。


エイルはフレイを見て何かを思い出したかのように頭を押さえた。


「どこかであったこと...」


「さぁ、分かりませんね。貴方から感じる魔力は今まで見た方に該当しません」


フレイは、エイルの見た目についてではなく魔力について語り、知らないと言った。

まさか...。


「貴様、目が見えないのか?」


エイルが問うとフレイは笑いながら答えた。


「えぇ、しかし困りはしませんよ」


フレイの顔には無数の魔法陣が刻まれていた。

一体誰がなんのために...。


「魔力は分かるので...自然の魔力がわかれば場所や物の位置がわかる。人の魔力が分かれば属性や攻撃手段がわかる」


フレイがそういうと、エイルは笑った。


「そりゃすごいね」


エイルはフレイの背中側へと移動し、聖剣を首目掛けて振る。


それをフレイはゲシュタルトを後ろへ構えることで防いだ。


「なるほど、嘘では無さそうだ」


次の瞬間、ゲシュタルトは魔剣へと姿を変えた。


「開放」


剣技によって、ゲシュタルトからさまざまな色の剣波が放たれる。


そしてそれをエイルは時に避けつつも、そのほとんどを聖剣で交わした。


エイルが目を見開くと今度はエイルから剣波が放たれた。


「...ッ」


フレイは72振りの剣を用いてそれを防いだ。

だめだ、エイルとフレイでは格が違いすぎる...。


「破壊の捕食者」


「これ以上何の悪魔を召喚するの?」


エイルが聖剣をフレイに突き刺そうとする。


しかし、それは魔力放出によって阻止された。


「それが本当のスキルってわけ?」


フレイの体は黒い魔力に覆われていき、やがてその手には一振りの剣が握られていた。


「これで良いのか?」


フレイが誰かに話しかける。


「あら、敬語はどうし...」


エイルがフレイに剣を向けた途端、エイルが跪いた。

エイルだけではない。

この場にいる全員が跪いた。


フレイの手に握られている魔剣。

あんなものは今まで見たことがない。


「これは、魔剣ダークロード」


異様な魔力が渦巻く魔剣に、フレイは自身の魔力を注ぎ込む。


しかしいつのまにかエイルは立ち上がり、フレイへと向かっていく。


そして剣がフレイに届きそうになるその時だった。

フレイの魔力は尽き、顔の魔法陣もいつのまにか消えていた。


「...フレイ?」


エイルがそう呟くころには、フレイの胴体にエイルの剣が刺さっていた。


「私は何を...私は何者...こいつは...」


慌てるエイルにフレイは言う。


「魔王の名を持って、返しましょう。あなたはエイル・ファフニール。この世界の剣聖だ」


するとエイルの青い鎧は砕け散った。


「やっぱりエイルさんでしたか...」


フレイは初めから気づいていたのだろうか。

それなら一体なぜ...。


「........今治すわ」


エイルがフレイに治癒魔法をかける。

しかし、フレイの傷は治らない。


「そんなどうして...」


「魔剣ダークロードの影響でしょうね」


魔剣ダークロード...あの剣は一体何だったのだろうか。


「魔剣ダークロードは、次の世界へと渡る。私はそのための道具に過ぎなかった...。アリスが死んだあの日から」


そう言うと、魔王フレイ・ディストルツィオーネは再び漆黒の仮面を着けて言った。


「我が配下よ!撤退せよ」


フレイが声に魔力を込める。私たちの体は戦場から離れようとする。


しかし、魔力をほとんどダークロードに費やしたためか、そこまでの強制力はなく...。


「フレイ...フレイ!」


エイルが涙をこぼしながら魔王の名を呼ぶ。

そして、腕や足と言った体がだんだんと霧散していき、残ったのは頭と少しの胴体のみ...。


つまり、魔王は今まで失った体を魔力で補っていたのだ。


「あぁ、そうか。これはあの...」


そう言うと、彼から魔力を...生命力を感じなくなった。


「フレイ...」


泣きながらフレイの名前を呼び続けるエイル。

もしも、もう少しエイルが早く正気に戻っていれば...。

結末は違っていたのかもしれない。

でもフレイ。

あなたは一つ勘違いをしている...エイルこそがあなたが亡くしたと思っているアリス・ヴェート・ヴァルツァルトなのに。


「...」


エイルはフレイから仮面を取ると、それを自分の顔につける。


「エイラ...一体何を!!」


勇者の仲間が声を上げる。


「私はもう...エイラでもエイルでもない...そうね。捕食者とでも名乗ろうかしら」


エイルはこの場にいる全員に宣言する。


「この世の全てを壊す、【破壊の捕食者】」


エイル・ファフニール...【破壊の捕食者】はそう言うと、どこかへと飛び去った。


その後、この世界には黒い雨が振り続けやがて...。






○○○


気づいた時には全てが遅かった。

何だこれは。


黒い雨...これは捕食者が世界を滅ぼした時に降るものなので、特に気にしなくていい。


問題はフレイ・ディストルツィオーネが亡くなっていることだ。


捕食者、それはフレイのことである。

そしてこの雨はフレイが降らせるものだ。

それなのに、世界の終わりよりも先にフレイ・ディストルツィオーネは亡くなっていた。


誰だ?

誰がこれをやった。


まさかゼクシズか?

いや、そんな筈はない。

あの神が自ら人間に関わることはない。


じゃあ一体誰だ。

分からない。


ただ、フレイ以外の捕食者が誕生したということ以外には何も。


これでは観測する意味がなくなってしまう。


とりあえず、次の世界に行くしかない。


次の世界で同じことがあると困る。

早めに対処しなくては。


そう思い、この世界の時空剣を呼ぶ。


しかし...。


「ない、だと」


どの世界にも必ず存在する時空の女神の剣。

それがこの世界にはなかった。

いや、なくなっていた。


残された可能性は2つ。


もう1人の俺...別の世界の俺が既にこの世界の時空の女神を殺したか。


そして...。


これは考えたくない。

考えられない。


まさか、エイル・ファフニールが【捕食者】なのか?

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