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いふ☆いふ 〜先輩は魔法使い〜  作者: 岩流佐令
5月 体育祭&家庭訪問
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第四十三話 別になくてもいい話

「やあやあ王子きゅん。まさか伊巫ちゃんの人生伴走者を通り越して、人生そのものになるなんてねえ。全く凄まじいな君たちは、そろそろ魂のsynchronized swimmingでもしたら?」


「はは……」


 緑市さんが俺に話し掛けている。苦笑い俺。


 そう、俺はついに伊巫さんの競技出場代理に認定されたのだ。もはや伴走者どころではない、出場者そのものである。

 先ほど、体育祭実行委員の許可を取ったこと。ボケボケ老人校長鈴木が「ホゲホゲ」言いながら了承していた。


 伊巫さんの影武者。もとい、2年A組出席番号6番伊巫杏子(♀)の代わりとして、競技者となった俺。

 は、今現在二年生先輩の群れに混ざって、綱引きを興じている。


 プログラム第五百二十七番。各学年代表生徒による、クラス対抗綱引き。

 に、なぜか混じってオーエスしている一年生男子生徒。

 が、俺だ。


「オーエス、オーエス。そういや王子きゅん、伊巫ちゃんとなんかあったの? 二人三脚プレイもそうだったけど、あの後くらいから彼女、変だよね。気力がないっていうか。保健室とか連れてかなくていい感じ?」


「オーエス、オーエス……うん、まあ、その。ハッハッハ」


 まさにその通り。なんかありました。


 あの後、世界時間軸を一時間ほど重複一周したらしき俺と伊巫さんは、例の体育倉庫でわちゃわちゃしてから、俺は競技に勤しみ、彼女は応援席で観戦の体だ。


 言えない。俺がその伊巫さんを死にかけさせたなんて、絶対に言えない。


 それは俺の逃げ口上というか、社会的地位を墜落させない為のただの責任逃れなのだろう。が、彼女は、伊巫さんは、俺にそれら色々の件を秘匿にしろと言ったこともあった。


 そもそもその色々を公に開示するとなると、彼女のボンテージやらなんやらを説明することになるかもしれない。

 と、そこまであの人が危惧したかわからないが、とにかく、例の体育倉庫一件は、俺と伊巫さん、二人の秘密にする運びとなった。


 本当に申し訳ないと思っている。一生かけて償う覚悟でいる。


 つまり、その償い最初のミッションとして、伊巫さんが提示したのが、今現在。


 俺が彼女の代わりに綱引きをすることであった。


「オーエス、オーエス……やった勝ったよ王子きゅん!」


「え、マジ?」


『そこまで! 2年A組対3年C組、最終決戦の勝者は2年A組!』


「「ワアアアアアアアアアアアアア!」」


 ワールドカップ並に強烈に盛り上がる、なぜか綱引きで。なにげに最終決戦だった。


 というか、綱引きそんなに重要か? 全学年トーナメント対抗でやることか?

 せいぜい、学年別で二年生対二年生とかでやるべきじゃないのか?


 まあいい。この学校がオカシイのは元からだ。


「やったねやったね王子きゅーんッ」


「ふおッ」


 緑市先輩が抱きついてきた。わ、わりと胸が大きい。ぎゅむっと俺の顔面に、そのマシュマロがダイレクトアタックする。

 と、俺を囲む生徒たち。全て二年生、一年坊の俺の上級生だ。


「おう、さすがだな王子」


「一年のくせにやるじゃねえか」


「一人戦力が減るって聞いた時は、どうなるかと思ったけど」


「こんだけ頼もしい男がいたら、ウチら2年A組も安泰だな」


 わざわざ一人ずつ喋ってくれて、どうもありがとうございます。


 俺はどうやら、彼ら2年A組の人たちに一目置かれたようだった。

 伊巫さん代わりの補欠。役に立てていそうで、よかった。


 と、俺は観客席の本人をチラッと見遣る。彼女はすでに、体操服に着替えている。

 もうボンテージタイムは終了したようだ。この体育祭を俺に預けて棄権する、と決まった際から、副次的に、仮想競走の計測も継続を断念させたらしい。


 ちなみに俺も、なにげに別の体育着に着替えていたりする。といっても、デザインはまったく同じやつだが。

 件のホイップクリームだ。腹の辺りに、べちょべちょに付いてしまった。まあ、体育祭だから、体育着は余分に持ってきていたのだ。元々着てた分含め、二着。


 そうそう、クリームの件な。そのことについても、語ることがある。それはまあ、後にしておこう。


 で、ボンテージ伊巫さんは、元の体育着に戻るだけでいい。コスチュームは係生徒に返却。

 保健室へ行くのは拒んだから(先日マキビシダイブの時もそうだったが、彼女は医療機関全般、あまり身を置きたくないみたいだ)、あとはもう、観戦するだけだった。


 一人でグラウンドの日陰で、遠くからこちらを見ている。クラスの人たちに囲まれた俺を。それこそ、魔女みたいに薄暗い雰囲気。


 俺は歩み寄ろうとした。その時、


『さあじゃんじゃん行きましょう。なにげにあと二、三話とか言いつつ、すでに三話過ぎてます。プログラム第五百二十八番、100m走のお時間です。てめえらさっさと支度しろ』


 また、俺の番になってしまった。次の競技、これも伊巫さんの代理種目だ。

 俺は歩く。レーンへと準備する。


「おう、王子行って来い!」


「ガンバッテー王子きゅん!」


「応援しとるからな。ちゃんと点取ってこいよ!」


 二年生に見送られながら。

 というか、俺の『王子』というあだ名が、彼ら彼女らに完全に定着しているようだった。


 や、やめてほしい。もう設定変更できないのか?


 そしてこれまた自然的に、二年生陣の得点へと入るらしい俺のパフォーマンスであった。



 ■



「な、何なんですかこれ?」


「うん? ハンデですよ。だってあなた伊巫杏子のレーンに入るんでしょ? レース出場者は皆女子です」


「はあ。それにしたって、ここまで……」


 俺の胴体には、縄が巻き付けられていた。その先には、でかくて重い砂袋。まるで、腹からリードを引っ張って、下僕よろしく重しを取り付けたみたいに。


 その重さ、三十キロ。ずっしりとした、もはや米俵半分並の砂袋。


 取り付けたのは、体育祭実行委員。どうやら、俺が競技100m走で走るにあたっての、ハンデ措置であるらしい。

 元々女子の伊巫さんが出る予定だったところを、男子である俺が出るのだから、という理屈である。


 ちなみに俺の体重は68kgくらい? で、44kgの伊巫さんとは24kg差。だいたいね。


 つまり、三十キロは、いくらなんでもやり過ぎだ。歩く度にズルズルと引きずり、なんかもう自由歩行すらままならない。

 あと、括りつけられた腹が、普通に締められて痛い。

 でも、頑張ってレーンに並んだ。


 まあ、異様な光景だろう。他生徒の視線が痛い。

 でも、これも前の二人三脚プレイで、だいぶ慣れた。あと、その事件──イヌ着ぐるみ二人三脚疾走事件は、わりとすんなり一般大衆に受け入れられた。おおらかな人たちだ。


 中に入っていたのが伊巫さんという事実も、そんなにビッグニュースになっているふうでもなく。

 なんか、さらにあの人のキャラ性がわからんくなってきた今日このごろ。


 まあいい。今は俺は、走るだけ。展開がグダグダなのは、例によって無視。


『位置についてはいドーン』


 ッタアアアアアアアンンンンンンン!


 レースは進行する。俺と共に競走する女子四人も走り出した。俺も出発。

 が、腹が痛い。これは女子に紛れて俺男一人走るという精神的な意味でもあり、三十キロの重りに括りつけられた俺の腹筋が、縄でめちゃ締まるという、肉体的な意味でもあり。


「クソおおおお。痛えええええええッ」


 でも俺は走る。駄獣のごとく駆ける。それが、伊巫さんに与えられた使命だから。俺はただの、彼女の下僕だから。


 と、その時、アドバイスが飛んできた。緑市さんの声。観客席から、大声で俺へと伝えられる。


「王子きゅーん。その砂袋、伊巫ちゃんだと思って抱っこしてみたらどうかなー?」


「え、そんなのありなの?」


 俺は実行委員のテントの方を見遣る。少しの間。と、校長がOKサインを出した。具体的には、頭の上で、腕で丸を作った。


 マジか。ハンドありだったのか。じゃあ、最初からそうすればよかった。

 そして俺は砂袋を担ぐ。三十キロのそれを、お姫様抱っこで。うん、全然重くない。圧力分散の問題は多少あるけど、伊巫さんの体重よりも軽いのだから。


 あ、めっちゃ楽。普通に走れる。ほら、今一人追い越した。二人、三人。


『ゴーーーール!』


 アナウンスちゃんの声が鳴り響く。

 俺は二位になった。


 まあ、最初に腹筋砂袋で出遅れたから、というのもあるけど、しかし結構良い成績だったんじゃないかと思う。そして、相手が女子ってのもあるけれど。


「乙カレー辛口ハイボール。王子きゅんらしい走りだったね。砂俵お姫様抱っこランニングかあ。これ、新たな競技種目として、来年の体育祭で提案しよっかな」


「はは……どっちでもいいです」


 俺が戻った観客席、そこに座る緑市さん。他の二年生とともに、俺を応援してくれていた。

 俺はまたちらっと見る。先ほど伊巫さんがいたところに、しかし彼女はいなかった。


「あの、この砂袋置いておいていいですかね。ちょっと俺、野暮用があって。ちょっくら一時間くらい姿を消します」


「おーう、でかションベンかい? 行っといで、行っトイレ。砂のお姫様は、あたしがびっちしバッチシ管理監視監禁しとくから」


「そこまでしななくてもいいですけど……まあ、お願いします。あと、」


 と、俺は付け足す。腹部の縄を解き解き、辺りを見回しながら


「伊巫さんって、どこ行ったんでしょうね?」


「さあー?」


 緑市さんも知らないようだった。くりっと首を傾げる。


 まあ、またどっかでなんかしているんだろう。もしかしたら、もう一度睡眠をとっているのかもしれない。結構フリーダムだからな、あの人も。


 で、俺は出発する。


 次の俺が出る競技。つまり、最終種目・パン食い競走だ。

 それまでにあと、二時間ほど。その間に、俺はやらなくてはいけないことがあった。


 その為にも、例の斎藤直伝、学校不法侵入裏ルートから、俺は学校を抜け出した。

 体育祭の掟を破って、街に出る。そのまま俺は、すたこらさっさと近隣の業務用のスーパーへと赴く。

 格好が体育着のままなのは、これは俺の凡ミスだ。普通に着替えるのを忘れていただけ。クソださい。


パン食い競走のプログラム


『第四百十二番』→『第八百十二番(最終種目)』


と、訂正させていただきました。

どれもこれも、私の詰めが甘い所為です。


つまり、↓


第三百九十四番、昼食タイム 394

12:30〜13:30


第三百九十五番 二人三脚 395

13:40


体育倉庫(鎮座)

14:00☆


第四百五十番あたり? 450?♪

借り物競争、大縄跳び

14:00〜15:00の間


第五百二十七番 綱引き 527♪


第五百二十八番、100m走 528♪

15:00 買い出し


第八百十二番、パン食い競走 812

17:00☆


☆でタイムリープ(3時間)


♪の

借り物競争、大縄跳び、綱引き、100m走

は、伊巫さん睡眠ブッチしていた(一周目)


という感じです。またなんか矛盾してたらごめんなさい。


ここまで読んでいただきまして、ありがとう御座います。

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